自ら編み上げた携帯巣の中で暮らすツマグロフトメイガの幼虫。時おり顔を覗かせてはコナラの葉を齧る。共に学び合う同志もなく、拠り所となる編み図もなく、己の排泄物のみを材料にして小さな虫の一生を紡いでいく。
師範の新井和奈は見逃さなかった。
教室では[守]のお題036番:バナナと魯山人が出題された。これは2つの文章を融合し、大胆な着替えを起こそうというお題だ。モモめぐむ教室の学衆・Tの回答冒頭には、こう書かれていた。
いよいよ最終場面、稽古もますますエスカレートしている中、着せ替えてお着替えの練習が始まっていますね。これはドレスコードを備えて、ラストパーティへの足を調達し始めなければいけないところかな。
お題はあと3題。言葉の着替えから、文章の着替えに稽古が移った。今まで学んだ編集の型を携え、残りのお題に取り組もうという、卒門への構えを見立てたマクラだった。そこに師範・新井は来たる感門之盟との関係線を引いた。
感門之盟のドレスコード どうする?
@モモめぐむ教室
勧学会での発言の最後に添えられたこのコメントに、学衆Yが反応を示した。今回の感門之盟には学衆が本楼に戻ってくる。本楼出席を決めていたYは、どのような服装でいこうか悩んでいた。そこに師範代の中村裕美は過去の感門之盟の様子を伝えた。教室名らしさを取り入れた服装、学衆に衣装編集してもらった師範代。過去の話にインスピレーションを受けたYは、モモめぐむらしさとは、連想を膨らませる。
中村は、モモめぐむ教室の世界を、ミヒャエル・エンデの『モモ』の世界と重ねていることを明かしていた。エンデが描くモモは、ロックな生き様。しかし寿ぎの場であれば、ドレッシーな方がいいか。ツギハギの服を着るモモならば、古着だろうか。勧学会に様々なパターンの衣装案を提示すると、教室仲間に呼びかけ、アイデアを求めた。「師範代をいじろう」。ドレスコード談議が一気に加速した。
「イメージカラーは『モモ』の表紙にちなんでオレンジだろう。時計がキーアイテムだ」
「モチーフなら花、星、亀もある」
「モモはどのような恰好をしていたっけ?」
「『モモ』を読まなきゃ」
本楼参加者だけではなく、感門之盟欠席者も加わり交し合うドレスコード談議。最終的にそれぞれがどのような服装にするか、フセられたまま終わった。そして3月18日、感門之盟一日目。モモめぐむ教室の仲間が集った。
各々が教室名に肖って描き出した、たくさんの『モモ』の姿。17週間の稽古で培われた、イキイキとした編集の実りをご覧あれ。

師範代・中村。背伸びしておしゃれしたモモ。ゆるふわパーマ。だぶだぶジャケット&くるぶしまでのスカート。花のコサージュ。オレンジのネイル。学衆のアイデアを一種合成する。

師範・新井。ロックなモモ。チームの傑作ペパーランド教室とのコラボ。ペパーランドパーカーに桃の髪飾り。前髪はこの日の為に、オレンジに染める。

学衆Y。鮮やかなオレンジのワンピースに大きめのジャケットを合わせる。裸足のモモにちなんでサンダル。靴下も教室カラーのオレンジ。

学衆Aとその母。Aのカラフルなユニコーン柄のワンピースは、灰色の男たちから色とりどりな時間を取り戻すイメージと重ねる。Aを編集学校へ導いた母は、星空を纏い、星を眺めるモモを彷彿とさせる。

学衆T。ズバリ灰色の男。ジャケット、ネクタイ、帽子。ハレの日にふさわしく、びしっとかっこよく灰色でキメる。

Zoom参加メンバーも負けていない。学衆Tは愛娘の桃百(もも)ちゃんと共に。これ以上のモモはない。学衆Iは偶然その日にもらったガーベラを背景に、教室カラーのオレンジで華やかさを添える。
(文)中村裕美
(写真)チームさかい洋果子転
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[守]基本コース(51期)
2023年5月8日~8月20日
https://es.isis.ne.jp/course/syu
イシス編集学校 [守]チーム
編集学校の原風景であり稽古の原郷となる[守]。初めてイシス編集学校と出会う学衆と歩みつづける学匠、番匠、師範、ときどき師範代のチーム。鯉は竜になるか。
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2025-11-18
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2025-11-13
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2025-11-11
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