(嶋本と中村の絆の深さを証拠立てる一枚。左から、中村、渡辺高志(二日目司会)、嶋本、白川、山根)
「わかりました、中村くんは譲りましょう」
婿入りの相談か、ドラフト会議か。
実はこのやりとりは、感門之盟司会のあいだでの「静かなる戦い」でこぼれ出たひと言だ。Zoom打ち合わせで、段取り確認中のことだった。一日目の司会は、嶋本昌子と川野貴志。当日の卒門式では、師範から師範代へのメッセージが書かれた「感門表」が贈られる。このセレモニーでの師範・師範代の呼名は、当日の司会にとってはひときわ気の入る仕事だ。
特に、師範・師範代が、司会本人にとってゆかりの人となると、尚更だ。
川野は、47守近大番として、近大学衆の稽古ぶりを一期通して見守ってきたが、イシス史初の近大生師範代であるどんでんコマンド教室・中村慧太師範代にも熱視線を送っていた。感門之盟司会としても、本番で中村の名前を呼んで、祝意をそっと示したい。
ところが、嶋本の「私の教室の子なので……」という愛の迸るひと言に、川野のささやかな野望は遮られた。画面越しにぶつかる視線と視線。中村は、嶋本が師範代をつとめた43破・羅甸お侠教室の学衆だったのだ。直接面倒を見た元学衆となれば、川野の関わりなど軽いものと言わざるを得ない。冒頭の鷹揚なひと言を吐いて、川野は心で泣いた。
「……真武師範代はどっちが呼ぶことにしますか」
嶋本は司会を務めるが、実は47守学衆でもあった。嶋本が学んだ47守・混合ポリロール教室の師範代が真武だったのだ。真武は編集学校のレジェンドの一人。師範代養成講座の花伝所では「鬼」と恐れられた経歴の持ち主が、今期は速修コースの師範代として、軽々全員を卒門に導き、新たな伝説を打ち立てた。
「直弟子」の嶋本に、今度は川野も負けていられない。川野にとって真武は、6離観尋院でともに稽古に励んだ「戦友」だ。苛烈な離の稽古を共にした仲間は、離を経験した者ならば、誰にとっても特別な存在となる……次のラウンドのゴングが鳴った。
Zoom越しの静かな打ち合わせに、譲れない者同士の緊張感がしばしば走る。贔屓の引き合いの結果はどうなったか、感門本番でご確認いただきたい。
二日目の司会は、渡辺高志と増岡麻子のふたり。渡辺は、冒頭の「愛されっ子」中村慧太が破を受講していたときの師範をつとめていた。イシスの関係線は幾重にもつながる。増岡は現在、エディスト記者にして、多読ジムで冊師としても活躍中。二日目はオトナな二人の組み合わせだが、こちらの間にもひょっとすると、思い入れある登壇者を巡って、もっと過激な鞘当てが今も繰り広げられているのかもしれない。
川野貴志
編集的先達:多和田葉子。語って名人。綴って達人。場に交わって別格の職人。軽妙かつ絶妙な編集術で、全講座、プロジェクトから引っ張りだこの「イシスの至宝」。野望は「国語で編集」から「編集で国語」への大転換。
ハグが好きな人だった。 オンラインが基本のイシス編集学校で、初めて松岡校長と対面したのは2010年5月15日、紀尾井町の剛堂会館。6離「表沙汰」でのことだった。苛烈な稽古でぼろぼろになっている離学衆を、校長は一人ひとり抱 […]
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