イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。
瀧澤有希子さんは常に「忙しさ」と共にある。でも、そのためにやってみたいことを諦めたくはない。そう思ってイシス編集学校の門を叩いたが、かといって忙しさが減るわけじゃない。稽古と多忙な日々。その折り合いを付けながら、瀧澤さんは今日も編集稽古にのぞむ。
イシス受講生がその先の編集的日常を語るシリーズ、「ISIS wave」の第25回は、瀧澤さんの「時間編集」をめぐるエッセイです。
■■「破」で身につけた時間編集
伝えたいことは言葉を尽くさないと伝わらない、と思い始めたのが、20代初めの頃。それから「言葉」というものが頭の片隅にいつもあった、ような気がする。回りくどくなったり、早口になったり、概念的な言葉を使いすぎたり、尽くそうとすればするほど伝わらないことも結構あった。言葉だけではない何か。見え方、捉え方、受け取り方、そうしたものも、もっと工夫しないと通さないよ、と行く手を阻む。
ISISの編集術は伝え方のあれこれが整然と並んでいるようなわかりやすさがあった。突破して、今、自分の文章に使えているかと言えば、そうではなく、自分からまま出てくる言葉が、どの編集術を使ったらより伝わりやすくなるのか、使いこなすには、まだまだ道は長そう。
そうはいっても、[守]と[破]を歩いてきて、得たものはたくさんある。思いつくだけでも、時間の捻出方法、手放し、書き直し。
稽古は、いつも時間が足りなかった。十分時間をかけたと納得して出せたものは、殆どないと思う。書籍、お題、他の学衆さんの回答、指南。さざめきながら、止むことなく寄せてくる大小の文章の波に圧倒された。
携わっている貿易の仕事は、締め切りが多い。出荷方法も海上、航空、国際宅配便、出張者託送とその都度違う。それが何件か重なることもある。日程の調整、商品調達の社内調整、売上げの記録、採算の確認、支払・入金の確認…それらが平行して進む。オンラインショップの管理など細々とした対応が必要なものもある。
残業しない工夫が始まり、朝の始業時、Outlookに一日の予定を全部入れることにした。それを守り、予定内にできなかったものは、緊急でなければ翌日に持ち越す。ただそれだけのことだったけれど、手をつけたことをその日の内にやり終えようとして、平行している他の業務が遅れた結果の残業、という流れが格段に減った。1日が全体的にはかどり、気持ちも軽くなった。
かつては、一度書いたものを手直しすることには強い抵抗があった。[守]の時は、そのままの姿勢でどうにか卒門したものの、それではISISの門を叩いた目的が果たせない。[守]の頃から飛び交っていた「仮留め上等」の言葉に励まされ、[破]では、「カット」と指南が入れば、カット、「書き直し」と言われれば、書き直しも直ぐに取りかかった。全ては仮留め、そう思えるようになったことは、ISIS以外の日常にも軽やかさをもたらしてくれていると思う。
今は、編集の海の中で何の目印もなく漂っているような心境だけれど、傍でちゃぷちゃぷと控えめに存在を示してくれているお題たちが、波を立て、今ここで使って、と名乗りを上げてくれるようになる日を楽しみに、仮留めを投げ続けていきたいと思う。
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
書かれた言葉の裏側に潜むもの――青井隼人のISIS wave #48
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。 青井隼人さんは、イシス編集学校の基本コース[守]、応用コース[破]の師範代を経て、5月12日開講の55期[守]では師範 […]
世界には境界がある。「こちら」と「向こう」を分けている境界線だ。 向こう側を覗いてみたい、知りたいという抑えきれない好奇心と編集という方法が2つの世界を繋ぐための“橋”を生み出す。どんな世界が広がっているのだろうか、 […]
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。 AI時代に、イシス編集学校の「学び」はどう生かされるのか。情報の編集にはどのような価値があるのか。こんな […]
福地恵理さんはウルフル弘法教室師範代として、54[守]を走り抜けたばかりだ。そして今、福地さんの胸に去来したものとは何か。 イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。 イシス修 […]
元・師範代の母が中学生の息子の編集稽古にじっと耳を澄ませてみた #10――「ゆらゆら」
[守]の教室から聞こえてくる「声」がある。家庭の中には稽古から漏れ出してくる「音」がある。微かな声と音に耳を澄ませるのは、昨年秋に開講したイシス編集学校の基本コース[守]に、10代の息子を送り込んだ「元師範代の […]