【このエディションフェアがすごい!42】ジュンク堂書店 名古屋栄店

2021/09/24(金)19:00
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丸善名古屋本店、ジュンク堂書店名古屋店に続き、名古屋では8月中旬からジュンク堂書店名古屋栄店でも「千夜千冊エディション」フェアが9月30日(木)まで開催されています。まだ夏の熱気が残る中、イシス編集学校の師範で、松岡正剛『うたかたの国』(工作舎)の編集者でもある米山拓矢さんと共にうかがいました。

 

フェア会場の「文庫・新書」コーナーに最も近いB2の入口


ジュンク堂書店名古屋栄店は名古屋のど真ん中、中区役所向かいの明治安田生命ナゴヤビルの地下1階、2階です。地下鉄栄駅の東改札、または中改札から「森の地下街 南二番街」を通ると、フェアの棚のある地下2階(B2)まで最短距離です。

 

森の地下街南2番街。B2にもB1にも名古屋店の入口はいくつかあり、地下街のダンジョン感を楽しむ散策からの入店も可能。地上からは広小路通り沿いの階段を下って入れます。

 

「昼は栄に買物や観劇に来た際に訪れるお客様が多く、社会問題や思想をテーマにした書籍、時代小説も人気です。最近の売れ筋はなんといっても 斎藤幸平『人新世の資本論』(集英社新書)。そして堤未果『デジタル・ファシズム』(NHK出版新書)、半藤一利・加藤陽子・保阪正康『太平洋戦争への道 1931-1941』(NHK出版新書)でしょうか。夕方以降、お仕事帰りに立ち寄られるお客様はフィクションや、気軽に手に取れるタイプの本を買われることが多いですね」とは文庫・新書担当の藤堂恒平さんです。


ジュンク堂らしい専門書のラインナップに加え、身近な趣味や暮らしの本、コミックの棚も充実しています。B1の手塚治虫作品や関連本、グッズを集めたショップインショップ「手塚治虫書店」も楽しい空間です。

 

『鉄腕アトム』のお供に『理科の教室』、『ブラックジャック』には『情報生命』、『ブッダ』『火の鳥』には『仏教の源流』『文明の奥と底』などいかがでしょうか。

 

同じくB1の「日本思想(現代)」の棚には松岡正剛の著作が揃います。もちろん米山さん編集の『うたかたの国』も『情報の歴史21』の隣にありました。『自然学曼荼羅』『セイゴオ語録シリーズ』など玄人好みの本も発見。

 

 

松岡正剛の手書き原稿を横長の紙に印刷し、巧みな変型ジャバラ折り「手本折」(実用新案登録出願中)で製本した『編集手本』(EDITHON)を手にする米山さん。「(物理的に)最も立ち読みしづらい松岡正剛本」と言われている。

 

「千夜千冊エディションフェア」はB2で開催中です。曼名伽組の小島伸吾組長により『千夜千冊エディション』のポップと地紋、旗でジャックし秘密基地のように仕立て上げられた「文庫・新書」の棚をご覧あれ。

 

 

最新刊『資本主義問題』の週刊誌の中吊り風ポスターにも思わぬ仕掛けが。

 

 

一見、普通のポスターですが・・・

 

 

めくってみると、なんとドン・キホーテに扮したセイゴオが!
このどんでん返しに米山さんのようにどぎまぎした皆さんは、すぐに棚から『物語の函 世界名作選I』を奪取しレジに走り、傑作、快作、超作を堪能してくださいね。

 

・・・気を取り直して、藤堂さんにフェアについてお聞きしました。「8月の開始当初は特に好評でした。よく出ているのは『デザイン知』と『ことば漬』です」とのこと。どちらも表現や情報の発信に関する本となりました。金メダル事件や音楽フェスにまつわる、この夏の愛知県民の声にならない訴えが反映されているのでしょうか。
藤堂さんが気になるエディションは『編集力』と『サブカルズ』。「松岡正剛さんといえば “編集”。一方で、松岡さんはサブカルをどのように語るのだろう?ということにも興味を惹かれます」。

 

 

そして米山さんのイチ推しのエディションは『ことば漬』です。「『うたかたの国』刊行の少し前に完成したエディションです。急いで参考にして取り入れたことが思い出深いですね」。

 

 

『うたかたの国』はこれまでの松岡正剛の著作から詩歌(うた)に関する言説をカットアップ・ミックス・エディットし、本来の意図を浮き彫りにしながらも、新たな調べが立ち上がるように編集された一冊です。

 

『うたかたの国』の出典一覧

 

「編集学校で学ぶと、出題される“お題”が楽しくていつまでも恋しくなる“お題中毒”になることがありますよね。(笑)ある時「お題を与えてもらうばかりではなく、自分で考えた“お題”に回答してみよう」と思って作り始めたのが『うたかたの国』です」。

 

『うたかたの国』は、米山さんにとっての編集稽古でもあったのです。

 

「編集学校では回答に“完璧”を求めず、“仮り留め”で提出しましょう、といいます。

本を作っていると、製本された“本”も仮り留めのものだと気がつきます。時間が経てば文脈に応じて書き直されることも、読者によって別の解釈が加えられることもある。『千夜千冊エディション』もそうですよね。WEBの千夜を集めて、並べ直して、書き加えて・・・。本は常に編集され続けるやわらかいメディアであって、その編集は誰が行ってもいいものなのだと思います。」。

 

『うたかたの国』のように、本は『本から本へ』と、連歌のように新たな意味を加えられ、編集し続けられるものなのでしょう。

 

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  • 石黒好美

    編集的先達:電気グルーヴ。教室名「くちびるディスコ」を体現するラディカルなフリーライター。もうひとつの顔は夢見る社会福祉士。物語講座ではサラエボ事件を起こしたセルビア青年を主人公に仕立て、編伝賞を受賞。