安田登を見ていると、ワキの熟知を通して日本や日本人が見失った「日本という方法」をみごとに見抜いたという痛烈な獲得を感じる。
−松岡正剛 千夜千冊1176夜『ワキから見る能世界』(安田登)
「例えば、悲しいという言葉は、悲しい気持ちを表しきれない。表せない感情はディスカウントされてしまう。そうじゃないコトバというものを、そろそろ考える必要があるんじゃないか」。
こう語るのは、能楽師の安田登さん。
下掛宝生流能楽師のワキ方として活躍するかたわら、研究・執筆業にも積極的に取り組まれています。『あわいの力 「心の時代」の次を生きる』や『野の古典』などの著作をご存知の方も多いのではないでしょうか。
もっと、語るコトバが必要だ
安田さんは、高校時代に麻雀をしていて「萬」という文字に興味を抱き、そこから一気に甲骨文字の世界にのめり込んだそう。
そんな安田さんがいま熱中しているのが、空海についての研究です。「今こそ、空海ですよ」と断言した上で、「空海を語るコトバが、まだない」と問題意識を吐露します。「空海の頭の中ではつながっていた事柄同士が、文字で記述しきれていない。これを改めてつなげ直して、現代に甦らせていくコトバが必要です」。
語るコトバが足りないのは、空海についてだけではなさそうです。
感情を表すコトバ、見えないものを浮き彫りにするコトバ、複雑なものを複雑なまま語ることができるコトバ。
安田さんの言う「コトバ」とは、文字も、声も、絵も、音楽も、そういうすべてを引っくるめたもののこと。世界と接続して、世界を他人の脳内に再現する媒体、それがコトバです。
能のワキとしても、シテ(主人公)の無念の物語に耳を傾け、残念が昇華する手伝いをする安田さん。コトバの力については、並々ならぬ実感と確信を持たれています。
「『情報の歴史21』を読む」では、朗読と琵琶も!
そんな安田さんの、「『情報の歴史21』を読む」イベントご登壇が決定しました。
「『情報の歴史21』を読む」では、文字や言葉や表現様式の歴史を振り返りながら、新しいコトバの可能性を考えます。
イベントでは、安田さん自らが「コトバ」を実演いただく予定です。
琵琶奏者のかすみさんにもご一緒いただきながら、あの文豪の作品を朗読くださるということ……!どんな一夜になるか、ぜひご期待ください。
「『情報の歴史21』を読む 第12弾 安田登編」は、2024年4月12日(金)開催です。
▶︎お申し込みは、こちらから。
“私たちは夢を記述することはできない。なぜなら記述言語は直線的で構造的だからだ。
それに対して、夢は錯綜的でありプロセス的だ。直線的で構造的言語では記述できない。
夢だけではない。私たちが生きている世界そのものが、常に変容を続けるプロセスだ。
生きていること自体が記述を否定するプロセスであり、夢なのだ。”
-安田登『見えないものを探す旅 ー旅と能と古典』
『見えないものを探す旅 ー旅と能と古典』安田登(著)亜紀書房 2021
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■日時:2024年4月12日(金) 19:30~22:00
■参加費:リアル参加4,000円(税込4,400円)
オンライン3,000円(税込3,300円)
■会場:リアル参加:本楼(世田谷区豪徳寺)
オンライン参加:お申し込みの方にZOOM アクセスをお送りします。
※リアル参加もしくはオンライン参加のどちらかをご選択いただけます。
■定員:リアル参加につきましては先着20名となります。
■参加資格:どなたでもご参加いただけます。
■参加特典:お申込者限定のアーカイブ動画あり(視聴期間:1カ月程度)
■申込締切日:2024年4月11日(木) 12:00まで
■お問い合わせ:front_es@eel.co.jp
*『情報の歴史21』(書籍orPDF)をお持ちの方はご持参ください。
*会場参加の方は、筆記用具をご持参ください。
▶︎▶︎▶︎参加お申し込みはこちらから◀︎◀︎◀︎
<安田登さんプロフィール>
下掛宝生流能楽師。1956年千葉県銚子市生まれ。高校時代、麻雀とポーカーをきっかけに甲骨文字と中国古代哲学への関心に目覚める。 能楽師のワキ方として活躍するかたわら、『論語』などを学ぶ寺子屋「遊学塾」を、東京(広尾)を中心に全国各地で開催する。
著書に『『おくのほそ道』謎解きの旅 身体感覚で「芭蕉」を読みなおす』(筑摩書房)、『イナンナの冥界下り』(ミシマ社)、『見えないものを探す旅 -旅と能と古典-』(亜紀書房)、『野の古典』(紀伊國屋書店)、『変調「日本の古典」講義 / 身体で読む伝統・教養・知性』(祥伝社)など多数。新刊に『『論語』は不安の処方箋』(祥伝社)がある。
山本春奈
編集的先達:レオ・レオーニ。舌足らずな清潔派にして、万能の編集ガール。定評ある卓抜な要約力と観察力、語学力だけではなく、好奇心溢れる眼で小動物のごとくフロアで機敏な動きも見せる。趣味は温泉採掘とパクチーベランダ菜園。愛称は「はるにゃん」。
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編集工学研究所の社長・安藤昭子のコラム連載「連編記」の第6回をお届けします。 (社長コラム「連編記」は、「編集工学研究所Newsletter」で配信しています。Newsletterには、編集工学研究所のウェブサイトよりご […]
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