2022年4月11日にスタートする<多読ジム>season10・春のトレーニングテーマのラインナップが決まりました。
<1>ブッククエスト(BQ):山本貴光編『世界を読み解く科学本 科学者25人の100冊』
<2>エディション読み :『心とトラウマ』
<3>三冊筋プレス :男と女の3冊
山本貴光編『世界を読み解く科学本 科学者25人の100冊』(河出文庫)
今季のラインナップの一番の目玉は、もちろん。三冊の本からヴァーチャル本棚をつくるトレーニング「ブッククエスト(BQ)」のテーマ「世界を読み解く科学本 科学者25人の100冊」です。テーマ的には理科系ということでseason02・春の「科学道」と通じるものがありますが、着目すべきはこの本の編者である山本貴光さん。
山本さんは編集工学研究所が主催する次世代リーダー育成塾Hyper-Editing Platform[AIDA]のボードメンバーのお一人であり、ISISフェスタにも何度もゲスト出演したことのある、実はイシス編集学校ともとても縁の深い方です。昨年『情報の歴史21』が刊行されましたが、ジョーレキのヘビーユーザーとしても知られています。さらにもう一つ、おまけに言うと、イシスが次の世に贈る「21世紀の女」、カトメグちゃんこと加藤めぐみさんが”貴光ファン”を公言しています。
2021年10月16日に開催された「Hyper-Editing Platform[AIDA]Season2」第1講。
山本貴光ほか、武邑光裕、田中優子、佐藤優、佐倉統、村井純、大澤真幸の7名がボードメンバーを務める(敬称略)。
2018年2月17日に開催されたISISフェスタ「文学問題(F+f)+ものがたり問題」。
山本さんは、文筆家であり、ゲーム作家でもあります。ゲームと言えば、「ブッククエスト(BQ)」というネーミングにツッコミたくなるのは私だけではないでしょう。日本人ならRPGの超傑作「ドラゴンクエスト(DQ)」を想像しないわけにはいきません。まちがいなく山本さんもドラクエは相当やりこんできたはずです。
[AIDA]でのコメントや立ち振る舞いを拝見していると、文理をやすやすと横断する膨大な知のアーカイブをもち、それを持ち出すセンスとスピードがずば抜けています。ドラクエ的に言えば、”HP”も”MP”も非常に高い。それはもしかしたら、どんな学習メディアよりも読書こそが最速の”レベル上げ”であることを熟知しているからなのかもしれません。
しかも山本さんは、ディスカッションの相手が”賢者”であれ”巨人”であれ、決して尻込みすることがありません。優しいやんわりとした口調に”聖剣エクスカリバー”を潜ませて、ときに”勇者”のように果敢に切り込んでいきます。あれあれ、エクスカリバーはFF(ファイナルファンタジー)でしたっけ? ごめんなさい、このへんでドラクエメタファーはもうやめます。
とにもかくにも、ゲームと読書の可能性を独自にずっと追求し続けきた山本貴光とブッククエストほど相性の良いセットは他にありません。いつの日か、「ブッククエスト」というRPGを山本さんに作ってもらいたいものです。
柿瑛子・栗原知代編『耽美小説・ゲイ文学ブックガイド』(白夜書房)
さて、『世界を読み解く科学本 科学者25人の100冊』(河出文庫)は科学の本のブックガイドです。「本を通じてサイエンスを楽しむきっかけ」をつくりたいという思いからこの本は編集されました。
イシス編集学校の皆さんにとっては、ブックガイドといえば「千夜千冊」ですね。また、ブックガイド・イン・ブックガイドとして、千夜千冊の中にも0137夜『耽美小説・ゲイ文学ブックガイド』や1328夜『世界×現在×文学 作家ファイル』、0945夜『百禁書』などのいくつかのブックガイドが収録されています。
『耽美小説・ゲイ文学ブックガイド』なんて、三冊筋プレスの「男と女の3冊」を選書するうえで、いや、「男と女」というより「男と男」と「女と女」ではありますが、とっておきの一冊なのではないでしょうか。校長も千夜千冊でこの本をゼッサンしています。
堀江重郎・佐治晴夫『男性復活! 宇宙の進化と男性滅亡に抗して』(春秋社)
「男と女」でついでに思い出したことを書くと、多読ジムのボードメンバーである小倉加奈子析匠presents「おしゃべり病理医MEdit Lab第二弾」でゲスト出演しているメンズヘルス医学の第一人者・堀江重郎先生の著書『男性復活! 宇宙の進化と男性滅亡に抗して』(春秋社)を思いおこしました(「マンガのスコア」のホリエさんとは当然別人です)。
こちらは『二十世紀の忘れもの―トワイライトの誘惑』(雲母書房)で松岡校長も対談している宇宙物理学者・佐治晴夫さんとの共著です。佐治さんの本は1226夜『宇宙の不思議』(PHP研究所)が千夜千冊されてもいますね。
堀江先生のお話によれば、遺伝子レベルでみると、なんと30万年後には男性は消滅してしまうのだそうです(!!!!!)。そう考えてみると「男と女」というテーマは掘り下げれば、遺伝子レベルでも語れるし、そこまで深掘りしなくても、人間以前の動物のオスメス問題としても語ることができます。そんなふうにして、ブッククエストと三冊筋を接続してワンシーズンを送ることもできるわけです。
「コトバ」「カラダ」「ココロ」の3つのテーマに分かれ、『心とトラウマ』とも通じる「ココロ」のゲストは星野概念。著書にいとうせいこうとの共著『ラブという薬』(リトル・モア)、『ないようである、かもしれない』(ミシマ社)など。
それなら、エディション読みの『心とトラウマ』はどうなんだろうと考える方もいるかもしれません。もちろん、無理に三つのテーマを接続させる必要はありません。
が、実は『世界を読み解く科学本』のChapterⅡが「生命のふしぎ、心の謎」になっています。そうなんです。ブッククエストでもやんわりと心に触れることができる仕立てになっています。
そこで逆に、テーマごとの本がかぶってしまって、いろいろ味見するチャンスがなくなっちゃうんじゃないかと心配する人もいるかもしれませんが、ご安心を。
『世界を読み解く科学本』と『心とトラウマ』のブックセレクトに重複は一切ありません。それどころか、『世界を読み解く科学本』の100冊は、1793夜にいたる全千夜千冊ともほとんどかぶっていません。
調べてみたところ、重複していたのは0244夜『笑うカイチュウ』、1001夜『エレガントな宇宙』、1069夜『利己的な遺伝子』、1079夜『アフォーダンス』の4冊のみでした。これは楽しみではないですか。エディションの『理科の教室』や『宇宙と素粒子』と『世界を読み解く科学本』のブックセレクトを比べてみるのも面白いでしょう。
「男と女の三冊」の選書で悩んだなら最新刊のエディション『日本的文芸』の第4章「少しエロチックにする」を覗いてみるのもオススメです。そうそう、今季の三冊筋はスペシャルお題も準備しています。乞う、ご期待!
Info
◉多読ジム season10・春◉
∈START
2022年4月11日~6月26日
※申込締切日は2022年4月4日(月)
∈MENU
<1>ブッククエスト(BQ):山本貴光編『世界を読み解く科学本 科学者25人の100冊』
<2>エディション読み :『心とトラウマ』
<3>三冊筋プレス :男と女の3冊
∈URL
https://es.isis.ne.jp/gym
∈DESIGN the eye-catching image
穂積晴明
金 宗 代 QUIM JONG DAE
編集的先達:水木しげる
最年少《典離》以来、幻のNARASIA3、近大DONDEN、多読ジム、KADOKAWAエディットタウンと数々のプロジェクトを牽引。先鋭的な編集センスをもつエディスト副編集長。
photo: yukari goto
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