かつて「大人マンガ」というジャンルがあった(詳しくは「マンガのスコア 園山俊二」参照)。この周辺には、ファインアートと踵を接する作家たちが数多く存在する。タイガー立石もその一人。1982年、工作舎から刊行された『虎の巻』は、まさしくオトナのためのマンガの最極北。いいお酒といっしょにちびちび味わいたい。
数寄のない人生などつまらない。その対象が何であれ、数寄を愛でる、語るという行為は、周囲を巻き込んでいく――。
開講直後の52期[守]師範が、「数寄を好きに語る」エッセイ。第2弾は、総合診療医でもある遠藤健史師範が語る。遠藤師範が日々、頭の先から爪の先まで探る中で、注目しているものとは。
人体の多くは膜でできている。まず皮膚が膜、生命の境。そして、内部の筋・骨・内臓を包むのも膜である。
左手で、右腕をさすると、皮下に「ずるずる」を感じる。この「ずるずる」は膜のズレ感、昔の人は膠(にかわ)と呼び、触っていくと、どこまでも繋がっている。互いをゆるく滑らせ、中に血管・神経のメッセージを通す。「膜学」は今、医学会で注目されている。
柔らかく繋がるといえば、子どもだ。皮膚がゆるんで溶け込みやすく、大人よりも接触を好む。
▲接触大好き、押しくらまんじゅうの子どもたち
子どもどうしのアイダには、風、光、体温だけ? いやいや見えないだろうか、ヒトやモノから伸びた膜が。著者はキッズサッカーコーチをしている。そこで見るのは、ボールが飛ぶと一斉に追い、ゴールを見るとみなでシュートする子ども達の姿。それはもう、我も忘れて次々と…膜で繋がり動くよう。
▲シュート:全身柔らかく、勢いよく次々と
この繋がりは、パスのときに見えてくる。パスと同時に受け手が走る、阿吽の呼吸・碎啄同時がサッカーの醍醐味。その時、選手はパスコースに、ピンと張った繋がりを見る。観客も、強い綱引きを感じ、そして歓声をあげる。「出し手が偉い」、「いや受け手こそ、うまく引き出した」と主客転倒、主客合一。
繋がりを感じながら子どもたち全体を捉えると、アメーバに見えてくる。「ずるずる」と動いて、ふいにピョンと足を出すアメーバに似て、全体で連動し、時にダッシュやパスで飛び出していく。この飛び出しに活き活きが弾ける。
この元気なアメーバは外へと広がり、非接触性の大人までをも巻き込んでいく。包まれた観客は、肩を寄せ合い試合に釘付け。気づけばコーチも引っ張られ、走ってる。そうか「私が指導しているんじゃない、子どもたちが導いているんだ」とここでも主客転倒、主客合一。
▲コーチ(筆者)と選手が、見えない膜で引き合っている
子どもの成長を引き出すコーチングでは、ぜひこの膜を掴み、たぐり寄せたい。見える生体の「ずるずる」から、キッズサッカーの見えざるアメーバまで、膜学はどんどん広がっていく。
文・写真・アイキャッチイラスト/遠藤健史(52[守]師範)
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