『性別が、ない!』新井祥
LGBTQなどという言葉が世間を席巻するはるか以前、このマンガによって蒙を啓かれた人も多いのでは?第一巻が刊行されたのが2005年のことで、この種のテーマを扱った作品としてはかなり早かった。基本的に権利主張などのトーンはほぼなく、セクシャルマイノリティーの日常を面白おかしく綴っている。それでいて深く考えさせられる名著。
2024年8月12日、イシス編集学校校長の松岡正剛が逝去した。エディスト編集部では、直後に約1カ月にわたる追悼コラム連載を実施。編集学校内外から多数寄せられた松岡校長の面影は、1年経ってもなお鮮明だ。まるでその存在が読むたびに【REVIVAL/再生】するかのようだ。読者の皆様にさらなる編集の契機としていただけるよう、36のコラム+蔵出し写真&映像をふくめ、8日にわたって公開する。
◇◇◇
松岡正剛revivalシリーズのラストは「本とレンズが見ている」と題して、2023年冬から初夏にかけて、レンズを通して捉えた〈松岡正剛の書斎〉を構成するごくわずかな一部分に絞ってお届けします。
高速マーキング
1827夜で千夜千冊された『性のペルソナ』カミール・パーリア(河出書房新社)をぺんてるの赤いサインペンでマーキングしながら読書している視線を背後から捉える。読書スピードが速く、マーキングにレンズの焦点を合わせるのに必死だった。この時期は千夜千冊エディション『性の境界』のため、ジェンダーやLGBTQ+関連の書籍が至るところに山積みになっていた。
編集を着替える
本棚にはいつも季節に応じた何着かのアウターやシャツなどがかけられている。一度だけ執筆中に突然着替えをしていたことがあった。編集チャンネルを変えるために本当に着替えをしているんだ、と小さな宝物を見つけた気持ちになった。
引き出しのライター
初めて見た時にその多さにギョッとして思わずシャッターを切った一枚。たくさんの使い捨てライターが眠っている引き出し。愛用のタバコはメビウス1ミリ。
古いノオト
古いノートや手帳が大切に保管されている一角がある。貴重な古書のような佇まいで容易に手を触れることはできない。せめて背表紙だけでもと写真に収めた。
光が差し込む窓
いつもは日が沈んでから夜の時間帯での撮影がほとんどであったが、この日は所用の兼ね合いで珍しく日中の撮影だった。自然光が差し込む書斎での撮影は後にも先にもこの時一度きりだけだったと思う。やわらかい自然光の中で静かにワープロに向かう姿に神々しさを感じた。
先日刊行された松岡校長の自伝『世界のほうがおもしろすぎたーゴースト・イン・ザ・ブックス』(晶文社)の[第7章 歴史の網目のなかで千夜千冊を紡ぐ]で「顕読」と「潜読」について書かれていた。顕読とは「そこに顕れているものを読む方法」で、潜読とは「そこに潜んでいるものを読む方法」だという。当記事をまとめている間にふと、撮影とは「そこに顕れているものを読もうとする行為」であり、写真を見るということは「そこに潜んでいるものを読もうとする行為」なのではないかと思った。
なぜならば、5枚目の写真を撮影しているときは自然光の中の美しさに目を奪われるばかりであったが、この時執筆していた千夜千冊が『マザー・ネイチャー』(1825夜)であることに今更ながらに気づいたからである。ちょうど「母なるもの」「失われたマザー」あたりの段落であったと思う。だからといって『マザー・ネイチャー』が神々しさを引き出したとは断言できない。あの時の手元には『マザー・ネイチャー』があったというだけのことである。それだけのことだが、そのことに気づく前と後では、あの時の光景が異なる意味合いを帯びてきて、見えていなかった新しい印象に出会えたことに驚いた。潜読という方法に光を当てれば、いつでも松岡校長に出会い直せるのだ。
協力:松岡正剛事務所
松岡正剛revival
08 本とレンズが見ている
後藤由加里
編集的先達:石内都
NARASIA、DONDENといったプロジェクト、イシスでは師範に感門司会と多岐に渡って活躍する編集プレイヤー。フレディー・マーキュリーを愛し、編集学校のグレタ・ガルボを目指す。倶楽部撮家として、ISIS編集学校Instagram(@isis_editschool)更新中!
熊問題に、高市内閣発足。米国では保守系団体代表が銃撃された。 イシスの秋は、九天玄氣組 『九』、優子学長の『不確かな時代の「編集稽古」入門』刊行が相次いだ。11月にはイシス初の本の祭典「別典祭」が開催され、2日間大賑 […]
エディスト・クロニクル2025 #02 松岡校長一周忌 ブックウェアを掲げて
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エディスト・クロニクル2025 #01 田中優子学長、師範代になる!
新横綱の誕生に、米トランプ大統領の再選。米の価格が高騰する中、大阪・関西万博が開幕した。編集学校では、54[守]特別講義に登壇したISIS co-mission 宇川直宏から出題された生成AIお題に遊び、初めて関西で開 […]
写真というアウトプットにコミットする俱楽部 多読アレゴリア「倶楽部撮家」第3期目は、さまざまなものや先達から肖り、写真をより楽しむことをテーマにします。 第1期目の夏シーズンは、自身の幼な心からはじめ、お盆にはもう会 […]
『方法文学』を写真する PHOTO Collection【倶楽部撮家】
本にはなんだって入る。世界のまるごと入ってしまう。写真にもなんだって入るだろう。世界がまるごと入った本だって入る。 今夏刊行された『百書繚乱』(松岡正剛/アルテスパブリッシング)では、こう締めくくられている。 &nb […]
コメント
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2026-01-22
『性別が、ない!』新井祥
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2026-01-13
自らの体内から這い出したコマユバチの幼虫たちが作った繭の塊を抱きしめるシャクトリムシ。科学者は「ゾンビ化されて繭を守るよう操作されている」と解釈するけれど、これこそ「稜威」の極北の姿ではないだろうか。