「ごみしゅーしゅーしゃでーす!ごみしゅーしゅーしゃでーす!」
本楼中に大きな声が響き渡る。
教室フライヤーのプレゼン中、福井千裕師範代が、椅子を車に、積み木をごみに見立てて、ゴミ収集車ごっこをして遊ぶ3歳児の声を再現したのだ。微笑ましい光景が浮かんだその直後、こう言った。
「椅子は持ち上げるルールでしょ。そんな風に遊んではだめ」
ショッキングな響きであった。その大人の声がけ以来、男の子は大人の顔色を伺いながら遊ぶようになってしまったという。「正しい」ルールや、コンプライアンスに、いつの間にか子どもも大人も縛られ、監視されて、みずみずしい心は干からびていってしまう。
「わたしが子どもたちに手渡したいのは、こんな世界では、ありません」
小学校卒業と中学校入学のアイダに居る、属性が透明な娘さんの写真を使用。「たまたま映った光源が日の出のようにも見えるので、顔の輪郭を地平に、洞窟壁画を地中に見立て、知の古層っぽさを出しました」
教室名発表があったのは、3月21日(祝)の夜。翌日には、師範代たちに「49[守]の入門者を募集するフライヤーを制作せよ」というお題が出された。その後の数日間、師範代たちは辞書をひき、Photoshopの使い方を学び、おにぎりを握った。イコンを捨て、夜中の冷蔵庫を空にして撮り、たくさんの猫に名前をつけた。景山和浩師範と共に「壊す」→「肖る」→「創る」を繰り返しながら、フライヤー以上に変わっていく師範代たちは、まさに命がけで脱皮するザリガニであった。そのフライヤープレゼンが、伝習座で行われたのである。
今期のフライヤーは、全体的に「暗い」のではないか、という評価を受けた。確かにダークな色使いのフライヤーが多かった。が、これはイシスのなかだけでの傾向ではなく、時代も関係しているのだろう。その「暗さ」に、別の見方を持ち込んだのが福井だ。
プレゼンで福井は、ラスコーやアルミタラの洞窟壁画までさかのぼり、ヒトが暗闇のなかで光を見つけたと、かつては境界線を超えた存在に変身できていたと語った。
「正解」が蔓延る社会で、わたしたちは力を奪われている。それを取り戻すための方法がイシスにはある。
「それは守の型だと私は確信しています」
力強く言い切る福井の声の振動が、本楼の空気をびりびりと震わせた。師範代として、49守に挑む覚悟が全身から溢れていた。洞窟に、わたしたちの想像をはるかにこえる場の力があったように、守の教室にも、たくさんの可能性を生み出す力があるのだ。
あなたは子どもたちにどんな世界を手渡していきたいですか。
編集の兆しを感じに、今こそ編集学校へ。
アニマ臨風教室 寺田悠人師範代、きざし旬然教室 福井千裕師範代、赤いランドセル教室 齋藤彬人師範代
嶋本昌子
編集的先達:ハービー・ハンコック。全身ラテンは伊達じゃない。毎週フラメンコのタブラオで踊っていた情熱のお侠師範。流暢な英語を操るバイリンガルだが、気持ちが昂るとナチュラルに関西弁が出る。丸の内朝大学以来の校長のお髭ファン。
49[守]定常コースがスタートして3日目の昼。 まだ自己紹介も始まっていない脱皮ザリガニ教室(古澤正三師範代)の勧学会に、一人の学衆が登場した。「昨日面白い体験をしたので独り言で書いときます」 その体験とは、皿洗いと […]
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