「今から2分間、お互いに意見出し合って!」。
伝習座のプログラムに必ず織り込まれる指南語り。先達の指南モデルに真似ぶこの一コマを担当した師範の嶋本昌子が突如、聞き手の師範代たちにボールを投げた。ポカンとする間もなく、師範代たちは、嶋本のディレクションに応えてワークを始めた。ターゲットは、学衆の可能性を見つけていく指南を見つけることだ。無茶ぶりかと思いきや、あっという間にいくつかのキーワードがあがった。
師範代が預かる教室は、生き物と言われる。10名近い学衆たちが稽古を繰り広げるその場は、常に変化し続け、何が起きるか誰にもわからない。加速し過ぎて転倒することもあれば、オーバーヒートして摩擦が起きることもあるし、季節の変化に伴って急に調子が狂うこともある。師範代というもの、教室に起きるどんなことも進んで引き受ける特性をもつ。急に降り注いだワークに応答する構えは、師範代という覚悟そのものだ。
伝習座の後は、錬守に突入だ。師範代と師範がチームを組んで、本番さながら、いや本番以上に、指南三昧の9日間を送る。この濃密な錬守期間で、師範代という覚悟に加速が重ねられていく。
「気分は錬守ダイバーでまいります!」と齋藤彬人師範代の意気が揚がれば、福井千裕師範代は「回答がくると1分でもはやく送りたい気持ちになりますね」と胸を高鳴らせる。「楽しいとやっちゃいますね。暗中模索もまた楽し」と小松原一樹師範代がひたむきに進む。再登板師範代も加速に余念がない。相部礼子師範代は、早朝の通勤電車の中から2指南届ければ、野住智恵子師範代が「ワタクシも、早速に指南に向かいます」と呼応する。
「お子様ご入学おめでとうございます!」と宮坂由香師範代は、期間中に子どもの入学式へ出向く総山健太師範代と新井和奈師範を送り出した。未知への希望に目を輝かせる子どもに、自らの姿を重ねた。総山師範代は「入学式は編集稽古そのもの」と早くも公私混同状態だ。外のモデルに学んだ二人のアクセルは止まらない。錬守期間を終えた翌朝には「何度も指南が楽しい~と、感じました」と大塚信子師範代の声が響き渡った。
松岡校長から直々に教室名をもらってから一か月経たぬうちに、師範代たちは船に乗り込む。いよいよ、49[守]という大海原へ出航だ。師範代は、どんなダイブも受け止める用意十分だ。後は、あなたの決意のみ。
阿曽祐子
編集的先達:小熊英二。ふわふわと漂うようなつかみどころのなさと骨太の行動力と冒険心。相矛盾する異星人ぽさは5つの小中に通った少女時代に培われた。今も比叡山と空を眺めながら街を歩き回っているらしい。 「阿曽祐子の編集力チェック」受付中 https://qe.isis.ne.jp/index/aso
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