REMIXは感門之盟の直後も止まらない。卒門式を終え、校長校話から次の問いを受け取ったばかりの48[守]師範代が集まり、座談会が開かれた。
参加したのは渋江徹師範代(じきじき編調教室)、輪島良子師範代(電束青猫教室)、中尾行宏師範代(モーラもらもら教室)、西村慧師範代(臨間オチョコ教室)、大濱朋子師範代(点閃クレー教室)の5人。進行は師範の阿曽祐子が務め、番匠の石井梨香、師範の森本康裕も同席した。5人の師範代はどのような想いで48[守]を走り抜け、この先どのような道を目指すのか。
■テキストと図解のREMIXはどう出世魚するか
医療従事者ながら切迫感を見せない語り口を持つ渋江は、図解により脱皮したと語る。指南の固さ&型の手渡しに不安を感じながらスタートした渋江に変化が訪れたのは、用法2に入ってからだ。テキストだけで伝えきれているだろうかと悩んだ末、意識的に図を組み込んだという。シメスことで指南に幅をもたせようとしたのだ。学衆からもわかりやすいと評判で、回答が届くことがますます嬉しくなった渋江は、どんな図解を作ろうかとワクワクしていた。
[守]の師範代をしたからこそ見たものがあった。それは[破]にもあるのではないかと感じた渋江は、48[守]学衆と共に師範代として[破]に進むことを決意。感門之盟では出世魚した教室名「それが編調教室」を授かった。1791夜『弓と禅』を読んだ誰もが考えた「それ」。「会」と「離」の間にある目に見えないものを[破]で見つけるという、大きな問いを校長から受け取った。
【次の一歩に悩むアナタヘ】
やってみると楽しいからやってみたほうがいい(渋江徹)
■自分が楽しまなきゃ始まらない!
回答が持つ世界観と指南が持つ世界観を重ねることで、別様の可能性を示したいと考えていた輪島。その指南は徹底したコンパイルから始まる。回答の内容や感じたイメージについて調べ上げ、シソーラスを広げてエディットするのだ。それが最初にあらわれたのが、004番「地と図の運動会」である。学衆の頃にもらった指南を擬いたもので、師範代になったら何を言われようとも絶対にやりたいと考えていたという。
そんな輪島にも苦労があった。入念なコンパイルゆえ、1つの指南に時間が掛かることもあり、未指南が溜まってくるのだ。ある時弱音を漏らした輪島に律師の八田英子は「学衆を楽しませるように」と声を掛けた。それが輪島の気持ちに変化をもたらした。「頑張れ自分」ではなく「楽しめ自分」を合い言葉とし、見事48守の門をくぐった。
何も考えずに飛び込む癖があるという輪島は、[守]の勢いそのままに[破]に進む。「伝束スパーク教室」。青猫は姿を変え、方法を束ねた火花となる。
【次の道が気になるアナタヘ】
誰もがきらめく瞬間に立ち会える!(輪島良子)
■モード編集がもたらす師範代の変化
つらさも楽しさの1つと感じる大濱は、「48守はずっと楽しかった」と笑顔を見せた。指導陣の研鑽の場である伝習座で、林頭の吉村堅樹が言った「すべて受容すること」という言葉を常に考えていた大濱は、回答を読んでわからないことがあっても「自分の見方が足りていない」と考えていた。その回答を出してきた学衆のモデルを捉え、師範代のモデルと重ねながら指南する。そうすることで学衆と師範代のモデルが混ざりながら化学反応を起こしていく。
番ボーのラリーで登場したのが受容担当のキュウと指摘担当のマシロである。この2人が大濱に代わって学衆の回答をバシバシと指南し、学衆を虜にした。しかし2人がもたらしたものは、それだけではなかった。大濱自身の回答に対する見方も変えたのだ。大濱に新たな「たくさんのわたし」が花開いたのである。
48[守]学衆と一緒に[破]に進みたいと考えていた大濱が目指すのは、いかなる時も自分で自分を編集し続けることである。クレーはクォートになり「点閃クォート教室」へ。大濱の閃光が走り続ける。
【どう変わるかよくわからないアナタヘ】
稽古を通して世界がやさしくいとおしくなった(大濱朋子)
▲上段左から、石井、阿曽、森本。中段左から、渋江、西村、中尾。下段左から、輪島、大濱。
感門之盟を終えた師範代達。晴れやかな笑顔が並ぶ。
■オラオラな師範代からモラモラな教室へ
教室名を受け取った時、校長から「オラオラするなよ」と言われた中尾は、学衆との関係線の引き方を常に考えていた。しかし、指南の筆が乗ってくるとオラオラが顔を出す。それは「怯え」の裏返しだったのかもしれない。与件は学衆にあることに気がついた中尾は、指南を漫才風にしたり、千夜千冊を引用したりと、学衆が持っているケバケバをくすぐる方法を考えるようになった。教室では、「モラモラする」というニューワードが生まれ、卒門直前のぎっくり腰すら編集機会となり、師範代と学衆の一種合成で教室模様が形作られていった。
編集工学にどっぷり浸かりたいと考えている中尾の次なる道は15[離]。守学衆の頃からいずれ進みたいと思っていた、編集学校の奥の院へいよいよ足を踏み入れる。そんな中尾だが、感門之盟での突破式の様子を見て、決心がちょっと揺らいだようだ。[破]には[守]とは違った感動があると。どうやら50[破]の師範代が早速1人誕生したようだ。
【不足が多いと感じているアナタヘ】
先に進めば何倍も稽古できるので畏れたまま進んでも大丈夫!(中尾行宏)
■師範代はたくさんのプロフィールを持って進む
45[守]アフロル・テクノ教室で師範代を務めた西村は、48[守]速修コースでの再登板となった。速修コース師範代を務めたのは14[離]を退院した3人。バックヤードでは師範代同士が相互編集しながら、開講に向けて入念な準備が行われていた。しかし、速修コースはやはり勝手が違った。そのスピードに戸惑うこともあった西村だが、開講一週間で学衆の「らしさ」を見抜きニックネームをつけ、毎日がお題の締め切りであるにも関わらず004番では再回答を求めた。教室名に肖ったリンリンとカンカンというパンダのキャラクターを生み出し、指南の際に力を借りることもあった。そんな西村のしつらい・もてなしに学衆はおおいにわき上がった。
西村に次の道を聞くと1回休みだと言う。偶然か必然か、感門之盟のエディターシップにある48守双六見立てのマスの通りになるようだ。最後に西村はつぶやく。「[破]の師範代もやってみたいと思うかも」。[守]と[破]をはなればなれにしたくないと考える西村が、[破]にアフロで臨チョコな旋風を巻き起こす日も遠くない!?
【別様の自分を見つけたいアナタヘ】
編集学校は「あこがれ」を追い続けるための良いツール(西村慧)
48[守]19人の師範代は、「たくさんのわたし」を見つけながらあちこちでREMIXし、4か月を完走した。節目を迎えた今、次なる編集へ向かて別様の可能性を追いかけるため、師範代はそれぞれのミチを見つめる。この記事を見ているアナタはどうする?
<48[守]師範代座談会1の様子>
森本康裕
編集的先達:宮本武蔵。エンジンがかかっているのか、いないのかわからない?趣味は部屋の整理で、こだわりは携帯メーカーを同じにすること?いや、見た目で侮るなかれ。瀬戸を超え続け、命がけの実利主義で休みなく編集道を走る。
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