事件から、私は生まれる。
2日間にわたる感門之盟を締めくくったのは、律師八田英子の人生における分岐点だった。
2004年、一介の社会人だった八田のもとに、資生堂の現名誉会長・福原義春氏から著作が届けられたのだ。それは当時上梓されたばかりの『猫と小石とディアギレフ』
福原氏は、のちに『千夜千冊』全集の装幀を手掛ける言わずとしれた重鎮。八田は、たまたま訪れた松岡正剛による「連塾」で福原氏を見知っていたとはいえ、何をお礼してよいのかわからない。何をしても失礼にあたると浮足立った八田は、せめてきれいな字でお礼状を書こうと決め、書道に通いはじめた。数年かかって師範資格を習得。卒業作品を提出した足でむかったのは、忌野清志郎の葬儀だった。あの1冊がなければ、何かが止まったままだったかもしれない。
第77回感門之盟は、忌野清志郎の声に乗せて200名以上もの名前を乗せたエンドロールが流された。清志郎は歌った。「どれだけ遠くまで歩けば大人になれるの」
グランドフィナーレのマイクを託された司会渡辺高志は、声を詰まらせる。「断点を断然点に変えてゆきたい」と松岡の言葉を引き受け、増岡麻子は「ここからがはじまり」と新しい門出を祝す。東京パラリンピックの閉会とともに、イシスはDAN ZENへ向け飛び出した。
※77感門 関連まとめはこちら
梅澤奈央
編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
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