私の28[花]キャンプは、吉阪隆正の建築思想【不連続統一体】の体験だった。場面ごとに異なる空間が次々と立ち現われてくる。よく分からないままに一周すると、ようやく建物を貫く原理のようなものが見えてくる。この「遅れて」やってくる全体性がたまらなかった。

桜はピンク色の花から、緑色の葉へすっかり装いを変えた。時節が移ると変化がある。それは花伝所でも同じだ。前期をうけ、フィードバックをかけ、変化を起こす。
「エディスト練習会やります!」
花目付・林朝恵がボードメンバーに呼びかけた。前期では大きな式目改編があり、演習に注力するという方針であったため、花伝所指導陣によるエディスト記事が少なかった。しかしそれではいけない。校長・松岡正剛はどんな理由があっても千夜千冊を書き止めることはしない。書くからこそ、説明できないものを発見することができる。世阿弥は父から受け継いだ能の奥義を子孫に伝えるために『風姿花伝』を書いた。では花伝所は何を書き伝えるのか。今期、総力をあげてエディスト記事を書くことが、目標に掲げられた。しかしいざ書くとなると、何をどう書けばいいのか悩ましい。そこで、すでにエディスト記者として活躍している林によって、練習会が開催された。
指導陣が集まったのは4月11日木曜日の21時。記者未経験の師範に混ざり、所長・田中晶子や、10本以上の記事を書き、今期錬成師範から花伝師範に着替えた森本康裕の姿もあった。文章を書く際に忘れてはいけないのが、「いじりみよ」だ。多くの記事でも、この型が意識されている。「いじりみよ」にそったQが、林から次々と投げられた。
「1分間で気になる物1つ選べ」
「1分間でその物がどんな様子か描写せよ」
「1分間でその物にどんな由来があるか説明せよ」
「1分間でその物が自分にとってどんな存在か書け」
「1分間でその物とこの先どんな関係があるか予想せよ」
指導陣は投じられるQに、Zoomチャットを使い、黙々と回答していく。そしてチャットにあげた回答をもとに10分で記事に仕立て、評価を交わしあう。静かで熱いラリーを終えたのは23時を過ぎていた。
photo by shinobu hirano
▲注意のカーソルが当たった物には、エディティング・モデルが潜む。花伝師範から花目付に着替えた平野しのぶは韓国で衝動買いした壺に目をとめた。持ち帰る際、空港で手こずったというが、困難を物ともせず軽やかに飛びまわる平野の姿がみえる。
photo by kyoko arakaki
▲51[破]師範代から錬成師範に着替えた新垣香子の相棒であるコピー機。新垣が携わっている塾の子供たちにも自由に開放している。新垣の受容のカマエがここにも感じられる。
夜稽古翌日の4月12日、再びの夜。多くの花伝所指導陣が「『情報の歴史21』を読む」第12弾に参加していた。講演した能楽師の安田登氏は、「もっと、語るコトバが必要だ」と唱えた。そしてただ話すだけではなく、本楼を能舞台に変え、「コトバ」を実演した。「コトバ」を体感した指導陣は、花伝所に託されたものをどう伝え語るか、態度で示すだろう。
文 中村裕美(錬成師範)
アイキャッチ 宮坂由香(錬成師範)
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2025-07-03
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2025-07-02
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2025-07-01
発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。