気まぐれ猫を惹きつけろ! 遊刊エディスト ライティングのコツ

2023/03/17(金)17:00
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遊刊エディストが変わろうとしている。創刊から4年たったいまでも、イシス編集学校にはまだスクープされていない「事件」がある。この現場に潜入し、記事として届けたい。弥生某日、エディスト編集部・上杉公志の声かけにより、その願いに共鳴する6名の腕利き師範代が集結した。この記事は、キックオフミーティングで行われた特別レクチャーの記録である。


 

ライティングの武器は、自信の無さだった!

 

SNSが賑わって、安易な文章でライターや作家気分を味わうことができるようになった。エモい画像にハッシュタグをつけてUPすれば、バズることだって簡単だ。しかし、読みごたえのある文章にはなかなか出会わない。イシス編集学校では、イベントのたびに、百戦錬磨のライターが疾風のごときスピードで遊刊エディストに記事をUPしていく。そのスピードと文章の質の高さは、創文の匠の揃うイシスの中でも格別だ。

 

イシスのJUST記者は、文章を読ませる何かを持っている。大きな期待を胸に、エディストライター梅澤のJUSTライターzoom講座に、新人ライターの一人として参加した。

 

読み手はいつだって気まぐれな猫のようなものだ。好奇心旺盛な猫の気を引くために、魅惑的なワード、センテンスを掲げておかなければならない。エディストの記事は、言葉が練り上げられている。パッと記事をみた瞬間に、読み手はオヤっと注意のカーソルを向けることになる。梅澤が公開したライティングのとっておきのコツは「自信のなさ」だった。「誰もわたしに興味がないよね」「文章に自信がない」という不足への自覚が、では、どうしよう。どうしたら読んでくれるだろうと、言葉を選び、文章の技を磨くことにつながるからだ。

 

この日、伝授されたライティングのコツは3つある。

 

1、甘えを捨てよ、読者を決めよ

読み手を誰に想定するのか。
いつもの仲間にだけ、わかるように語りかけるのではなく、イシスをまったく知らないけれど、ちょっと興味を持ってくれそうな人を仮想読者にして書く。梅澤は、イシス未体験の大学時代からの友だち・さえちゃんが読んだらどう感じるか、楽しんでもらえるか?を考えているという。遊刊エディストはイシス編集学校のメディアではあるが、伝わるだろうという甘えを捨てることが第一歩だ。

 

2、<地>ソトを見よ

ソトを見るとは、社会と繋いで書くと言うことだ。どんな状況の中で何が起こっているのか。置かれた環境によって、物事は黒にも白にも変わる。イシス編集学校の基本のコース[守]には、有名なお題がある。

お題001番「コップは何に使える?」というものだ。コップは食器だが、置かれた場所によって、楽器にも植物を育てる容器にもなる。ライティングだって同じことだ。対象を際立たせるために、背景である社会と繋ぐことを梅澤は強調した。

 

3、<図>ナカを掘れ

そして最後、三つ目のコツは、「取材をして、ひと掘りして書く」事。イベントの出来事をそのまま書いたら、ただ議事録になってしまう。イシス編集学校の全ての場は一座建立。亭主の心尽くしが客の心を満たす。その場にいる記者だからこそ書けることを深掘りしていく。すれ違いざまのちょっとしたおしゃべりから、文章が広がることだってある。

 

「基本的に知文術で記事を書いています」梅澤は言う。
イシス編集学校には、読むこと、書くことの格別が詰まっている。それを学校の中だけに留めてしまうのは、もったいない。遊刊エディストをチラリとでも見た人の、そっぽを向いたカーソルをぐいっと引き寄せるようにJUSTライターは文章を練り上げる。

  • 北條玲子

    編集的先達:池澤祐子師範。没頭こそが生きがい。没入こそが本懐。書道、ヨガを経て、タンゴを愛する情熱の師範。柔らかくて動じない受容力の編集ファンタジスタでもある。レコードプレイヤーを購入し、SP盤沼にダイブ中。

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コメント

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山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025