デザインは「主・客・場」のインタースコア。エディストな美容師がヘアデザインの現場で雑読乱考する編集問答録。
髪棚の三冊vol.3 エディスト的ブロックチェーン考(情報代謝と価値の流通)
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『エンデの遺言』(河邑厚徳+グループ現代、NHK出版)2000年
『ブロックチェーン・レボリューション』(ドン・タプスコット+アレックス・
タプスコット、ダイヤモンド社 )2016年
『クラブとサロン』(NTT出版)1991年
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■情報リテラシーの作法
「情報リテラシー」の必要性は、映像作家の鎌仲ひとみさんに諭された。鎌仲さんは『エンデの遺言』の制作スタッフの一人で、その後も一貫してドキュメンタリー畑で映像作品を精力的に世に放ち続けている。
2008年、私は東京工科大学の研究室に鎌仲さんを訪ねてお話しを伺ったことがある。当時鎌仲さんは、ドキュメンタリーの手法とともに「メディアリテラシー」について学生たちに教授していた。FM番組のためのインタビュー取材だったのだが、そのアーカイブから一部を紹介させていただこう。
鎌仲ひとみさん(2008年 東京工科大学にて)
___メディアリテラシーを養う教育とはどういうものなのでしょう?
それはいろいろあるのですが、人から何かを言われた時にそれをキチンと聞いて自分の中で咀嚼して、それについて自分の意見を言える人間になる、ということがメディアリテラシーの基本なんです。思考を深めるスキルを身につけるということです。
___ということはマスメディアに対してというだけでなく、人と人との関係性についてのことでもありますね。
そうです。コミュニケーション能力がすごく必要です。その力を養うには、発信する立場に立てばすぐ分かるんです。
例えばブログを書いたら、ヒット数を多くしようといろいろな工夫がある訳です。キャッチーにしたり、明るく華やかにしたり、人を惹きつけるいろいろな方法がありますよね。
作る側に立って初めて、必ずしもすべて公平でフェアな形で情報が出されているのではないと分かってくる訳です。
___大学ではどんなアプローチで講義されているのでしょうか。
一番大事なのは第一次情報。直接自分が取材をするということなんです。 実体験はメディアではないんです。その人だけの経験だからその人のものになるんですよ。
でも自分が実体験をして、そのことを人に伝えようとした時にどうでしょうか? 主観が入らないか? 絶対入りますよ。だから「客観報道が在る」という思い込みを、先ず打ち砕かないといけないんです。客観報道なんてあり得ませんよ。主観報道を客観的にやっているだけです。(笑)
自分も相対化して見ることができるようになるのが最終目標ですね。
___誰もが受け手であり、送り手でもある。
発信してるんですよ、人間は。それを見て読み込むことをやっているんです。「今日の上司の雰囲気は?」とか、体全体で発信されているものがありますからね。「あ、今日はマズそう」とかね。(笑)
さてこのインタビューの後、時代は空前のSNSブームを迎えたのだが、「誰もが情報発信の主体となり得ることで培われる筈」と期待された情報リテラシーの醸成はまるで追い着いていないように見える。多様な価値を評価するはずのネットワークは多数性に侵食されるか、然もなくばフィルターバブルのクラスターに分断されるばかりだ。
21世紀に生きる私たちに求められるリテラシーは、大量かつ雑多な情報を取捨選択するだけでは不十分だ。たんに情報を情報として消費するのではなく、食物から栄養素を血や肉へ代謝させるような能力が求められている。この「情報代謝力」が、すなわち情報リテラシーなのだ。イシス編集学校はまさに情報代謝力の向上を志している。
[髪棚の三冊vol.3]エディスト的ブロックチェーン考
1)ヒトの生む価値
2)価値の測り方
3)情報リテラシーの作法
4)情報から価値を生む
深谷もと佳
編集的先達:五十嵐郁雄。自作物語で語り部ライブ、ブラonブラウスの魅せブラ・ブラ。レディー・モトカは破天荒な無頼派にみえて情に厚い。編集工学を体現する世界唯一の美容師。クリパルのヨギーニ。
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