『絵師ムネチカ』から目が離せない。天才は往々にして何かが欠けている。そしてそのこと自体がまた天才の天才性を引き立たせる。周囲の人々の鼻面を引き回し、人生を変えていく「天才少年」のデモーニッシュな魅力を容赦なく描いた怪作。
これまでにも「神童」もの(?)を数多く描いてきたさそうあきら先生だが、ご本人は極めて方法に自覚的な職人タイプ。長年、マンガ学科の教員として教鞭をとり、『マンガ脚本概論』などの技法書にも定評がある。
たまむしメガネ連教室・松田秀作師範代は、黒から緑を帯びたメガネにかけ換え、半解マイカ教室・登田信枝師範代は、占い師のような装いで石を半分に割った。半音タトゥー教室・榎田智子師範代は、その日おろしたばかりのズボンにできた創を見せ、モウソウ縁子さん教室・小林美穂師範代は、手にした灰色の日常世界の写真を破った。
左上:半解マイカ教室・登田信枝師範代、左下:モウソウ縁子さん教室・小林美穂師範代、右:半音タトゥー教室・榎田智子師範代
これは2024年10月5日に行われた、創守座での風景である。
54[守]の師範代たちは自身が作成したフライヤーを手に、15週間の編集稽古を通して出会う世界について全身で語った。A4の紙に収まりきらなかった想いを、つまみ食いしてみる。
■たまむしメガネ連教室・松田秀作師範代
手にしたのは編集の型を通して、世界の見方を変幻自彩に見ることができるメガネ。これを手渡し、日常で使ってもらうことが自分の使命だと宣言する。
■中ゴシABC教室・上原正行師範代
「中」とは新しいものも古いものも、つるつるもケバケバも、漢字もカナもアルファベットもある状態。中腰になって目線をずらし、この姿勢は探し続ける態勢だと話す。
■カタコト黄表紙教室・細井あや師範代
様々な木の色や風合いを活かし、組み合わせて作られる寄木細工の小箱。それを[守]での経験と重ねる。中に入っているのは、それぞれが持つ曖昧な感覚だと言うと、手にした小箱を揺さぶった。
■チリモンどんたく教室・小湊倫子師範代
オンライン参加であった小湊師範代。画面から飛び出るくらいの勢いでお囃子をうたいおどり全身で編集の面白さ表すと、自分の中にある可能性を秘めたモンスターを表象させようと、笑顔で伝えた。
左上:たまむしメガネ連教室・松田秀作師範代、左下:チリモンどんたく教室・小湊倫子師範代、右上:中ゴシABC教室・上原正行師範代、右下:カタコト黄表紙教室・細井あや師範代
創守座のちょうど一週間前、本楼では津田一郎氏による「カオス理論と物語編集」の講義があった。津田氏の語りによって、アルマスキャビアのような存在だったカオス理論が、いくらの醤油漬けくらい、距離が近づくように感じた。同じ場に立ち、語った54[守]師範代たち。彼らの語りもまた、編集なんて関係ないと思う人を、引き寄せる力があった。師範代が加わることによって、引き出されるうま味。彼らと共に味わう54[守]が間もなく始まる。
文・アイキャッチ/中村裕美(54[守]師範)
写真/阿久津健(54[守]師範)・北條玲子(54[守]師範)
◆イシス編集学校 第54期[守]◆
稽古期間:2024年10月28日(月)~2025年2月9日(日)
詳細・申込:https://es.isis.ne.jp/course/syu
イシス編集学校 [守]チーム
編集学校の原風景であり稽古の原郷となる[守]。初めてイシス編集学校と出会う学衆と歩みつづける学匠、番匠、師範、ときどき師範代のチーム。鯉は竜になるか。
『関西汁講~型を身体に通す・京都まち歩き~』再演【56[守]】
参加者の脳内がカオス状態にさしかかりつつあった56[守]向け特別講義の最終局面で、登壇者の津田一郎さんから最後のメッセージが放たれた。 「Needs」ではなく「Wants」に向かえ 「Needs」は既に誰もが必要と […]
イシスが「評価」の最前線だ(後編)--対話から生みだす(56[守])
イシス編集学校[守]コースには、既存の価値観におもねることなくユニークな「評価」を繰り出す目利きの集団、同朋衆がいる。前編に続いて、同朋衆の「評価」の秘訣を解き明かしていく。 ◆評価者は対話する 「番ボ […]
イシスが「評価」の最前線だ(前編)--才能をひらくために(56[守])
いま「評価」がますます貧しくなっている。衰えて細っている。 「いいね!」の数や再生数の多さばかりがもてはやされ、「あなたにぴったりですよ」とニュースもエンタメも今日の献立も転職先も、次から次へとAIが選んでくれる。 […]
世間では事業継承の問題が深刻化しているが、イシス編集学校では松岡校長の意伝子(ミーム)を受け継ぐ師範代になるものが後を絶たない。56[守]では、初の”親子”師範代、スクっと芍薬教室の原田遥夏師範代が誕生した。まもなく卒門 […]
春のプール夏のプール秋のプール冬のプールに星が降るなり(穂村弘) 季節が進むと見える景色も変わる。11月下旬、56[守]の一座建立の場、別院が開いた。18教室で136名の学衆が稽古していることが明らかに […]
コメント
1~3件/3件
2026-03-19
『絵師ムネチカ』から目が離せない。天才は往々にして何かが欠けている。そしてそのこと自体がまた天才の天才性を引き立たせる。周囲の人々の鼻面を引き回し、人生を変えていく「天才少年」のデモーニッシュな魅力を容赦なく描いた怪作。
これまでにも「神童」もの(?)を数多く描いてきたさそうあきら先生だが、ご本人は極めて方法に自覚的な職人タイプ。長年、マンガ学科の教員として教鞭をとり、『マンガ脚本概論』などの技法書にも定評がある。
2026-03-17
目玉入道、参上。
体を膨らませ、偽りの目玉(眼状紋)を誇張して懸命に身を守ろうとしているのは、カイコの原種とされるクワコの幼虫。クワコの繭から取れるシルクは、小石丸のそれに似て細く、肌触りがよいらしい。
2026-03-10
平和に飛び交うモンシロチョウも、地球史スケールでは、ほんの少し前に日本にやって来たばかりのパイオニアらしい。押さえきれない衝動に駆り立てられて彼方に旅立つ人たちの原型は、海をわたる蝶なのかもしれない。