百合の葉にぬらぬらした不審物がくっついていたら見過ごすべからず。
ヒトが繋げた植物のその先を、人知れずこっそり繋げ足している小さな命。その正体は、自らの排泄物を背負って育つユリクビナガハムシの幼虫です。

伝へて習はざるか。
千夜千冊996夜 王陽明『伝習録』では、『論語』学而の「伝不習乎」を引いて、「伝習」の意味を説いている。雛鳥が飛び方を学ぶように、人が真似て、何事かに集中していくことが「習」の字には込められている。師範が伝えて、師範代が習う。いや役割を超えて互いに伝えて、習う。イシス編集学校では師範や師範代が集って学衆に示すべき指南の方法をめぐる場を「伝習座」と呼び、25年に渡ってイシス編集学校の中だけで178回に渡って行われてきた。
その伝習座が25年の禁を破り、装いを全く新しく、無料でLive配信される第三回目になる。オールイシス編集学校の半期に一度の村立て、一座建立の編集顔見世になる。2025年9月に開催される今回は、どんな伝習座になるのか。その仕立てと見どころを紹介しよう。
<今福龍太が問う新たなる我々の憲法>
父なる編集工学、母なるイシス。
伝習座のプログラムは2つのメインコンテンツで構成されている。まずは、「父なる編集工学」としてのISIS co-missionで『仮面考』(亜紀書房)を上梓したばかりの文化人類学者・今福龍太によるインタースコア・セッション。今回のテーマは「花綵列島の新たなる憲法」である。著作『わたしたちは難破者である』(河出書房新社)で「群島響和<並行>憲法」を試論として示した今福龍太が、10年の時を経て「編集工学」と重ねて考える、新たなる我々の方向性とは何か。今福から参加者への問いと音楽、映像が重なる独自のスタイルのセッションになるだろう。
〈わたし〉とは、仮面である。〈素顔〉こそ、仮面である。今福龍太による新著『仮面考』。ブックカバーが仮面のように覆い、隙間から表紙デザインがチラ見えしている。写真家・石川直樹によるインスタントカメラによる粗い写真、ページの至るところに組み込まれた記号やノイズ。コロナ禍のマスク、顔認証IDなどの現代的課題と能面、原始の仮面の力との対比、和辻哲郎,戸井田道三,金芝河,レヴィ゠ストロース,ボルヘス,アンソール,安部公房らの作品と重ねた深い思索。現代の我々に本来の変身可能性を取り戻すことが呼び掛けられる。
「母なるイシス」は、松岡正剛校長講義の語り直し「Re-Mix校長校話」である。今回は「花綵イシス」と題して、『見立て日本』のスライドをいくつも使いながら、情報の始まりから自己組織化までを一気に語り切った松岡正剛の講義が題材になる。過去のレクチャー動画をもとに、参加者が喧々諤々のインタラクティブ・ディスカッションは、昨年急逝した校長・松岡正剛の編集工学講義を改めて語り直し、再編集することで、松岡正剛を再生させる機会になる。「情報編集」の流れとはどのようなものかという内容と共に、松岡正剛の独自のスタイルを垣間見る機会にもなる。
週刊ポストで当時連載されていた「百辞百物百景色」が意外な組み合わせで次々に紹介され、情報が編集化されていく流れを一気に語り切った。「百辞百物百景色」はその後『見立て日本』(角川ソフィア文庫)として出版されている。
<左近右近が挟み、三匠が進める>
前半の今福龍太によるインタースコア・セッションでは、左大臣、右大臣ならぬ左近・右近という二人の進行役が用意されている。いや、進行というよりはノイズかもしれない。今福の講義レクチャーに突如割って入り、想定外の問答が差し挟まれる。予定調和を嫌う今福龍太との掛け合いがどうなるか。今回の右近と左近が今福に何を問うのか、今福の問いにどう答えるのか、講義にどう切り込むのか注目である。
後半のREMIX校長校話「花綵イシス」に登場するのは三人官女ならぬ三匠。イシス編集学校の守破離の講座リーダーである鈴木康代学匠、原田淳子学匠、太田香保総匠が揃い踏みで、松岡正剛の校長講義を甦らせる。忖度なしの守破離エディットマッチ、いきなり名指しされた師範、師範代は果たして見事に切り返せるのか。全体の進行は、YouTube「おっかけ千夜千冊ファンクラブ」でお馴染み、イシス編集学校 林頭・吉村堅樹がつとめる。
ISIS co-mission今福龍太初めての伝習座講義。新しい伝統、歴史の3ページ目、知のエンターテインメントの開闢。イシスの最先端が見れる伝習座のライブにどうぞご参集ください。
伝習座 「花綵列島の新たなる憲法」
■日時:2025年9月27日(土)14:00〜18:00
■内容:今福龍太講義「花綵列島の新たなる憲法」、Remix校長校話「花綵イシス」など
■参加方法:お申し込み不要。どなたでも参加いただけます。YouTubeイシスチャンネルにて14:00からライブ配信開始予定です。時間になりましたら下記にアクセスください。
▼YouTubeイシスチャンネル
https://www.youtube.com/@es_event/featured
*伝習座LIVE配信はYouTubeライブで無料配信。事後アーカイブ視聴は有料配信(3500円・税別、松岡正剛校長講義動画付き)になります。
過去伝習座映像はこちらからご購入いただけます。
吉村堅樹
僧侶で神父。塾講師でスナックホスト。ガードマンで映画助監督。介護ヘルパーでゲームデバッガー。節操ない転職の果て辿り着いた編集学校。揺らぐことないイシス愛が買われて、2012年から林頭に。
【知の編集工学義疏】第3章 <情報社会と編集技術>のキーワード
今こそ、松岡正剛を反復し、再生する。 それは松岡正剛を再編集することにほかならない。これまでの著作に、新たな補助線を引き、独自の仮説を立てる。 名づけて『知の編集工学義疏』。義とは意見を述べること、疏とは注釈をつけ […]
【知の編集工学義疏】第2章 <脳という編集装置>を加速させる
松岡正剛が旅立って一年。 今こそ、松岡正剛を反復し、再生する。 それは松岡正剛を再編集することにほかならない。これまでの著作に、新たな補助線を引き、独自の仮説を立てる。 名づけて『知の編集工学義疏』。義とは意見を […]
千夜千冊エディション『少年の憂鬱』に松岡正剛の編集の本来を読み解くべし。花伝所の放伝生が取り組んだ図解を使って、20分の予定時間を大幅にオーバーして、永遠の少年二人がインタラクティブに、そして「生」でオツ千します。 発熱をおしてやってきた小僧・穂積は大丈夫か? 坊主・吉村の脱線少年エピソードは放送可能か? エディション『少年の憂鬱』をお手元に置いてご鑑賞ください。
【知の編集工学義疏】第1章 <編集の入口>をダイジェストする
松岡正剛を反復し、再生する。聖徳太子の「三経義疏」に肖り、第一弾は編集工学のベーステキストでもある『知の編集工学』を義疏する。連載の一回目は、第一部である「編集の入口」をテーマに「第一章 ゲームの愉しみ」を読み解き、「編集」のいろはを伝える。2022年講義のダイジェスト映像とともにご覧ください。
イシス編集学校の師範、師範代にしか公開されていなかった「伝習座」。その講義の中から、[守]の編集術の最後にあたる「情報の表現」について、吉村堅樹林頭が50分にわたって解説した動画をYouTubeイシスチャンネル限定で蔵 […]
コメント
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2025-09-02
百合の葉にぬらぬらした不審物がくっついていたら見過ごすべからず。
ヒトが繋げた植物のその先を、人知れずこっそり繋げ足している小さな命。その正体は、自らの排泄物を背負って育つユリクビナガハムシの幼虫です。
2025-08-26
コナラの葉に集う乳白色の惑星たち。
昆虫の働きかけによって植物にできる虫こぶの一種で、見えない奥ではタマバチの幼虫がこっそり育っている。
因みに、私は大阪育ちなのに、子供の頃から黄色い地球大好き人間です。
2025-08-21
橋本治がマンガを描いていたことをご存じだろうか。
もともとイラストレーターだったので、画力が半端でないのは当然なのだが、マンガ力も並大抵ではない。いやそもそも、これはマンガなのか?
とにかく、どうにも形容しがたい面妖な作品。デザイン知を極めたい者ならば一度は読んでおきたい。(橋本治『マンガ哲学辞典』)