「子どもにこそ編集を!」
イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、
「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。
子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩みQ&Aまで。
子供たちの遊びを、海よりも広い心で受け止める方法の奮闘記。
始まりは台風から
長男(13)が台風にのめり込みはじめたのは8歳ごろ。最初はテレビのデータ放送で情報をとっていて、10歳ごろには気象庁のサイトを毎日チェックするようになっていた。
「この台風はすごい。気圧が**ヘクトパスカルから**ヘクトパスカル、さらに**ヘクトパスカルに急降下した。こんなすごい下がり方
はめったにない。明日はどうなるんだろう」というようなことを、ずっとしゃべり続けていた。
数字に弱く、天気予報と言えば今日雨がふるかどうかしか気にしたことがなかった編集かあさんはピンとこなかった。「どう思う?」と聞かれても、あいまいに答える日が続いた。
ある日、表の作り方を教えてみたらどうだろうと思いついた。
長男は毎日、過去の台風資料、アメダスなどのスコアを見続けている。機は熟した。一緒にパソコンの前に座って、エクセルを立ち上げた。
長男に、サイトやテレビから拾ったデータを読み上げてもらいつつ、入力していった。気圧の変化が一覧できる表が出来あがった。太さや線種を相談しながら枠線をつけて、プリントアウトした。
毎日サイトで見てきた「表」が自分でも作れるんだということを、2018年の台風3号をきっかけに教えることができた。そして表で見ることで、よくわからなかった「すごさ」がわかり、より台風話を聞きやすくなった。
なんでもスコア化する
次に、少しの操作で表をグラフにできるということを教えてみた。2年後、気がつくと、長男はいろいろなものをスコア化しはじめていた。
家庭菜園で収穫した野菜の数。所属していたオンラインフリースクールの掲示板の発言数。好きな音楽動画の再生数の推移。遊刊エディストの累計記事数まで。
情報の種類によって棒グラフや折れ線グラフなどを使い分ける。
野菜の収穫記録のなかでも、月間の合計個数は棒グラフ。その日までの累計を記録したものは折れ線グラフにする。
掲示板の発言数は棒グラフ。作ってみると「収穫がない時期」や「発言がない日」に気づく。なぜだろうと思い返すトリガーになり、気象記録など別のデータとの照合もしやすくなる。
(2019年~2021年)
(2019年~2021年)
意外だったのはオセロに似たゲームの、黒と白の石の数の推移を図示した折れ線グラフを作ったことだった。プレイする様子を動画で撮っておき、小刻みに再生しながら数値を一つずつ入れてきたらしい。黒石の数を示す線は黒色、白石は白色にするだけでなく、地の色をできるだけ近い緑色に調整して「らしさ」も演出していた。
また再生数をグラフ化したときは、手書きで線を足して、伸びの予想につながったのにも驚いた。(アイキャッチ画像)
「変化」のアフォーダンス
学校の授業ではエンピツとモノサシによる線描が必須だ。書字が極端に苦手でなかなか表づくりができなかった。けれど、ツールをPCに変え、気になる現象から、自分で数値をとり、リアルタイムでスコア化していくという方法を一度体験してみると、突然、自在に遊びはじめた。
月別の台風発生件数を表にしたものを、家庭でしている学びの成果物として小学校の先生に渡したことがある。台風というと秋のイメージだが、実は日本に上陸しないものも含めれば一年を通して発生している。年明けに会った時、先生から表を見て興味がわき、気象情報通知アプリに登録してみたと聞いた。そこから会話が弾んだ。
家庭菜園をしている祖父母が訪ねてきたときには、2019年からの収穫グラフを見せて、しばらく会わなかった時期にどんなことをしていたかを一気に話せた。
スコアの「作り手」になってみることで、「読む」のがますますおもしろくなってきたらしい。
コロナウィルス陽性判明者のスコア。日本の数字をみたら、世界各国との比較がしたくなる。岸田内閣の支持率。就任したばかりなのに高くない。「これからどうなるんだろう?」
幼いころは変化が苦手だった。今は変化そのものにアフォーダンスされるようになってきた。
松井 路代
編集的先達:中島敦。2007年生の長男と独自のホームエデュケーション。オペラ好きの夫、小学生の娘と奈良在住の主婦。離では典離、物語講座では冠綴賞というイシスの二冠王。野望は子ども編集学校と小説家デビュー。
【Archive】編集かあさんコレクション「月日星々」2024/10/29更新
「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る、編集かあさんシリーズ。 庭で、街で、部屋で、本棚の前で、 子供たちの遊びを、海よりも広い心で受け止める方法の奮闘記。 2024年10月29日更新 【Arc […]
編集かあさんvol.53 社会の縁側で飛び跳ねる【82感門】DAY2
「子どもにこそ編集を!」 イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。 子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩み […]
編集かあさんvol.52 喧嘩するならアナキズム【82感門】DAY1
「子どもにこそ編集を!」 イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。 子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩み […]
校長に本を贈る 松岡正剛校長に本を贈ったことがある。言い出したのは当時小学校4年生だった長男である。 学校に行けないためにありあまる時間を、遊ぶこと、中でも植物を育てることと、ゲッチョ先生こと盛口満さんの本を読む […]
「子どもにこそ編集を!」 イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。 子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩みQ&Aまで。 […]