七夕の伝承は、古来中国に伝わる星の伝説に由来しているが、文字や学芸の向上を願う「乞巧奠」にあやかって、筆の見立ての谷中生姜に、物事を成し遂げる寺島ナス。いずれも東京の伝統野菜だが、「継承」の願いも込めて。

脈動が始まった。
9月28日、今まで講座の中だけで秘せられていた師範代の学びの場、「伝習座」が、178回めにして装いを新たに2つに生まれ変わった。
ひとつは、外部に開かれた「NEO伝習座」だ。イシスコミッションメンバー津田一郎さんを招いての“共に学ぶ”場が、新たな渦を起こしたことは、別の記事が詳しく触れるだろう。
「伝習座」のもうひとつの側面、“師範代への伝承と継承”は今期、「創守座」として新たに立ち上がった。故事成語「創業守成」から二字取っての「創守」である。
唐の太宗は腹心に尋ねた。何かを創り出すことと、それを守ることと、いったいどちらが難しいか。
ひとりは「創業(草創)」といい、ひとりは「守成」だと答えた。 これが「創業守成(創業は易く守成は難し)」という故事成語を生んだ(『貞観政要』)。新しく創り出すことは難しいが、それを守ることはもっと難しい、という意味だ。
唐の太宗は「創業は易く守成は難し」と言ったが、[守]では、一様に解釈しない。「創守」はもっと多様で別様だ。
10月5日、第1回目の54[守]創守座で、鈴木康代学匠は、冒頭の挨拶で「創」は「創始」であり「創傷」であると切りだした。かつて松岡正剛校長は、創はキズだといった。「創とは、アーカイブ(倉)を刀(リットウ)で掻き回すこと」であると。
「創るということは、傷みや悲しみを伴う。キズを恐れず、私たちは[守]になっていく」(康代学匠)
実は54[守]の指導陣たちは、事前に「創」と「守」のシソーラスを広げていた。
[創] はじめる、おこす、立ち上げる、あらわす、築く、きず、欠く、あく、裂く、繕う、築く、做る、創発、創造、創作、別様、関係、つくる、別様、つく(突く/衝く/撞く)、つつく、切実、一擲、一滴、建てる、立つ(立秋とかの意)、わける、+1(プラスワン)、結ぶ、足、壊す、born、気づく、ひらく、拓く、展く、啓く、立つ、建てる、生成
「創」は立ち上げることであり、そこをめがけてつくことであり、別様の歴史と自己を展くことであった。
[守] たもつ、続ける、囲う、綴じる、守備、捕手、ご加護、冥護、母、みる、型、倣う、したがう(従)、たてまつる(奉)、そう(則、沿)、よわし、ルール、みる(観る、見る)、手、重ねる、Protect、追う、継ぐ、接ぐ、受ける、もらう、承る、馳せ参じる、寄せる、借りる、綴る
「守」は続けることであり、型に倣い、型を借り、型を重ねることであり、継いで接いでいくことだった。
▲本楼の書架には、「創」「守」のシソーラスや関連千夜の一節が貼られた。
▲本楼の一角には、師範たちがしつらえた「校長の守と創の棚」。
師範代と指導陣45名が第1回創守座という座を建立した。ここに集いし人たちは「創守」を掲げ、キズを恐れず、編集的なわたしになっていくのだ。
▲編集的自己になっていく54[守]の面々(撮影/小森康仁)
文・写真/角山祥道(54[守]師範)
アイキャッチ/阿久津健(54[守]師範)
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イシス編集学校 [守]チーム
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コメント
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