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「子どもにこそ編集を!」
イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、
「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。
子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩みQ&Aまで。
子供たちの遊びを、海よりも広い心で受け止める方法の奮闘記。
バージニア・リー・バートンの絵本『せいめいのれきし』を子どもたちと何度も読んでいる。
恐竜はだいたい2億年前に生きていたこと、人類の祖先が生まれたのはすごく長めに見てだいたい200万年前という話をしていると、長女(8)が、「恐竜の名前、どうしてわかったの。ティラノサウルスとかトリケラトプスとか」と質問してきた。「だって、人間がうまれた時に、もう恐竜は絶滅してたんだよね」。
「この大衝突のあと、地球はさむくなり、恐竜たちは死にたえてしまいました。鳥類に進化したなかまをのぞけば、博物館で化石のすがたでしか、恐竜にであうことはありません。」(中生代 白亜紀のおわり)
人類は生きた恐竜を見ていない。その通りだけど、そもそも恐竜の名前はぜんぶ人間がつけたものだからとサラっと教えると、長女は「えっ」とのけぞるほど驚いた。
何に驚いているのかわからないまま、化石になった恐竜の骨が土の中から見つかった時このするどいツメを持った肉食の恐竜はすごく強そうだから暴君っていう意味を持っている「ティラノサウルス」ってつけたことや、ほとんど骨しか残ってないけど、だいたいこんな姿かなと想像して絵に描かれているということなどを補足した。
長女、そうじゃないと首を振る。「名前って、恐竜がつけたんじゃないの?」
ああ、そういうことだったのか。恐竜の名前はぜんぶ人間がつけたんだよと繰り返す。
「じゃあ、恐竜どうしはなんて呼び合ってたの?」
うーん、それはわからない。
そもそも呼び合っていたのかどうかもわからない。
「でも、困るんじゃない? 名前が無かったら」
ふと気づいて、動物の名前も人間がつけたんだよと付け加えた。例えばゾウやキリンっていう名前も。ゾウは自分がゾウって人間に呼ばれてることは知らないと思う。ゾウのぬいぐるみを指しながら話した。
「ええーっ」。長女は床に倒れこんだ。「じゃあ、ゾウは自分のこととかお互いのことをどう呼んでるの?」
恐竜と同じで、どう呼んでるのかそれは分からない。違う方法で呼んでいるのかもしれないし、呼んでいないのかもしれない。
長女、立ち上がりながら「ゾウが自分にゾウってつけて、ウサギがウサギってつけたんだと思ってた、そうじゃなかったらもともと名前がついていると思ってた。どっちでもないなんてびっくりした」と繰り返す。
あまりに「当たり前」すぎて、伝えようと思ったことがなかったことにヒヤリとした。本棚から『知の編集工学』を出して開いた。
「私たちは、そして、それらは、すでに名前がついている」。
赤ペンでマーキングしてある。
名前をつけること(naming)は、<自由編集状態>の終わりであり、はじまりなのだ。この話をするのはもう少し先だと思うが、遊びと読書が鍵穴を形作りつつあることに気がついた。
○編集かあさん家の本棚
(左)初版『せいめいのれきし』
バージニア・リー・バートン 文・絵
いしいももこ訳
(右)『せいめいのれきし 改訂版』
まなべまこと監修
初版刊行から半世紀たち、新たな科学的知見を加えて本文を改定した版が2015年に出版された。監修は恐竜研究の第一人者・真鍋真氏。もっとも大きな違いは「恐竜」という言葉が入ったことだが、長男(13)は、冥王星が惑星から外れていることに最初に注目した。天王星の直径なども改められている。初版から改訂版の間に探査機ボイジャーが到達し、正確な大きさが分かったのである。
*イシス子どもフィールド・オンライン七夕まつり
<七夕エディッツの会>
7月4日(日)10:30~12:00
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松井 路代
編集的先達:中島敦。2007年生の長男と独自のホームエデュケーション。オペラ好きの夫、小学生の娘と奈良在住の主婦。離では典離、物語講座では冠綴賞というイシスの二冠王。野望は子ども編集学校と小説家デビュー。
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2025-07-03
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2025-07-02
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ビアライム』ともいう。詰まっているのは見立てだけじゃない。キャビアのようなさじょう(果肉のつぶつぶ)もだ。外皮を指でぐっと押すと、にょろにょろと面白いように出てくる。
山椒と見紛うほどの芳香に驚く。スパークリングに浮かべると、まるで宇宙に散った綺羅星のよう。
2025-07-01
発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。