戦国時代1563年にキリスト教布教のため、ポルトガルからインドを経由し長崎にやってきた宣教師ルイス・フロイス。フロイスは日本での布教史を『日本史』として克明に記録し、井上ひさしはフロイスを『わが友フロイス』と題して1983年に評伝小説としました。そして2025年、井上ひさしの最後の個人研修生である劇作家長田育恵が『わが友フロイス』を題材にして、こまつ座完全新作「フロイス -その死、書き残さず-」を書き、井上麻矢(こまつ座代表、ISIS co-mission)が世に送り出す。2025年3月8日から東京公演が開幕し、舞台「フロイス」を観劇したイシス編集学校の師範・師範代による創文をお届けします。
ルイス・フロイスのことは知りませんでしたが、十分に楽しむことができました。
イエズス会から派遣された宣教師として、
1532年にポルトガルのリスボンで生まれ、
舞台は教会内部をイメージしていますが、ほとんど何もない空間であるにも関わらず、それがかえっていろいろな想像力を発揮できる場となっていました。イエズス会から喜望峰を回り、インド洋を超えて、はるばる言葉も通じない日本に来ることがどれだけの困難を伴うことなのか、フロイス自身が語る言葉に表れていましたが、それ以上にキリスト教を宣教しようという使命感に燃えているエネルギーがほとばしっています。
日本に着いたばかりの時には通訳が必要なほどだったにも関わらず、その説法が感動を呼ぶものだったことから、日本にはすでに熱心なキリシタンが沢山いることが暗示されていました。
一時は逃げ惑う場面や戦国時代らしい戦が外では行われている場面も、固定された舞台への出入りだけで、内と外との関係性が暗示され、それはあらゆる考え方の違いのぶつかり合い、心の葛藤の暗示でもあるかのようでした。
特に印象深かった場面は、フロイスに忠誠を誓いながらも、商人として武器を売り、布教のための資金を稼ぐ者とのやり取りの場面でした。宣教師と共にいろいろなものが日本にもたらされてきた歴史の背景と、信仰者として純粋であればあるほど、武器を売って大きく儲け、宣教の手助けをしようと考える者、その恩恵を受けることでフロイスが時の覇者である信長に謁見でき、庇護を受けられるという皮肉と葛藤の場面には非常に考えさせられ、惹きつけられました。
井上ひさし自身が幼き頃、今でいう児童福祉施設に預けられていた時があり、その運営母体がカトリックの修道会で修道士たちの献身的な態度から何人も洗礼を受け、彼自身もその一人でした。結果的には上智大学への入学も神父さんの推薦だったこと、後には棄教していることと合わせ、興味が湧きました。今回の公演は原作とは全く別の新作とのことですので、井上自身の書いた『わが友フロイス』も読んでみようと思います。
こまつ座 第153回公演『フロイス-その死、書き残さず-』
【作】長田育恵
【演出】栗山民也
【出演】風間俊介 川床明日香 釆澤靖起 久保酎吉 増子倭文江 戸次重幸
【東京公演】3月8日(土)〜30日(日)紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
【全国公演】
■兵庫公演:4月5日(土)兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール
■岩手公演:4月12日(土)奥州市文化会館(Zホール)大ホール
■群馬公演:4月16日(水)高崎芸術劇場 スタジオシアター
■宮城公演:4月18日(金)仙台銀行ホール イズミティ21 大ホール
■大阪公演:4月25日(金)26日(土)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
【詳細】https://www.komatsuza.co.jp/program/index.html#505
エディスト編集部
編集的先達:松岡正剛
「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。
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