『キャラ者』は、”マンガ家”だった頃の江口寿史の、(まとまった作品としては)ほぼ最後の仕事。恐るべきクオリティの高さで、この才能が封印されてしまったのはもったいない。
「来年こそはマンガ家に戻ります!」と言ったのは、2016年の本の帯(『江口寿史KING OF POP SideB』)。そろそろ「来年」が来てもいいだろう。

十六夜の満月である9月18日。冠界式にて教室名をもらった54[守]の師範代は10月の開講にむけた「フライヤー制作」のオンラインレクチャーに挑んだ。
イシス編集学校では教室ごとのフライヤーを制作することが8[守]から連綿と続いている。それが師範代として最初の編集力を実践する場となっている。
「そもそも、なぜ教室のフライヤーを作るのでしょうか?」と石黒好美番匠より問われると美濃万里子師範代はすっと手をあげ「教室名をビジュアル化することで目指したい教室をイメージできる」と答えた。20名の師範代で54[守]の地図をつくるのだ。
阿久津健師範は『日本のグラフィック100年』をキーブックにデザインとエディティングをつなぐ方法を編集の型をつかってレクチャーする。”らしさ”や”地と図”など型を使い尽くし、託された教室名を言い換え、コンパイルをすることで見えてくる世界観の断片を拾ってみたり、大枠をがばっとつかまえたりしながら作り出すニューワードが教室名のらしさを浮かび上がらせていく。
さらに教室名の世界観だけではなく「今」という与件も欠かせない。今、世界では何がおきているのか? 2024年10月に開講する54[守]でしか表象できない大きなお題に師範代たちは投げ出されているのだ。
渡辺恒久番匠はジュリーこと沢田研二のレコードジャケット制作をリバースエンジニアリングしていく。1枚のレコードジャケットを作るのに2、3のビジュアルをあつめ、それぞれの要素から”らしさ”を取り出して組み合わせる。百合の花を表現するためにテーブルクロスを切り、縫い合わせて「花びらっぽい」シャツに仕立てるなどビジュアル要素の組み合わせも言葉と同じようにわけて集めていくことから始まっているのだ。
満月を境にして自身の行方をそこにあずけ、その月的なるものの力を借りて一時の充填作業を試みること、これこそが月見でなければならなかったのだ。 『ルナティックス』
充填作業とは欠けているところや空いている空間にものを詰めて塞ぐこと。教室名をコンパイルし、語源からシソーラスを広げていくことで教室名にたくさんの意味や言葉が満たされてきて世界観が広がる。一方でどこかに空所や空間、欠けたモノがふと見える瞬間がある。そこにまだ出逢ったことのない新しい自分の入る余地がうまれ、さらにはこれから迎える学衆の空席が作り出されていくのだ。
満月の夜を境に細井あや師範代より「今朝までに浮かんだイメージをひとまず放ちます」と第一声が届くと、次々に教室名のコンパイルが届き始めた。月が満ち欠けするように要約と連想を繰り返しながら師範代たちは守の型を深く身につけつつ教室名の新しい世界観に出会っていく。
10月の開講時にはたくさんの「月」のように教室名フライヤーが張り出され、月的なるものの力を借りながら守の4ヶ月というお稽古期間をすごす。それぞれの教室が欠けながら満たされていき卒門のころには朧月夜となりそうだ。
文/一倉広美(54[守]師範)
アイキャッチ写真/中村裕美(54[守]師範)
◆イシス編集学校 第54期[守]基本コース募集中!◆
稽古期間:2024年10月28日(月)~2025年2月9日(日)
詳細・申込:https://es.isis.ne.jp/course/syu
イシス編集学校 [守]チーム
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花伝所の指導陣が教えてくれた。「自信をもって守へ送り出せる師範代です」と。鍛え抜かれた11名の花伝生と7名の再登板、合計18教室が誕生。自由編集状態へ焦がれる師範代たちと171名の学衆の想いが相互に混じり合い、お題・ […]
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週刊キンダイvol.018 〜編集という大海に、糸を垂らして~
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