次世代リーダーの研鑽と共創の場、Hyper-Editing Platform[AIDA]のSeason3が、本日開幕した。「生命と文明のAIDA」・「メディアと市場のAIDA」ときて、Season3は「日本語としるしのAIDA」。
[AIDA]プロデューサーであり編集工学研究所社長の安藤昭子氏は、開幕のフラッグメッセージにて、今期のテーマについてこう語った。「この緊急事態が常態化している世界で、誰も見たことがないものに誰もが出会い続けなければならない世界で、『日本語のしるしのAIDA』というテーマは、何かのどかに聞こえるかもしれない。しかし、実はとてもヒリヒリする喫緊の課題なのです」。
[AIDA]は、自ら道を切り拓くリーダー達が、分野を超えて新たな社会像を構想していく超編集プラットフォームである。受講生のことを、ここでは座衆と呼ぶ。名だたる企業23社から参加した28名の座衆が、壇上のフラッグメッセージに固唾を呑んだ。
本楼にはもちろん、松岡正剛座長と[AIDA]ボードメンバーも打ち揃って、本日の第1講を迎えた。ボードメンバーは、情報工学者の村井純氏、文筆家・ゲーム作家の山本貴光氏、法政大学名誉教授・江戸文化研究者の田中優子氏、メディア美学者の武邑光裕氏、社会学者の大澤真幸氏、作家・元外務相主任分析官の佐藤優氏。
ただし、座衆は座長やボードメンバーから一方的に知識を得るわけではない。座衆それぞれが社会の先端で抱えている課題を持ち寄り、交わし合って、この超編集プラットフォームに相互編集の成果が立ち上がっていくというのが[AIDA]の狙いである。3年前、[AIDA]が Hyper-Corporate University から Hyper-Editing Platform へと名を変えて再始動した理由はここにある。
日本語としるしのAIDA。
松岡座長は、座長講義にて本シーズンのBPTを高速に連打した。「日本語」。文字を持たない縄文1万年のあいだ、日本列島はオラリティの国だった。そして、文字がない時代にも「しるし」はあった。土器の縄文も衣装も「しるし」である。標、記、印、験、徴。すでに表され刻印されているしるしだけでなく、聖なるものを含む何かが顕れてくる兆しのことも、私たちはしるしと呼ぶ。そして、弥生時代に稲や鉄や馬とともにやってきたのが漢字であった。日本人はそこから片仮名と平仮名を派生させ、やがて漢字仮名交じりテキストとという特別なものを作り上げた。
日本語の謎を解き明かすにあたっては、顕と冥とを同時に語る必要があると座長は言う。あらわるるものとかくるるものとの曖昧なアイダ、虚実皮膜の境目にたくさんのシルシが動いている。
日本語としるしのAIDAに迫るための先人は数多いるが、座長が特にと挙げたひとりの名に、本楼がどよめいた。紫式部である。「いづれの御時にか、女御更衣あまたさぶらひたまひけるなかに、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり」。名が明かされず、源氏という氏名(うじな)と、光る君という形容のみにて呼ばれる主人公の『源氏物語』。座長は黒板を使い、『源氏物語』を『源氏=物語』と訂正した。「源氏」は、モノ(霊・物)カタリ、ナラティブ、ストーリーとイコールで結ばれる。
1000年前の才女・紫式部がフィクショナルな虚実皮膜の中でのみあらわし得たことに、日本語としるしのAIDAが潜んでいる。座長の講義は、そんなサジェスチョンで締めくくられた。
第1講のプログラムは、ボードメンバーと座衆全員がそれぞれの立場・関心から「日本語としるしのAIDA」の課題を持ち寄って発言するボード見方セッション、吉村堅樹林頭による『知の編集術』義疏、安藤氏の仕切りのもと、座長とボードメンバーが議論を深めるAIDAセッションと盛りだくさんに続いた。
同じ夜のうちに、間髪入れず「企間所」ラウンジがひらき、講座と講座の間、座衆が「連」と呼ばれるグループに分かれて課題にいそしむプログラムも案内された。
第2講からは「日本語としるしのAIDA」にいよいよ分け入るためのスペシャルゲストが登場する。本シーズンも盛会まちがいなしの Hyper-Editing Platform[AIDA]、エディストでも随時情報をお届けする。
加藤めぐみ
編集的先達:山本貴光。品詞を擬人化した物語でAT大賞、予想通りにぶっちぎり典離。編纂と編集、データとカプタ、ロジカルとアナロジーを自在に綾なすリテラル・アーチスト。イシスが次の世に贈る「21世紀の女」、それがカトメグだ。
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