着物のまにまに~時空センスの編集術 #1考・着物のモジュール 

2019/10/15(火)10:26
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かさねて、あわせて、きめる。
着物にまつわる仕草はことごとく、[守]で遊ぶ編集的方法だ。
システムエンジニアにして着物エディターである
イシス編集学校師範の森山智子が、
和装に忍んだシステム編集をひもとく。
                           
 
 こんにちは。イシス編集学校師範の森山です。
 
 こちらでは、私が着物についていろいろ考えたことを書き連ねていきたいと思います。さっそくですが、みなさんに、とっておきの着物の「見方」をご紹介いたします。

 

 実は、和装はOSなのです。

 

 自分のイメージ、コンセプトを分解して、アイテムにそして着付けに投影させていく。設定される様々なイメージへの対応力という点で、これほど汎用的で機動的でそして自己革新可能なシステムモデルはありません。

 

 着物姿を上から一つずつ解いていくと、帯締め、帯揚げ、お太鼓枕、帯、前板、伊達締め、腰紐、長着(着物)、・・・と畳の上にはらはらとすべり落ちていきます。それらは着る人のその日のその時の企みを達成させるため、注意深く選択されたもの。

 
 アイテムごとの担う役割はその時によって違います。着物姿、いわゆる和装姿を構成する様々なアイテムのことを、ここでは「着物のモジュール」と呼びたいと思います。日本人と日本の風土と歴史の合作である『和装』というOSを深く知るため、着物のモジュールを、そのハード面(製造物という視点)とソフト面(意匠・時代の空気)から一つずつ覗いていこうと思います。
 

 

◆モジュール【module】

 編集工学ではあらゆるものをシステムとみなす。
 システム全体の機能を実現するために、
 それを支えるささやかな構成要素たちを
 サブシステムやモジュールと呼ぶ。
 心臓の弁も、コーヒーミルの取っ手も、
 トランプのクイーンのほほ笑みも、
 すべてけなげなモジュールたちである。

  • 森山智子

    編集的先達:和泉式部。SE時代にシステムと着物は似ていることに気づき開眼。迷彩柄の帯にブーツを合わせる、洋服生地を着物に仕立てる等、大胆な着こなしをはんなり決める。イシスにも森山ファンは数多い。