昆虫観察には、空間の切り取りに加えて、時間軸を切り裂くハサミをタテヨコ自在に走らせるのもおすすめ。この天使のようなミルク色の生き物は、数十分間の期間限定。古い表皮を脱ぎ捨てたばかりのクロゴキブリです。
全ページオールカラーのビジュアルブックガイド『百書繚乱』(アルテスパブリッシング)。松岡正剛が自身を形作る500冊超の本とのインタースコアを試みた同書は、イシス人必読の書といえるでしょう。
第90回感門之盟「読奏エディストリート」の特別連載7回目。「マーキング」と「ヨミトキ」で奏でる師範の声の重なりをとくとご賞味あれ。
たった一冊の本を読むことだって他の百冊・千冊の本とつながっているのだということを宣言しておきたい。(2ページ)
55[破]別院では本書に肖り「百所繚乱」なるテーマを設定。松岡校長直伝の文章術「いじりみよ」で特定の場所に自分が惹かれる「理由」を発見したり、わたしの街の「はじめて」をクロニクル編集したり、物語からここぞという「シーン」を集めたり。場であれ人であれ物であれ、何にでも連想でつなげていけるのだ。
松岡校長が“宣言”しているように、とりわけ本は、である。[破]の稽古を終えたとき、われらは気づくのだ。ハイパーミュージアムがこんなにも近くにあったことに。(白川雅敏)
そのクリエイターが提案した作品はその世界のプロトタイプとなって、本人のレパートリーをふやすだけでなく、業界や市場の「見本」となっていく。そのように見本を提案できたものの中から、世の中で「手本」とされる傑作が確定する。(292ページ)
師範代とはクリエイターである。自身と場とを編集し続けることで、イシス編集学校の、そして世の中の過去も未来も再編集していく。守破で師範代から格別な指南を受け、花伝所で「花伝式目」を学んだ者が、次の師範代となってロールを継承する。多くの師範代は過去の師範代に学びつつ、新たな「見本」となっていく。その中から次の世代にとっての「手本」も現れる。この綿々と連なる編集の糸は、単なるノウハウの継承ではなく、型の相伝であり、新たな型をも生む一筋の光なのだ。その光は世界をも変えていく可能性に満ちている。(村井宏志)
そもそも昔話や民話は、村落が豊かで安閑としている時代や社会の中からは生まれない。(337ページ)
だとすれば、いまこの時代と社会は、新しい物語を生み出す絶好の土壌に違いない。だけれど、ワールドモデルは摩耗したまま、必要なオチも伏せられたナゾも不足して、雑に掬いとられた幼い原体験は、役割を果たせず個人のなかで眠っている。偶然を必然に変える勇気と、史実を引き受け語り直す力をもつ、語り手の出現を世界は待っている。(小林奈緒)
アルテスパブリッシング/2025年8月刊/5280円(税込)
■目次
はじめに 一冊の本に百冊が入っている(松岡正剛)
chapter 01 未知なる源郷を求めて
chapter 02 偏愛模倣術
chapter 03 本が鳴る・本が泣く
chapter 04 歴史の尻尾をつかむ
chapter 05 睨み合いのエレジー
伝説のオブジェマガジン「遊」の編集術
chapter 06 すみれ色の予感
chapter 07 イメージの列車にのって
chapter 08 ぞっとするものの正体
chapter 09 エレガントな暴走がしたい
chapter 10 本は遊びたがっている
最後に かくて「ブックウェア」もいったんお開きです(松岡正剛)
あとがきに代えて(松岡正剛事務所・寺平賢司)
アイキャッチ、レイアウト/阿久津健(56[守]師範)
編集/新井陽大(55[破]評匠)、大濱朋子(44[花]花伝師範)、角山祥道(44[花]錬成師範)
【感門90】読奏エディストリート――師範が読む [バックナンバー]
#02『うたげと孤心』(原田淳子、山下雅弘、牛山惠子)
#03『ことばと身体』(古谷奈々、大濱朋子、得原藍)
#04『ゲーテはすべてを言った』(阿久津健、一倉広美、相部礼子)
#05『初めて語られた科学と生命と言語の秘密』(奥本英宏、石井梨香、北原ひでお、山崎智章)
#07『百書繚乱』(白川雅敏、村井宏志、小林奈緒)
ISIS core project
イシス編集学校[当期師範&学林]チーム
「Pauca sed Matura」の言葉を背負い、守破離花遊の全指導陣が一挙集結する[ISIScore]。感門プランニング、エディットツアー運営、編集知のリバース・エンジニアリング、全てがここで交差する。知を組み立て、知を裏返し、知を書きなおしていく編集分子たちの風姿を垣間見よ。
【感門90】読奏エディストリート――師範が読む#06『異界を旅する能』
イシス編集学校の奥の院・花伝所といえば世阿弥。花伝所は、世阿弥の方法で貫かれています。その世阿弥に近づかんとするのが本書『異界を旅する能 ワキという存在』(安田登/ちくま文庫)。師範が、本書を通して世阿弥の方法を語り直し […]
【感門90】読奏エディストリート――師範が読む#05『初めて語られた科学と生命と言語の秘密』
[守]では毎期、第一線で活躍するゲストによる特別講義「編集宣言」を開催。今期56[守]のゲストは、カオス理論研究の第一人者・津田一郎さんでした。その津田さんと松岡正剛校長が大いに語らったのが『初めて語られた科学と生命と言 […]
【感門90】読奏エディストリート――師範が読む#04『ゲーテはすべてを言った』
今期56[守]のミメロギアのお題は「空海・ゲーテ」。ゲーテといえば昨年、21世紀生まれの鈴木結生による小説『ゲーテはすべてを言った』(朝日新聞出版)が話題となりました。第172回芥川賞受賞作を師範はどう読んだ? 第90回 […]
【感門90】読奏エディストリート――師範が読む#03『ことばと身体』
花伝所の入伝式では千夜千冊10夜をもとに、道場ごとに「5つの編集方針」を作り上げます。そのひとつにもなったのが、尼ヶ﨑彬の一夜。同氏による『ことばと身体』(花鳥社)は、花目付による入伝式の「式目の編集工学講義」でも引用さ […]
【感門90】読奏エディストリート――師範が読む#02『うたげと孤心』
イシス編集学校の応用コース[破]では、課題本の中から1冊選び、他の人に紹介文を書くという稽古があります。題して「セイゴオ知文術」。今期56[破]の課題本のひとつが、大岡信の『うたげと孤心』(岩波文庫)でした。松岡正剛校長 […]
コメント
1~3件/3件
2026-02-24
昆虫観察には、空間の切り取りに加えて、時間軸を切り裂くハサミをタテヨコ自在に走らせるのもおすすめ。この天使のようなミルク色の生き物は、数十分間の期間限定。古い表皮を脱ぎ捨てたばかりのクロゴキブリです。
2026-02-19
棚下照生。この忘れられたマンガ家が、最近、X(ツイッター)で話題になっていた(なぜかは知らないが)。大人漫画のタッチで劇画を描くという、今となっては完全に絶滅した手法が、逆に新鮮に映るのかもしれない。代表作『めくらのお市物語』は、連載当時、大変な人気で、映画やテレビドラマにもなったのだが、現在では、タイトルに問題アリで、復刊の目途もない。もしも古本屋で見かけることがあったら絶対買いです。
2026-02-17
小川の水底での波乱万丈を生き抜き、無事に変態を遂げた後は人家の周りにもヒラヒラと飛んできてくれるハグロトンボ。「神様とんぼ」の異名にふさわしく、まるで合掌するかのように黒い翅をふんわり広げては閉じる。