自ら編み上げた携帯巣の中で暮らすツマグロフトメイガの幼虫。時おり顔を覗かせてはコナラの葉を齧る。共に学び合う同志もなく、拠り所となる編み図もなく、己の排泄物のみを材料にして小さな虫の一生を紡いでいく。
本の市場、本の劇場、本の祭典、開幕!
豪徳寺・ISIS館本楼にて11月23日、24日、本の風が起こる<別典祭>(べってんさい)。
松岡正剛、曰く「本は歴史であって盗賊だ。本は友人で、宿敵で、恋人である。本は逆上にも共感にも、羨望にも失望にもなる」。
そんな本の可能性を展くのは、多読アレゴリアの16クラブ。
本が、写真や着物と交わり、ゲームにも大河ドラマにもなり、沖縄へ鎌倉へ軽井沢へ旅する。
6万冊の本楼+ISIS館での、本のお祭り<別典祭>。
お待ちかねの、本の劇場シリーズ予告編、お見せいたします。
別典祭初日の殿はメディア美学者、アンダーグラウンドの伝導者である武邑光裕だ。イシス編集学校の可能性に共鳴した9人の有識者グループ「ISIS co-mission」の一員で、次世代リーダー達の研鑽の場「Hyper-Editing Platform[AIDA]」のボードメンバーでもある。遊刊エディスト読者には「武邑光裕の新·メディアの理解」の連載でもお馴染みであろう。別典祭の主催である多読アレゴリアでは「OUTLYING CLUB」の慧匠(≒監修)も務め、異端的思考Outlying(アウトライング)を軸に、新時代の「メディア・場所・物」を他者の目を気にせず問い直し続けている。
2024年10月に出版された武邑光裕『Outlygin 僻遠の文化史』。様々なカウンターカルチャーの芽吹きに立ち会った武邑氏。当時の体験が過激に綴られた自伝。メディアの理解を置き去りにしたテクノロジー過剰な現代に警鐘をならす書でもある。(写真:小野泰秀)
眠ったままの知のアーカイブ
そんな武邑が今回語るのは「AI・DX時代を生き抜くために、知のアーカイブを今後どう活用し、再編集していけばいいのか」だ。古来より先人達の知恵を活用すべく、知を網羅し記憶・保存し再活用することが行われてきた。それらが古代アレクサンドリア図書館、大英博物館、スミソニアン博物館などに結実している。特に図書館は「眠りに入っていたいっさいの知の魂を呼び醒ますための時空間起動装置」であり、そこに眠る書物は記憶と読書が対応するようにつくられ、活用されてきた。
ではデジタル全盛の現代はどうだろうか。たしかに歴史の教科書にあることや、ニュースの内容にアクセスすることはできるかもしれない。でも、それ以外の情報はどうだろうか。それらを未来に生かすべく、組み合わせを変えてみたり、新たな解釈を試みたりしやすい状態になっているだろうか。
そのためにはまずは世界中の物事のそこに至るまでの文脈も含めたデジタル化が必要になってくる。日本には古事記、万葉集などの古典、日本舞踊、盆踊り、ディスコ、パラパラなどの踊り、鳥獣戯画、漫画、お笑いなどのエンタメなど、あらゆるジャンルに無数の知のアーカイブがある。だが日本ではこれのデジタル化と活用が遅れている。編集工学研究所では松岡正剛が遺した図書街が多読アレゴリアで活用され始めているが、まだよちよち歩きだ。松岡が残した膨大なレガシーも存分には活用されてはいない。
「図書街」とは、松岡正剛のドローイングをもとに構想された、ユニバーサル・コミュニケーションが可能な電子空間。800万冊の本の収納を想定。
制作 編集工学研究所/独立行政法人 情報通信研究機構
日本だからこそ
そこで武邑の登場である。彼が古今東西、ハイカルチャーからサブカルチャーまで、知のアーカイブをどのように見ているのか。それらをどんな方法で記憶し編み直して再活用できる可能性があるのか。遊刊エディストの副編集長であり、松岡正剛から「代将」の名を授かった金宗代が聞き手となって探っていく。
ちなみに武邑はISIS co-missionミーティングで「遅延」の重要性について語っている。世界に遅れをとっている日本だからこそ、本という遅いメディアにこだわり続けている編集学校だからこそ、リアルイベントという遅い場だからこそ、できる何かがあるのかもしれない。
2024年1月21日、本楼にて開催された武邑光裕氏による52[守]特別講義の様子。(写真:後藤由加里)
イシス編集学校「別典祭」(べってんさい)」開催概要
会場:編集工学研究所ブックサロンスペース「本楼」
(最寄駅:小田急線 豪徳寺駅、東急世田谷線山下駅より徒歩7分)
〒156-0044 東京都世田谷区赤堤2丁目15番3号
https://www.eel.co.jp/about/company
日程:2025年11月23日(日)・24日(月・祝)
チケット(2日間有効):一般の方無料。イシス編集学校受講生は1500円。
申込方法:以下URLからお申し込みください。
https://shop.eel.co.jp/products/tadoku_allegoria_2025bettensai
プログラム:
【1日目プログラム 11/23(日)】
12:30 開場
13:00 開会宣言
14:00-15:00 ほんのれんクラブ|ほんのれんラジオLIVE
16:00-17:00 着物コンパ倶楽部|黒留袖ファッションショー
18:00-19:30 武邑光裕|トークイベント(この記事)
19:30 挨拶
【2日目プログラム 11/24(月祝)】
11:30 開場
12:30-13:30 千夜千冊パラダイス|おっかけ千夜千冊ファンクラブSP Live
14:00-16:00 MeditLab|米光一成 × 小倉加奈子トーク&ゲームプレイ
16:30-18:00 田中優子学長|酒上夕書斎SP
18:00 閉会挨拶
【2日間通しプログラム(11/23-24)】
・終活読書★四門堂 × 多読ジムClassic × 大河ばっか!|古本市
・EDO風狂連|100人連句
・軽井沢別想フロンティア|「浅羽米」販売
・OUTLYING CLUB|武邑光裕式パネル展示
・よみかき探Qクラブ|あそびコーナー
・倶楽部撮家|写真展示
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・11/23(日)16:00-17:00:着物コンパ倶楽部|黒留袖ファッションショー(Coming Soon!)
・11/23(日)18:00-19:30:武邑光裕|トークイベント
清水幸江
編集的先達:山田孝之。カラオケとおつまみと着物の三位一体はおまかせよ♪と公言。スナックのママのような得意手を誇るインテリアコーディネーターであり、仕舞い方編集者。ぽわ~っとした見た目ながら、ずばずばと切り込む鋭い物言いも魅力。
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コメント
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2025-11-18
自ら編み上げた携帯巣の中で暮らすツマグロフトメイガの幼虫。時おり顔を覗かせてはコナラの葉を齧る。共に学び合う同志もなく、拠り所となる編み図もなく、己の排泄物のみを材料にして小さな虫の一生を紡いでいく。
2025-11-13
夜行列車に乗り込んだ一人のハードボイルド風の男。この男は、今しがた買い込んだ400円の幕の内弁当をどのような順序で食べるべきかで悩んでいる。失敗は許されない!これは持てる知力の全てをかけた総力戦なのだ!!
泉昌之のデビュー短篇「夜行」(初出1981年「ガロ」)は、ふだん私たちが経験している些末なこだわりを拡大して見せて笑いを取った。のちにこれが「グルメマンガ」の一変種である「食通マンガ」という巨大ジャンルを形成することになるとは誰も知らない。
(※大ヒットした「孤独のグルメ」の原作者は「泉昌之」コンビの一人、久住昌之)
2025-11-11
木々が色づきを増すこの季節、日当たりがよくて展望の利く場所で、いつまでも日光浴するバッタをたまに見かける。日々の生き残り競争からしばし解放された彼らのことをこれからは「楽康バッタ」と呼ぶことにしよう。