[ 編集×学習 ]実践レポート002
「二つ目の角を右にまがって、それから朝までまっすぐ!」
素っ頓狂なピーター・パンのかけ声は、ウェンディー達を空へと運ぶ。
編集稽古でもまた、フライング・キッズを見ることができる。
2019年秋、川崎市内のとある小学校では、子ども編集学校による「よみかき編集ワーク」が行われていた。
進行を担当したのは、得原藍(39[破])。大学でバイオメカニクスを教えながら、家では子育て、地域では子どもの運動発達を指導する仕事を行う、多才ウーマンである。
ここではどんな「魔法の粉」が子どものイマジネーションを引き出したのか。同じく子育て編集中の上原悦子師範代がインタビューした。
ー「よみかき編集ワーク」は、どんな内容なんですか?
オノマトペでダンスを作る「ことばダンス」、自分の元気度に名前をつける「元気のスコア」など、ことばの幅を広げるワークをしています。オノマトペはかなり面白かったようで、「またオノマトペやりたい!」と、毎回リクエストされます(笑)
ー最初からそんなにノリノリでした?
いや~、ワークショップを始めた時は、「で、何書けば正しいの?」的な反応をする子が多かったですね。
子どもたちにはまず「何を答えてもいい」「人の発想って面白い」「意見を言っても誰からもバカにされない」という思考を持ってもらえたらいいなと思いながらやっています。
ー発想していいんだ!というところか。子どもも「正解」にとらわれて「魔法の粉」がすぐには効かないんですね。
「よみかき編集ワーク」をやっていて、子どもが変わったな、という瞬間があれば。
学業はできて、すごくにぎやかで目立つタイプの子がいるのですが、その子が「エンピツの使い道」を考えるときに、「イライラ解消に折る」とか「嫌な相手のお尻に刺す」とか、みんなが何言ってるんだー!と思うような回答を。
でもそれも、「折れる素材でできている道具」だってことに注目したんだねーとか、「エンピツって刺さるほど尖っているからエンピツだよね!」とか、彼が本来狙っている「ウケ」とは違う見方で『面白いな!』って返してみたんです。
そうしたら本人は「え?そこ?」という顔をしてたんですが、周りの子は「なんだそんな答えでも、確かにエンピツらしいかも?」と思った子もいたみたいで、こちらの返答をよく聞いてくれている視線を感じました。
大人もそうだと思うんですが、自分の回答を受け止めてもらって、それに対して返答してもらう、それを集団の中で流さずにやってもらう、ということって普段あんまりないと思うんですよね。
でも返答してもらえるからこそ、「言ってみよう」と思ってくれるのかな、と。
ーー「発想」「表現」の間にあるプロセスに手を添えたのが得原さんの言葉ですね。私が師範代として指南するときも同様です。「方法を示す」というひと手間があれば、「なるほど!そんな考えもいいんだー」と、遊びが「方法の学び」になりますね。
どんな発想も、面白い!と受け止めてくれる大人の存在と方法を示す言葉。
編集の魔法の粉は、子どもたちの想像力の羽にひらひらと降り注いでいる。
聞き手:上原悦子(師範代/NPO支援)
佐々木千佳
編集的先達:岡倉天心。「24時間働けますけどなにか?」。無敵の笑顔の秘密は未だ明かされない学林局局長。NEXT ISISでも先頭を日夜走り続けている。子ども編集学校開校は積年の願い。
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