七福神だよ、迎春多読な招福おみくじ本!(5)

2021/01/08(金)08:00
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 おめでとうございます。本日(1/8)はデヴィッド・ボウイのお誕生日です。本の世界から幸せと出会いを運ぶサッショーこと大音がおみくじ本第五弾をお届けします。


●食い扶持を稼ぐことと遊戯性を大事にすることを両立したい!

 

 五人目は【スタジオ栞】の<五十嵐冓務店>さん。気になるスタジオネームの理由は、お祖父さん譲りの屋号のヨミを「組み合わせる」意味のある「冓」の字で編集。2020年を託した本は『本棚の歴史 The Book on the Bookshelf』ヘンリーペトロスキー[著]池田栄一[訳]/白水社+『ベネッセ古語辞典』井上宗雄・中村幸弘法[編])/Benesseでした。

2021年の抱負は:


 読書を基本単位とした生活を組み立てていきたいです。2020年は引きこもり生活をするかと思いきや、やむなく転居をするというアクシデンタルな年でした。何が訪れても泳いでいけるように準備を整えたいと思っています。
 五十嵐冓務店の請負仕事や佐藤英太個人の活動をWEB上で発信(週イチが理想)して仕事を受注するのが目下の活動です。食い扶持を稼ぐことと遊戯性を大事にすることとを両立できるようにしたいです。

 

 

 ここに幸あれ。ガラガラ・ガンガンガン!

 

 おーや、これは珍しい。「パン吉」のおみくじがでましたよ。

 

『パンとペン─社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』黒岩比佐子/講談社

 


 1709夜で取り上げられました。大逆事件のあとの「冬の時代」に、堺利彦がいかにラディカルな<やつし>っぷりで疾走していったかを追いかけた一冊です。

 

 「ペンを以てパンを求むるは僕等の営業である。今度僕の社で拵へる年始の葉書には、食パンに万年筆を突きさした画をかいて、それを商標の代りにする事にして居る」という堺の檄は「愉快で痛快」な男の覚悟そのもの。明治後半から大正にかけて、行動も結社も翻訳も執筆も本当にスピーディですごいのは、それだけ世界を読もうとする意気に溢れていたのでしょう。

 

 著者の黒岩さんは、まさに「読んで書いた」人。明治・大正・昭和の古書(雑書)収集の本もあるぐらいです。本書執筆が5分の4まできたところで膵臓がんにより入院。抗がん剤治療を続けながら残りを書き上げ、さらに推敲で3分の1を削ったとのこと。その壮絶さが堺利彦と重なります。五十嵐冓務店さんも一歩一食ずつをお大切に♪


…運勢:パン吉(ペン吉かも)

(本書からのお言葉)
道楽は道楽でも「命がけの道楽」だ、と堺は強調しているのだ。命を懸けた以上は一生かけてやり抜く、という覚悟も感じられる。

 

  ☆ 彡   ☆ 彡   ☆ 彡   ☆ 彡   ☆ 彡

  • 大音美弥子

    編集的先達:パティ・スミス 「千夜千冊エディション」の校正から書店での棚づくり、読書会やワークショップまで、本シリーズの川上から川下までを一挙にになう千夜千冊エディション研究家。かつては伝説の書店「松丸本舗」の名物ブックショップエディター。読書の匠として松岡正剛から「冊匠」と呼ばれ、イシス編集学校の読書講座「多読ジム」を牽引する。遊刊エディストでは、ほぼ日刊のブックガイド「読めば、MIYAKO」、お悩み事に本で答える「千悩千冊」など連載中。

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-07-01

発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。