3Dアートで二重になった翅を描き出しているオオトモエは、どんな他者に、何を伝えようとしているのだろう。ロジカルに考えてもちっともわからないので、イシスなみなさま、柔らか発想で謎を解きほぐしてください。
「い」
色は何色?
わけてあつめて
虹となる
[用法1]わける/あつめる
2025年3月15日、桃や梅が春の到来を告げる季節。第86回感門之盟「EDIT SPIRAL」の会場である本楼のあちこちで、さまざまな絵柄のかるたが咲き乱れている。このかるたは、イシス編集学校で学ぶ方法の「型」を48枚に込めた、方法の花々である。
「かるたをつくりたい」 ―― いろは型かるたのもととなる「種子」となったのは、うごめきDOHATZSU教室の学衆のなにげないつぶやきだった。このちいさな種子を両手でつつみ育み、気がつけば54[守]全員が参加する「いろは型かるた」づくりの大樹へと誘ったのが、木村昇平師範代であり、紀平紀子師範だった。
学衆の思いを受け取った木村師範代は、教室の勧学会で「いろは歌」にちなんだお題を発信。学衆は喜んで次々と回答をしていく様子に、紀平師範はいろは歌かるたの枚数である「48」に[守]の「型」を分類。学衆全員が教室や別院でかるたづくりに参加できる場をつくった。
あちこちの教室がお題に興じる日々のスタートである。気がつけば種子は芽吹き、方法の枝葉が伸びはじめていた。
できあがったいろは型かるたを両手にする紀平師範。「かるたづくりをなぜ54[守]全体でやろうと考えたのか」と問うと、「田中優子学長が2023年の『編集宣言』で紹介していた、「場」を「集」として編みなおす江戸時代の方法を実践したいと思ったんです」と朗らかに語った。
「る」
ルーペ越し
織りなす宇宙の
交響曲
[用法2]つなぐ/かさねる
イシス編集学校でまなぶ「情報編集のプロセス」では、情報を集めた次のステップとして、情報を組み合わせて、新しい意味や価値を生み出していく。
教室・別院での稽古を経て、「48」の読み札が集まった。次に取り掛かったのが、この読み札と一対になる「取り札(絵札)」づくりである。10名を超える師範・師範代と学衆がペアとなり、学衆がつくった読み札(文字)に込めた思いやイメージを、取り札(絵)へとメディア変換していく。拡散しがちなイメージをギュッと要約していく指南が多かったようだ。読み札の情報をストレートに表現したものもあれば、意外なヴィジュアルになったものもあった。
ここで登場したのが、デザイナーであり、今回の感門之盟のダブロイドデザインを一手に引き受けた阿久津健師範。漫画やイラストが得意な細井あや師範代とともに、次々と出来あがるビジュアルイメージをいきいきと彩っていった。
ペアにすることで、読み札だけでは気づかなかった新たな「型」のシソーラスが見えてきた。枝はさらに伸び、青々とした葉が茂っていく。
タブロイド編集のデザイナー阿久津師範(中央)と、かるたレイアウト担当の細井師範代(右)。紀平師範(左)曰く、「かるたづくりも、阿久津師範がいるなら大丈夫!」
阿久津師範デザインのタブロイド「EDIT SPIRAL」(右)。全12ページの紙内に、いろは型かるたも掲載されている。
「な」
流れを決めて
社長のつもり
[用法3]しくむ/みたてる
情報編集の3段階目は、組み合わされた情報たちを大胆に見立てたり、意外な対角線を引いたり、順序立てたりすることで、構造化していく。
いろは型かるたのタブロイドページの編集を担った阿曽祐子番匠は、新たに「クロニクル」という流れと対角線を加えた。[守]のニュースな出来事を収集し、30ほどに厳選。さらに[守]講座の稽古のプロセスそのものが情報編集の4つのプロセス(4つの用法)の流れであることを受け、クロニクルを4つの用法で大胆に分類した。
「いろは歌」の順番と、「型」を学ぶプロセスと、[守]講座の流れが立体的に編み込まれたページが完成した。気がつけば青々とした緑の葉のあいだから、鮮やかな朱の蕾が顔を覗かせていた。
タブロイドのいろは型かるたページの一端。「用法1〜4の分類だけでなく、[プレ54守][ポスト54守]を加えた方がいい、というアイデアは角山祥道によるもの」(阿曽番匠)とのこと。
「て」
テイスト
編み込み
ドレス着る
[用法4]きめる/つたえる
情報編集のラストを飾るのは「きめて/つたえる」。同じ料理も盛り付け方や選ぶ食器ひとつでおいしささえも変わってしまう。
タブロイドに、カードに、ポスターに。本楼のあちこちにいろは型かるたは一斉に開花した。休憩中にかるたを手に取り静かに稽古を思い返す学衆もいれば。かるたポスターをバックに師範代と写真撮影する姿も。情報が組み合わせによってお互いの関係が変化するように、いろは型かるたは、関わる相手によって表情を変えていた。
「京」
京月が
見守り照らす
門出の日
[卒門]
松岡校長が最後に舞台に立ったのは、2024年4月末、草月ホールでの近江ARS TOKYO「別日本があったって、いい。――仏はどこに、おわします?」。そこで校長がドラァグクイーンのドリアン・ロロブリジーダさんに託し、自ら詩をつくったうたは、「近江いろは歌」だった。

いろは型かるたの最後の一枚。空に浮かぶ月には校長の顔が。
おのれを羽布ぶとんのように軽くする遊星的郷愁をもとめて
ーー松岡正剛『存在から存在学へ』(工作舎)
上杉公志
編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。
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