宮谷一彦といえば、超絶技巧の旗手として名を馳せた人だが、物語作家としては今ひとつ見くびられていたのではないか。
『とうきょう屠民エレジー』は、都会の片隅でひっそり生きている中年の悲哀を描き切り、とにかくシブイ。劇画の一つの到達点と言えるだろう。一読をおススメしたい(…ところだが、入手困難なのがちょっと残念)。

今年も多読の季節が始まった。
3か月周期でまわる多読ジムの冬シーズンは、ちょうど新年の始まりと重なる。開講日、各スタジオで点呼に次々と即応する読衆の声も、他シーズン以上に快活だ。ある読衆は「干支の兎に肖ってぴょんぴょんと進んでいきたい!」と決意を新たにし、別の読衆は「かねてより念願の『希望の原理』『夢遊の人々』『封建社会』を読み解きたい」とさらなる読書道の高みを目指す。全スタジオの模様をつぶさに見守る冊匠・大音美弥子もさっそく場の熱気に応じ、「ぶっちぎりの『読相体勢』を新たに築いてまいりましょう」と書院から発破をかけた。
ジム歴の長い読衆にとって、こうした光景は毎年の恒例となりつつある。しかし、今年の冬シーズンはこれまでとは一味違う。4年目を迎えた多読ジムは、いよいよ序破急でいうところの〈破〉のフェーズへ向かおうとしているのだ。
変化の兆しはすでにみられる。遊刊エディストでも告知があったように、今季はイシスの内外で“鳴りやまない編集”を体現しつづける析匠・小倉加奈子主催のMEdit Labコラボ企画が、「三冊筋プレス」お題として用意された。自身も病理医でありながら「医者に読ませたい三冊」を選んでもらおうという企画趣旨に、いかにも小倉らしい挑発味を感じずにはいられない。ジム読衆もいよいよ本丸に挑む気分でいることだろう。
さらに今季は、スタジオ「みみっく」の冊師・畑本浩伸が抜本的に構築しなおした日々の読書記録帳「BOOKING」が再スタートを切る。前シーズンの多読SP村田沙耶香篇の受講をはじめ、「多読モンスター」への道を貪欲に歩んでいる“読怪人(どっかいじん)”ハタモトの企画となれば、こちらも目が離せない。今季受講者は寄ってたかって、日々の読書風景を記録していくことだろう。
果たして今年はどんな多読イヤーになるのか? 新体制始動にふさわしく、歴代最高の登頂者数記録を打ち出すことができるのだろうか?
平時の読み書きを再有事化していこうとする多読ジムのニューフェーズに、ぜひとも期待されたい。
バニー新井
編集的先達:橋本治。通称エディットバニー.ウサギ科.体長180cm程度. 大学生時に入門後、師範代を経てキュートな編集ウサギに成長。少し首を曲げる仕草に人気がある。その後、高校教員をする傍ら、[破]に携わりバニー師範と呼ばれる。いま現在は、イシスの川向う「シン・お笑い大惨寺」、講座師範連携ラウンジ「ISIScore」、Newアレゴリア「ほんのれんクラブ」などなどを行き来する日々。
準備も本気で本格的に。それがイシス流である。 感門本番まで残すところあと2日、これまで個々に用意を重ねてきた[破][花]の指導陣が、いよいよ本楼に集って全体リハーサルを行った。音響、立ち位置、登降壇順、マイク渡しに席 […]
感門準備の醍醐味は、手を動かし口も動かすことにあり。 8月最後の土日、[守][破][花]指導陣の有志(感門団)で豪徳寺学林堂に集まって、一週間後に控えた感門之盟の下準備に入った。ペットボトル300本に感 […]
「守をちゃんと復習し終えるまで、破へ進むのはやめておこう……」 卒門後、そのように考える慎重な守学衆が毎期何人かいます。けれども、コップに始まりカラオケへ至った学びのプロセスによくよく照らしてみれば、「立 […]
◆感門タイトルは「遊撃ブックウェア」 読書はなかなか流行らない。本から人が離れてゆく。読書はもはや、ごく一部の好事家による非効率でマニアックな趣味にすぎないのだろうか? 読書文化の退行は今 […]
モノに見立てて肖って●54[破]評匠 セイゴオ知文術レクチャー
本を読んで、文を書く。そのとき人は、いったい何について書いているのだろうか。そこでは何が出入りしているだろうか。 日々の暮らしの中で何気なくおこなうこともできてしまう読書行為というものをひとつの巨大な“ […]
コメント
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2025-09-18
宮谷一彦といえば、超絶技巧の旗手として名を馳せた人だが、物語作家としては今ひとつ見くびられていたのではないか。
『とうきょう屠民エレジー』は、都会の片隅でひっそり生きている中年の悲哀を描き切り、とにかくシブイ。劇画の一つの到達点と言えるだろう。一読をおススメしたい(…ところだが、入手困難なのがちょっと残念)。
2025-09-16
「忌まわしさ」という文化的なベールの向こう側では、アーティスト顔負けの職人技をふるう蟲たちが、無垢なカーソルの訪れを待っていてくれる。
このゲホウグモには、別口の超能力もあるけれど、それはまたの機会に。
2025-09-09
空中戦で捉えた獲物(下)をメス(中)にプレゼントし、前脚二本だけで三匹分の重量を支えながら契りを交わすオドリバエのオス(上)。
豊かさをもたらす贈りものの母型は、私欲を満たすための釣り餌に少し似ている。