【合同汁講@本楼】薫陶を受けて遊びを競う―50[守]

2023/02/18(土)22:00
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■遊びの場が次の何かを生み出す

 

「いきいきと生きるには、遊びの場が必要です」

 

1月15日に行われた特別講義「田中優子の編集宣言」 での田中氏の言葉だ。

 

「江戸時代の人々は、いかに遊んでいるか、いかに面白いものをつくっているかを競い合っていた」田中氏がこう語ったのは、ある学衆からの質問がきっかけだった。

 

釣果そうか!教室 学衆N
江戸に倣い、GDPや偏差値に替わるスコアを考えるとしたら?


田中氏は間を置かず応じた。「遊びの能力を測るスコアをつくるとよい。遊びの場が次の何かのきっかけになる」

 

遊びを競う。この薫陶を受けた50[守]はいままさに、遊びに興じている。


■リアル×オンライン 過去最大の合同汁講

2月初めの土曜の午後。総勢38名の学衆がオンラインとリアルで豪徳寺に集合し、8つの教室による合同汁講が開催された。

 

<合同汁講 参加教室>
悠阿弥アメリ教室、厳選タングル教室、ミネルバ・ロードス教室、代々ビオトープ教室、歓察めげない教室、アスレ・ショーコ教室、参画さしかかる教室、とれもろドローン教室

 

リアルでの参加者は本楼に集いオープニングを待った。カメラは2階の学林堂を出発し、展示された各教室のフライヤーを投影しながらゆっくりと階段を降り、井寸房から本楼に足を踏み入れた。

 

本楼に集った学衆と、それを画面の向うから眺めていた学衆の視線は、ここでひとつに束ねられた。

 

悠阿弥アメリ教室の仁禮師範代による本楼案内。


■リアルな空間での編集的交換

本楼の空間を味わった後、学衆たちはチームごとのブレイクアウトルームに分かれていった。

 

代々ビオトープ教室とミネルバ・ロードス教室は、第2回番選ボードレールにエントリーした作品を使ってワークを実施した。

 

<合同ワーク>ミメロギア×マンガのスコア
1)事前に教室を超えたペアの組み合わせを決めておく。
2)ペアになった相手のエントリー作品から1つを選ぶ。
3)選んだ作品から受けたイメージをスコアリングする。

 

相手の作品をどう見たか。受けとったイメージをどう表現するか。[守]の型をつかったエディティングモデルの交換だ。

 

代々ビオトープ教室の学衆Nは、ミネルバ・ロードス教室の学衆Mの作品をこう評価した。

【作者】ミネルバ・ロードス教室 学衆M

【評者】代々ビオトープ教室 学衆N

「4月の偶然・3月の必然」
「8ホアン」

 

スコアの単位を「ホアン」と表現した意図は?

 

【評者】代々ビオトープ教室 学衆N
出会いの偶然と別れの必然について、それが起こる代表的な月を対比させたこの作品に心が動いた。ジブリ映画では風が吹いたことで心の動きを表現する。それを「ホアン」というスコアで表した。

 

ミネルバ・ロードス教室学衆Mは返杯するように、学衆Nの作品をスコアリングして応じた。

 

【作者】代々ビオトープ教室 学衆N

【評者】ミネルバ・ロードス教室 学衆M
「屋台の焼き芋・ちゃぶ台の寄せ鍋」
「7ぽか」
読んだ瞬間、寒い中で、焼き芋とちゃぶ台を中心に熱が広がっていく情景が思い浮かんで、暖かい気持ちになりました。その暖かさの単位が「ぽか」です。 

 

相手の作品を事前に鑑賞し、この日初めて出会ってスコアを贈る。それぞれの教室で稽古を重ね、同じ型を手にしてきたからこそ作品を介して交わし合うことができる。

 

【作者】ミネルバ・ロードス教室 学衆M

【評者】代々ビオトープ教室 学衆S
「踊れサッカー・進め駅伝」
「9惹句(じゃっく)」

1枚のポスターがアタマに浮かびました。踊るサッカー選手の「足さばき」、駅伝走者の「足運び」の写真に、”踊れサッカー・進め駅伝”というキャッチコピーが書かれている。

 

作品のイメージは読み手によって拡げられていく。

 

【作者】ミネルバ・ロードス教室 学衆K

【評者】代々ビオトープ教室 学衆U 
「壮麗のモーツァルト・荘厳のベートーベン」
「8ワァ」

自分も持っていたイメージを言葉にしてくれたように感じた。こんなふうに表現するんだと驚いた。 

 

教室をクロスして、表現の方法も交換されていった。

 

【作者】代々ビオトープ教室 学衆U
【評者】ミネルバ・ロードス教室 学衆K

「糖尿病焼き芋・高血圧寄せ鍋」
「10/10ヘルスリテラシー」


【作者】代々ビオトープ教室 学衆S
【評者】ミネルバ・ロードス教室 学衆M

「彗星のモーツァルト・恒星のベートーベン」
「7ワープ」


【作者】代々ビオトープ教室 学衆K
【評者】ミネルバ・ロードス教室 学衆K

「おじさんの焼き芋・おふくろの寄せ鍋」
「8ほく」


【作者】ミネルバ・ロードス教室 学衆K
【評者】代々ビオトープ教室 学衆K

「頬よせて焼き芋・肩ならべて寄せ鍋」
「9アツアツ」


【作者】ミネルバ・ロードス教室 学衆N
【評者】代々ビオトープ教室 学衆D

「井戸水の江戸・水道水の東京」
「9ビビ」


【作者】代々ビオトープ教室 学衆D
【評者】ミネルバ・ロードス教室 学衆N

「才能を開花させるサロン・センスに磨きをかけるカフェ」
「10くんくん」 


【作者】ミネルバ・ロードス教室 学衆K
【評者】代々ビオトープ教室 学衆T

「香水むせかえるサロン・煙草たちこめるカフェ」
「9こほこほ」


【作者】代々ビオトープ教室 学衆T
【評者】ミネルバ・ロードス教室 学衆K

「参勤しぶしぶ江戸・出張ウキウキ東京」
「8スタ」


【作者】代々ビオトープ教室 学衆S
【評者】ミネルバ・ロードス教室 学衆K

「蛙飛び込む江戸・鴉飛び立つ東京」
「高高(こうこう)点」


【作者】ミネルバ・ロードス教室 学衆K
【評者】代々ビオトープ教室 学衆S
「マダムのサロン・マスターのカフェ」
「8フフン」


【作者】代々ビオトープ教室 学衆S
【評者】ミネルバ・ロードス教室 学衆S

「木枯らしに吹かれた焼き芋・吹雪に吹かれ寄せ鍋」
「8.5しばれた」


【作者】ミネルバ・ロードス教室 学衆S
【評者】代々ビオトープ教室 学衆D

「どんどん増える猫・ますます減る新聞」
「9ぐるぐる」

 

生み出した作品が、自分とは違う誰かの目によって拡張していくことを、50[守]の稽古を通過してきた私たちは知っている。放たれた情報は、また別の情報と重なって、新しい自由を獲得していく。


■集い、遊び、創る

遊びについて、もうひとつ。田中優子氏の特別講義では、こんな質問も飛び出していた。

 

みちのく吉里吉里教室 学衆S
江戸時代の人たちは自由を求めてアバターを複数作り出していたとのことだが、現代もSNSなどで複数のアカウントを持ち、別の世界を生きることができる。江戸と現代では何が違っているのか。

 

田中氏は「簡単です」と切り出した。

 

江戸の人はただ消費しているだけではない。何かを創るために集まっている。

 

集い、遊び、創る。

 

50[守]の遊びはいままさに佳境だ。最後のお題となる【038番:編集カラオケ八段錦】が出題され、あちらこちらで自慢の歌が響いている。聞き慣れた曲も、八段錦をバックにして分け入れば、いままで見えていなかったメッセージが浮かびあがってくるはずだ。その意味に名前をつけてもいいし、独自のスコアをつけてもいい。

 

遊び続ける50[守]に、「遊びの能力を測るスコア」が新たに生まれようとしている。ここには、いきいきと生きる人たちがいる。

 

◆51[守]申し込み受付中
 [守]基本コース(51期)
 2023年5月8日~8月20日
 https://es.isis.ne.jp/course/syu

 

◆50[破]申し込み受付中
 ※2023年2月28日(火)18:00まで、早得!
 [破]応用コース(50期)
 2023年4月24日~8月13日
 https://es.isis.ne.jp/course/ha

  • 阿部幸織

    編集的先達:細馬宏通。会社ではちゃんとしすぎと評される労働組合のリーダー。ネットワークを活かし組織のためのエディットツアー も師範として初開催。一方、小学校のころから漫画執筆に没頭し、今でもコマのカケアミを眺めたり、感門のメッセージでは鈴を鳴らしてみたり、不思議な一面もある。