山根尚子師範インタビューの後編です。前編からお読みください。タイトルの「緩性」とは、師範初登板の際、松岡校長から贈られた二文字。
44[守]師範・山根尚子さんのインタビュー後編。
ヨガと編集稽古の共通項とは、そして彼女に起きた変化とは?
■編集学校に入って、ヨガはツールになった
――編集学校に入ってから、ヨガクラスで語る言葉は変わりました?
変わりました、変わりました! 「ヨガを方法として使ってください」って言うようになったのが一番の変化だと思います。
――ほう! ヨガはツ―ル?
ポーズができるようになることが目的じゃないですよって、言ってます。ヨガをして健やかになった身体で、いっぱい旅行に行きたいとか、自信をもちたいとか、そういう目的のために、ヨガを使ってもらいたい。そういうふうにお伝えしていますね。
こういう気持ちになりたいからこのポーズする、とか、自分なりの「ヨガ辞典」を作ってもらいたい。そんな気持ちになりました。
――松岡校長の言う「単語の目録・イメージの辞書・ルールの群れ」をヨガでも作るっていうことですよね。
そうですね。吉村林頭もよくおっしゃってるけど、誰だって、人や場をイキイキさせたいじゃないですか。私にとってはそのツールがヨガで、編集。そんなふうに並列で考えられるようになりましたね。
――まさに「アタマ∞カラダ編集中」ですね。
▲師範代時代のシグはキラッキラ。
■師範だって揺れるんです
――師範代として[守][破]を終えたあとは、[守]師範にロールを変えて、編集稽古に関わっておられますよね。師範としてのおもしろさはなんでしょう?
いま師範として3期目なんですけど、発見だらけですね。教室は師範代と学衆さんがが作りあげるものなので、師範は見守るのが基本です。でもね〜、師範もね〜、揺れるんですよ(笑) 私だったらこうするのに、って反射的に思うこともそりゃあります。でも、みんな、やり方が違って当然ですよね。
学衆さんがイキイキとお稽古しているのを見ると、「そうか、こういうやり方もあるのか!!」と、自分の視野がどんどん広がります。そういう体験があるから、安易に「こうしたほうがいい」とか言えないです。私には作れない教室を、師範代が目の前で作っている。そこに立ち会うのは、とっても幸せですね。
――「みんな違ってみんないい」をいちばん体感するのが、師範かもしれませんね。初めて師範代するときって、みんな不安だと思うんですが、心がけたほうがいいことってあります?
いったんね、自分がやりたいようにやりきったらいいと思うんです。そうしないと、自分の持ち味もでてこないですし。それでうまく行かなかったら、そのとき考えたらいい。編集学校は、思いっきり挑戦させてもらえる環境と、失敗したとしても手を差し伸べてくれる体制が万全ですから。私も師範として、全力でサポートしますし。
今期の私のテーマは、転ばぬ先の杖は出さないように。転んでからいっしょに考えよう、です(笑)
■アフォーダンスされ続ける喜び
――編集学校って、やっぱり成長しあうコミュニティですよね。稽古のうえでは師範代が学衆を導くけれど、学衆がいてこそ師範代になっていく。互いの力を引き出すような仕組みを魅力に感じます。
それはありますよね。変な話かもしれませんが、私、編集学校にいると「あなたがいてくれてありがとう」って思うことばっかりですよ。師範ロールは3期目ですが、いつも「違う私」が出てきます。学衆・師範代時代には考えられなかったドSモードとか(笑)
そういうのは、みなさんに引き出してもらうんですよね。「こんな言葉が私から出てくるなんて!」って、自分でも驚きます。
――自分でも知らなかった「たくさんの私」があるんですよね!
そうそう。師範代したことある人はわかると思うんですが、指南を見返して「私、こんなこと言ったっけ?!」って驚くことありますよね。「この人に、なんとしても伝えたい!」って思うと、今までとはまったく違う、新しい言葉がおりてくる。そのとき泣きそうになりますね。あなたがいるから、私の言葉が生きるの、って。
目の前の人にアフォーダンスされ続けることで、私がどんどん変わっていく。編集学校では、その楽しさのトリコです。
▲自分のヨガポーズがISISマークになるという、想定外の編集も受け入れて。
イシス編集学校での歩み
山根尚子さん
大阪・高槻出身。山本ヨガ研究所にてヨガ・インストラクターをされるかたわら、ご友人の藤田小百合師範のお声がけを機に、2015年10月 イシス編集学校入門。以来、一期もあけることなく、6年間を駆け抜ける。[守]師範として信頼も篤く、驚異の5期連続登板。12もの教室を守り育てる。
36[守]毎日フィギュール教室 山田小萩師範代/阪本裕一師範
36[破]ホットワイナリー教室 岡本悟師範代/前原章秀師範
26[花]わかくさ道場 三津田知子師範
39[守]千里チャクラ教室 師範代 猿子修司師範
39[破]千里チャクラ教室 師範代 岩野範昭師範
42[守]チ―ムテ・ムルマ 師範 根本真奈未師範代・三津田恵子師範代
43[守]チ―ムBこりじょん 師範 菅野祥子師範代・佐藤悦子師範代
44[守]チ―ムトリコナ 師範 華岡晃生師範代・中山有加里師範代
45[守]チーム・モーデル 師範 佐藤玲子師範代・川島司師範代・古野伸治師範代
46[守]チーム☆彡レッЁノウ師範 関根まなか師範代・角山祥道師範代・大塚宏師範代
2021年4月に癌がみつかり、35花錬成師範を一旦引き受けるも治療のため辞退。2023年1月3日 逝去(享年47歳)
山根さん、「会えてありがとう」はこちらのセリフです。
ほんとうにほんとうに、ありがとうございました。
梅澤奈央
編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
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