「子どもにこそ編集を!」
イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、
「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。
子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩みQ&Aまで。
子供たちの遊びを、海よりも広い心で受け止める方法の奮闘記。
栗をとる
秋の実りで一番最初にやってくるのは栗だ。
9月の終わり、長男(高1)と長女(小4)と一緒に、義父にトラックに載せてもらって山に向かう。
木から落ちるまで待っていると、虫に食われていることが少なくない。裂け目が入っていれば熟している印なので、目視で探して、高枝切ばさみを使って落としていく。
「落とすときは上見たらあかんよ。もし目に当たったら失明するから」という義父の注意に、慌てて下を向く。
イガが緑でも裂け目が入っていたら食べられる
カサッと音を立てて落ちたイガはすぐに落葉やイガ殻に紛れてしまう。目を離さないように気をつけながら近づき、ハサミをつかって拾いあげる。ちょっとでも油断すると手を刺してしまう。
熟したものが見当たらなくなったら、次の木へ。
少し早く熟した木らしく、たくさんの栗が落ちている。
「今年は豊作やね」
いつもは落ちてしばらくたった栗はイノシシが食べてしまうが、食べきれないほど実ったらしい。
栗の木は、もともと数本だったが、十数年で何本も増えた。このあたりにはリスもいる。リスが埋めて掘り出し忘れた実が発芽したのだろうという。
「植えたわけじゃないから、藪の中など拾いにくいところにも生えてしまった」と義父は笑った。
爆弾処理班になる
栗は去年の三倍ほども獲れた。次にイガから外す仕事が待っている。
トラックの荷台に広げる。2丁のハサミを使って切り開き、実を出していく。
「わあ、めっちゃ危険! 爆弾処理班みたい!」
アニメ大好きな長女は、なんでも遊びにしてしまう。
ハサミを二本使ってイガを切り開いていく
長男は、ハサミを使う方法は合わなかったようで、ゴム長靴で踏んで取り出す方法に切り替えた。
ツヤツヤとした大きな一粒が入っていることも、小さな粒が2、3個飛び出してくることもある。
料理する立場では、大きな粒のほうがうれしい。小さな粒は包丁で皮をむくのもむずかしい。
「これ、すごくいい形!」
縄文時代の人々も栗を採集していたらしい。
「ハサミもゴム長靴も包丁もなかった頃、どうやって食べていたんだろうね」と話す。
芋を掘る
栗の終わりごろ、サツマイモが太ってくる。
サツマイモを掘る時の必須道具がスコップである。
まず、一面を覆っている葉とつるを手でざっとよけて、根元をあらわにする。根元から少し離れたところにスコップを構え垂直におろす。できるだけ下まで差しこんだら、柄を倒す。
こうして、芋の周りの土をほぐしてから、根元を持って引っ張る。
「いっぱい出てきた!」
大小の芋が、まさに「芋づる式」に出てくる。
根元から少し離れたところにスコップを構える
柄を倒し、持ち上げ、土をほぐす
「芋づる式」に出てくる
スコップを差し込むところが芋に近すぎたら芋が切れてしまう。これを「クワ切れ」という。遠いと土が十分にほぐれず、一部の芋がちぎれてしまう。
土の中の位置を想像して、絶妙の場所にスコップを差しこむのが芋ほりの醍醐味だ。だからおもしろいと長男がいう。
芋と一緒に、昔話の「舌切り雀」に出てくる大きなつづらに入ってそうなゲジゲジやナメクジ、ムカデやヤスデの仲間、名前のわからない虫たちが飛び出してくる。
「うわあ!」と長女が飛びのく。
ナメクジがゴロゴロ
落花生を引く
サツマイモを掘った半月後、落花生が熟してきた。
落花生の収穫のしかたは、土のコンディションでずいぶん変わる。今年は土がほどよく乾いていたので、茎をそっと引っ張ると、ほとんどの実がついてきた。
昨年は湿っていたため、引っ張ってもついてこず、土を掘り返して、取り残しがないか一生懸命探したのだった。
掘りたての落花生というのは、それぐらいおいしい。傷みやすいためか、スーパーマーケットではほとんど流通していない。
掘るのは楽だったが、株から実を外すのと洗うのが大変だった。
実をいれたバケツに勢いよく水をそそぎ、ぐるぐる回す。土が沈殿したら、別のバケツに実を取り出し、また水をそそぐ。この作業を透明に近くなるまで繰り返す。
洗った後、ザルにあげて乾かしながら、虫食いや小さすぎる実を選別する。
気候のせいだろうか、虫食いが昨年よりも多かった。
「あー、これもだ! 残念!」
ゆっくりやっていたら終わらない。スキャンするように見て、どんどん捨てていく。
ゆっくり引くと、たくさんの豆がついてきた
隠されたものを開ける楽しみ
秋の山や畑は実りを隠している。収穫は「宝さがし」に似ている。
「いないいない」している芋や実を「ばあ」とあらわにすると、ゾワゾワする虫たちや動物の痕跡にも出会ったりする。小さなモンスターに会う機会は、現代社会ではもはや貴重だ。
栗は、栗ご飯にする。芋は、食べきれないほどあるので、蒸したり揚げたり、いろいろな調理法を試す。落花生は4%の塩水で、小一時間ゆでる。収穫後、できるだけ早くゆでるのがポイントだ。
食べるための手仕事は、フィルター、ダンドリダントツ、メトリック、手でする編集稽古のようでもある。年に1,2度しか訪れない機会だから、子どもが子どものうちは、できるだけ巻き込みたいと思っている。
洗いあがった落花生
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松井 路代
編集的先達:中島敦。2007年生の長男と独自のホームエデュケーション。オペラ好きの夫、小学生の娘と奈良在住の主婦。離では典離、物語講座では冠綴賞というイシスの二冠王。野望は子ども編集学校と小説家デビュー。
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