「忌まわしさ」という文化的なベールの向こう側では、アーティスト顔負けの職人技をふるう蟲たちが、無垢なカーソルの訪れを待っていてくれる。
このゲホウグモには、別口の超能力もあるけれど、それはまたの機会に。

イシスの”卒業式”イベント「感門之盟」。オンラインのちいさな教室を飛び出してその場に集うと、まるで内海から外洋へ出たように「門の先」の景色がつぎつぎと見えてくる。第83回感門之盟「EDIT TIDE」(2024.3.16)の1日目、第52期[守]基本コースを卒門したばかりの学衆たちは、外洋に浮かぶ不思議な書画に羨望のまなざしを向けていた。今期はじめて師範・番匠ロールをつとめた4名に贈られた松岡正剛校長直筆の書「玄々書(げんげんしょ)」である。
◆小椋加奈子師範 書「演観戯音」
元・舞台女優の小椋は、俳優養成所をかけもちしながら演劇の世界で生きていたが子育てを機に演劇を断念。イシスに入って編集稽古を進めるうちに編集の持つ可能性に魅了され、自分自身すら編集対象となり、ありえないと思っていた社会人劇団から声がかかってこの夏、舞台復帰が決まった。そんな小椋師範らしさを、四文字に託した松岡校長。「編集もアクターやアクトレス的なところ、シナリオ的なところ、ドラマ的なところ、一期一会のようなものを大事にしている。映像とはちがって〈ナマ〉だからね」
◆小野泰秀師範 書「研々郎」
ファッションやジュエリーにかかわることと編集することの近さを校長に問われると「着替えて表現する、スタイルをつくるのがファッション。編集もエディティングキャラクターを着替え、スタイルをつくり世界観をつくっていくので近さを感じている」と語る小野師範。18歳のころからアパレルの道を歩み、13年ほどまえからジュエリーデザイナーとして活躍している。「ぜひイシスのジュエリーをどこかでつくってよ」と校長から期待あふれるお題も飛び出した。
◆遠藤健史師範 書「診芯」
地域医療を志し、ふだんは総合診療医として白衣を纏う遠藤師範。◯◯科、△△科と分けずにすべてを診る総合医は、患者さんがやってくればとにかく話を聞いてなにが問題かを探すところからはじめるという。「患者は自分のことをうまく言葉にできないから、かわりにいろいろ補ってあげないといけないよね?」校長がコメントすると「決めつけずにいろいろ聞きます。非常に編集的です」と医療と編集をすっと結んだ。「遠藤くんの持っている編集的医療性をこういう言葉にあらわしました」書を目にした瞬間の遠藤師範の表情にご注目!
◆阿曽祐子番匠 書「番迅」
「いやあ、いろんなことをしているね!ためらわないよね、阿曽さんは。」校長の弾むような声が響いた。師範代、師範と指導陣ロールを歴任後、今期はじめて番匠を務めた阿曽は、[守]講座のほかにも近江ARSにエディストライターに編集力チェック師範代にとさまざまなプロジェクトを掛け持ちして大活躍。いまや編集学校になくてはならない存在だ。「でもいつも手は震えています…ぶるぶると…」すこし声を震わせる阿曽師範を「自分のフラジャイルなところを決して隠さないでよくぞやってくれた」と称えた校長。「気持ちを込めて書きました」という一言に、阿曽師範への感謝とこれからへの期待が滲み出ていた。
見ての通り「玄々書」に描かれているのは既存の言葉ではない。ひとりひとりの突出したエディティング・キャラクターのしぶきをとらえて松岡校長が産み落とした世界にふたつとない言葉であり、そこに見え隠れする「方法」のうねりこそ校長からの最大の贈り物である。
福井千裕
編集的先達:石牟礼道子。遠投クラス一で女子にも告白されたボーイッシュな少女は、ハーレーに跨り野鍛冶に熱中する一途で涙もろくアツい師範代に成長した。日夜、泥にまみれながら未就学児の発達支援とオーガニックカフェ調理のダブルワークと子育てに奔走中。モットーは、仕事ではなくて志事をする。
【参加者募集】とっておきのお茶×読書×編集体験!9/13「本楼共茶会」コールドブリューベリーモヒート茶篇
9月13日(土)、松岡正剛プロデュースのブックサロンスペース「本楼」にて、お茶×読書×編集で参加者のみなさまを意外な世界へお連れする「本楼共茶会」(ほんろうともちゃかい)を開催します。7度目となる今回は「コールドブリュー […]
本楼の躙り口近くに松岡正剛校長の提灯が下がっている。チェ・ゲバラを擬いたものだ。ゲリラは毎日が未知の連続。何が起こるか分からない。だからこそ「常に編集を起こしている」存在とも言える。松岡校長が20世紀最後に記した千夜千冊 […]
さあ、お待たせしました!感門之盟のクライマックス「冠界式」のお時間です。新師範代たちの教室名がついに明かされます。発表の瞬間、どんなリアクションをするのか。どうぞお楽しみください!! 家村吏慧子 師範代 ハ […]
読書のキッカケは突然だ。ネットや書店で見て、誰かに薦められて、あるいは「師範選書」を知って。 イシス花伝所で2期以上指導を担った者へ贈られる師範選書。今季はこの一冊が贈られた。 『アナーキスト […]
松岡校長が残した「花伝」の書は126通り。生前、花伝所の師範に贈る「花伝扇」に書かれた数だ。相手を思いながらとった筆は、ひとつひとつ違う書を生んだ。「今後はたくさんの【花】と【伝】の文字を組み合せて、扇を渡していきなさい […]
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2025-09-16
「忌まわしさ」という文化的なベールの向こう側では、アーティスト顔負けの職人技をふるう蟲たちが、無垢なカーソルの訪れを待っていてくれる。
このゲホウグモには、別口の超能力もあるけれど、それはまたの機会に。
2025-09-09
空中戦で捉えた獲物(下)をメス(中)にプレゼントし、前脚二本だけで三匹分の重量を支えながら契りを交わすオドリバエのオス(上)。
豊かさをもたらす贈りものの母型は、私欲を満たすための釣り餌に少し似ている。
2025-09-04
「どろろ」や「リボンの騎士」など、ジェンダーを越境するテーマを好んで描いてきた手塚治虫が、ド直球で挑んだのが「MW(ムウ)」という作品。妖艶な美青年が悪逆の限りを尽くすピカレスクロマン。このときの手塚先生は完全にどうかしていて、リミッターの外れたどす黒い展開に、こちらの頭もクラクラしてきます。