中二病という言葉があるが、この前後数年間は、”生きづらい”タイプの人にとっては、本格的な試練が始まる時期だ。同時に、自分の中に眠る固有のセンサーが、いっきに拡張し、世界がキラキラと輝きを放ちはじめる時節でもある。阿部共実『月曜日の友達』は、そんなかけがえのない瞬間をとらえた一編。
ジュンク堂書店福岡店、りーぶる金海堂クロスモール店、ブックセンタークエスト小倉本店、喜久屋書店小倉本店。6月1日、九州の4つの書店で同時多発的に「千夜千冊エディション20 冊突破記念フェア」が始まりました。東京でもジュンク堂書店池袋本店が同日スタート。このうち、今回取り上げるのは宮崎県宮崎市にあるりーぶる金海堂クロスモール店です。フェア開催期間は6月1日(火)から6月30日(水)まで。金海堂を贔屓にしているイシス編集学校の佐土原太志師範代が取材レポートを届けてくれました。
佐土原太志師範代といえば、つい先日明かされたクロニクルに加えて、ほぼ一年前の井ノ上シーザーによるエディスト記事「45[守]師範代 佐土原太志が起こした集団絶句」が思いおこされます。

りーぶる金海堂クロスモール店。2010年に宮崎市に合併した清武町、蛇行する清武川の岸のショッピングセンタークロスモール清武にある書店。2020年11月に10周年を迎えた。対岸の高台には深く鋭く書物を読み解いた江戸時代の儒学者・安井息軒の旧宅がある。

広い店内に趣味・実用書・雑誌・ビジネス書・コミック、参考書や文庫、文具などを取り揃える。

ビジネス書ランキングコーナーに斬り込むかのような「千夜千冊エディション」フェアのブース。特大ポスターと通路にせり出しているポップが目を引く。

クロスモール店の店長・西田康成さん(56歳)。クロスモール店のオープンから店長を務め、書店員歴25年を超える。高千穂町のご実家も書店だった。
佐土原さんがフェアの相談をした時、西田店長は「松岡さんの言う“編集”ってどういう意味なんですか?」と「編集工学」にも興味津々な様子だったそうです。「本を書く著者が”編集”しているというのはもちろんですが、本を読む読者も編集しているんですよ」と読書を例示に持ちだしたり、「遊んでいるときも、人と話している時も、何かの具合でうまくいかない時も、自分の中ですでに編集が動いていると考える見方です」など西田店長の”注意のカーソル”を探りながら、佐土原さんは「編集とは何か」を暗示的に説明しました。
(注釈)松岡正剛『多読術』(ちくまプリマー新書)や『知の編集術』(講談社現代新書)を読むと、読書や日常生活と「編集」の関係をより詳しく知ることができます。
「カッコいい方ですね。凄みが効いている、任侠の親分みたいだな。いやはや、“知祭り”とは過激だなぁ」とポスターを見ながら西田店長は松岡正剛の“らしさ”に着目してその魅力を語ってくれました。
フェアの初日、佐土原さんがお店を訪ねると、「出来てますよ」と即座に西田店長。数日前には売れ筋のビジネス系のマンガが並んでいたコーナーがフェアの棚に様変わりしていました。真ん中には校長のド迫力の大判のポスター。けれども実は、もともと棚に飾るはずだったポスターとは別のものが使われていました。
「あれ、出版社からポスターとポップ届いていませんか」と尋ねると、「別のポスターのデータがあったのでそれを出力しました。“親分”の仕事の凄みを伝えるにはこの位の迫力が必要でしょう。店員も驚いていましたけど」。ポスターが予定通りに届かないというアクシデントを愉快に逆手にとり、それがはからずも金海堂独自の棚の演出に転換したというわけです。
「これが西田店長の編集なんですね」と唸る佐土原さん。「ま、そういうことになるかな」と西田店長は照れ笑いして、「やっぱりキーブックはこれだよね」と『編集力』を手に取り写真撮影に笑顔で応じてくださいました。さらに「売れる、売れないではなくて、これだけの仕事をしている人だからお客さんを驚かせて、ここで立ち止まらせたい。そして手に取って欲しい」とフェアへの意気込みを力強く語ってくれました。

写真・キャプション:佐土原太志
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