タッパーウェアはそのまま飼育ケースに、キッチンペーパーは4分割して糞取り用のシートに。世界線を「料理」から「飼育」に動かしてみると、キッチンにあるおなじみの小物たちが、昆虫飼育グッズの顔を持ち始める。
「子どもにこそ編集を!」
イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。
子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩みQ&Aまで。
子供たちの遊びを、海よりも広い心で受け止める方法の奮闘記。
飛行機に乗ってみたい
秋頃より、日中関係の冷え込みが報じられることが多くなった。報道がより迫ってくるのは、夏に通信制高校3年生の長男と三泊四日の上海旅行をしたからだ。
中学校までの、出かけることが難しかった7年間が終わると、少しずつ遠くへ出かけるようになり、「そろそろ飛行機に乗って海外に行きたい」といいだした。
なぜ上海かというと、スマホゲーム「原神(げんしん)」などが世界的にヒットしているゲーム会社「米哈游(miHoYo)」の本社ギャラリーがあるからである。
また好きなものに「建築」が加わり、ティックトックやユーチューブで絶景を紹介する動画をフォローしてると、上海の超高層ビル群がよく流れてくるというのもあった。
長女は日本にいたいというので夫と留守番してもらい、二人旅することになった。
看板にはキャラクターが勢揃い
アプリを入れて離陸
久しぶりに買った『地球の歩き方』で強調されていたのが、スマホ必携であるということ。
紙媒体のガイドブックは情報のアップデートに追いついていないので、現地で移動する際は、スマホでの検索が基本になる。
グーグルマップなど西側で開発されている地図アプリは、中国当局により、アクセスが制限されている。中国本土の地図アプリ「白度(バイドゥ)」をインストールしておく必要がある。また現金決済が大幅に減っているので、「アリペイ」などの決済アプリも入れておく必要があった。 観光地ではないところに行きたいのでツアーは申し込まず、飛行機とホテルだけを予約して、関空から飛び立った。
フライト時間は2時間30分ほど。市内へは、時速300キロのリニアが走っている。今の所、世界で商用利用されているリニアはここだけ。地下鉄に乗り換えて、中心部にあるホテルに辿り着いた。
テックオタクは世界を救う?
翌朝、早速、ゲーム会社の本社ギャラリーに向かう。
「米哈游」の本社ビルは見上げるほど高かった。ドアのところに「TECH OTAKUS SAVE THE WORLD」と書かれている。
”TECH OTAKUS SAVE THE WORLD”
「OTAKUSって、あのオタク?」と長男に聞く。
「そう。日本語のオタク。日本のゲームやアニメにかなり影響を受けているらしい」
企業スローガンにするほどとは、想像していなかった。
受付を済ませて中に入ると、フィギュアやぬいぐるみなどが綺麗に並んでいる。これが、今、長男が遊んでいるワールドモデルなのか。ちょっと迷い込んでしまった感覚。周りを見ると、結構同じような親子がいる。子どもの年頃や雰囲気、親の雰囲気も似ている。中国は広いので他の地方から一緒に来ている人が多いんじゃないかなと長男が言う。
海外からの観光客はほとんどいないようだった。
展示を見ながら、ぽつぽつと会社の沿革などを子どもに教わる。
ガラス張りのギャラリー
ぬいぐるみやフィギュア
ゲーム会社の社会的意義
展示の後半は企業のミッションや社会的意義に焦点が当てられていた。「科創・文創・国際化」という3つのモットーが軸になっている。
「科創」は、科学技術がイノベーションを牽引すること、「文創」は文化的なイノベーションを重視することを意味している。
「国際化」はグローバル化を推進で、積極的に海外で展開することにつながっている。
「科創・文創・国際化」の三位一体
具体的な社会貢献事例として、観光地や伝統技術とのコラボレーションや、教育分野でのゲームの活用や書籍の寄付の実績などが詳しくパネル展示されている。
特に京劇を取り入れたキャラクター作りのプロセスは映像を使って展示されていた。
また、さまざまな受賞トロフィーがずらりと並んでいる。中国全土や上海におけるビジネスや技術のコンテストで高く評価されていることをはっきり見せていた。これらのことを、長男はまとめて「やる気がある」と表現する。
アップデートやイベントの頻度が適切で、ユーザーの期待に応えての改善がしっかり行われていて、遊んでいてストレスがないという。
観光地とのコラボ、「遊戯+文旅」。様々な「遊戯+⚪︎⚪︎」があった
賞状や盾などが壁一面に並んでいる
最新のショッピングモール
本社ギャラリーを出た後、近くにある、複数のゲームやアニメの会社が協力している開発エリア「元界(Neo World)」とその中にある「鑫耀・光环live」というショッピングモールに向かった。
ここもまだ、ガイドブックには載っていない。
最新のショッピングモール「鑫耀・光环live」
モール内には各社のアンテナショップがあり、限定グッズが売られている。長男が目を奪われたのが期間限定の紙袋だった。いくら買えばその紙袋がもらえるのか、即、検索する。
中国のコンテンツだけでなく、ポケモンやコナン、ウルトラマン、任天堂など日本のゲームやアニメのショップもあった。あちこちにあしらわれている犬のキャラクターは、調べてみて韓国発だとわかった。
モール全体の造りは、ゲーム要素を除けばイオンモールにそっくりだ。
フードコートやレストランには人がいっぱいで、雲南や四川、新疆など中国の地方料理に並んで、日本式の焼肉やすき焼きの店がある。
外も公園のように整備されていて、「米哈游」のゲームのキャラクターが立体化したオブジェが置かれている。中には高さ8メートルもあるものがあり、ゲームの臨場感が味わえるようになっていた。
新しい「中国らしさ」がおもしろい
二次元ビジネス
モール以外の場所でも、あちこちで見たのが「二次元」という言葉だ。
二次元文化とはACGN(Animationアニメ、Comic漫画、Gameゲーム、Novel小説)を総称した言葉で、既存の書店や百貨店には「二次元集積地」といった看板を付けたコーナーが取り入れられている。二次元ビジネスは、知的財産(IP)ビジネスとして重要視されつつある。
一方政府は、若者にとってゲームは有害であるとして、新作ゲームの認可を休止するなど、規制する動きも見せている。
その背景には、若者の保護だけでなく巨大化するIT企業を統制下においておきたいという思いがあるようだ。ただ、規制するだけでは株価が下落し、経済が低迷してしまうので、試行錯誤が続いている。規制がいつかかるかわ
からないことが、中国のゲーム会社が社会的意義を強調したり、海外を目指したりする流れにつながっている。
米哈游(miHoYo)のアンテナショップ
ポケモンは「宝可梦」
旅は「子どもに編集される」チャンス
長男にとって、ゲームの魅力は何よりも、キャラクターの造形とワールドモデルだという。日本のゲームは既存の人気キャラクターを使ったリメイクが多いのと、架空の世界や中世ヨーロッパ的世界が舞台になっているので、魅力を感じにくいのだという。
「米哈游(miHoYo)」のゲームの中には、日本をモデルにしたワールドモデルもある。それを見ると、向こうからは日本がこう見えているんだという発見がある。
また「国は違えど、同じゲームをしている」ことで、少なくとも若者同士は共通の文化や感覚を持っていることがおもしろい。
10代の子と旅をしなければ、『地球の歩き方』を見て、社寺や庭園などの風光明媚な地だけをめぐっていただろう。
普段から「子どもを編集する」だけでなく、「子どもに編集される」余地を作るようにしているが、この旅行ではプランニングそのものを任せてみた。
自分では辿り着けない中国の姿を目にすることができた。
日中関係は冷え込んでいると言われるのだが、ビルの入り口に書いてあった「TECH OTAKUS SAVE THE WORLD」を思い出すと、悲観一辺倒にならなくてもいいのではと感じている。
人気のゴミ箱キャラと。「ポイ捨てはやめよう」という啓発も兼ねているフォトスポット
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松井 路代
編集的先達:中島敦。2007年生の長男と独自のホームエデュケーション。オペラ好きの夫、小学生の娘と奈良在住の主婦。離では典離、物語講座では冠綴賞というイシスの二冠王。野望は子ども編集学校と小説家デビュー。
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コメント
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