りんごという残念を抱えて【88感門】

2025/09/06(土)19:21
img JUSTedit
なぜりんごを掲げているのか?
写真に写っているのは、43[花]くれない道場の放伝生と師範陣だ。なぜ感門の場にりんごなのかを知るには、入伝の日まで遡る必要がある。これから始まる訓練に向けて、師範代としてのカマエを作る道場五箇条を共同制作する入伝式のワーク「物学条々」。くれない道場が掲示した五箇条は、3色のりんごのイラストだった。
なぜりんご? なぜ3つ? 案の定、道場生たちは指導陣から厳しい指導をさっそく受ける。くれない道場生たちは、入伝式の場で師範代に着替えきれなかった残念を抱えたまま、花伝所のトレーニングに臨むことになった。
しかしくれない道場生たちはりんごを手放さなかった。いや、あれだけ強く叱咤されたからこそ、最後までりんごであることにこだわった。「ふぞろいのりんご」たちとなったくれない道場生たちは、8週間でたくさんの創を負った。
放伝式で林花目付からマイクを向けられた吉井優子花伝師範は、くれない道場の稽古模様を「脱線が多かった」と評した。寄り道をしまくった分、交わされた言葉も、収穫された気づきも、豊作だったに違いない。
今日、放伝生たちは世界に唯一の教室名をもらい、師範代となった。師範代のふるまい・しつらえ・もてなしを学んだ師範代たちは、「ふぞろいのりんご」をどのように編集して差し出すのか。よもや学衆にそのまま齧りつかせるような真似は、もうしないだろう。
 
文/青井隼人
写真/後藤由加里
  • イシス編集学校 [守]チーム

    編集学校の原風景であり稽古の原郷となる[守]。初めてイシス編集学校と出会う学衆と歩みつづける学匠、番匠、師範、ときどき師範代のチーム。鯉は竜になるか。

  • 陽だまり・夕焼け・宵闇は、三間連結か?

    秋の絵本を「その本を読むのにふさわしい明るさ」で3つに分けると、陽だまり・夕焼け・宵闇になる。 多読アレゴリア「よみかき探究Qクラブ」のラウンジに出された問い「本をわけるあつめる。するとどうなる?」への答えだ。 クラブで […]

  • 56[守]旬の味覚シリーズ〜編集は、おでんから始まる〜

    教室というのは、不思議な場所だ。 どこか長い旅の入口のような空気がある。 まだ互いの声の高さも、沈黙の距離感も測りきれないまま、 事件を挟めば、少しずつ教室が温かく育っていく。そんな、開講間もないある日のこと。 火種のよ […]

  • 教室という「異世界」へ――56[守]開講間近

    かなりドキッとした。「やっぱり会社にいると結構つまんない。お給料をもらうから行っておこうかなといううちに、だんだんだんだん会社に侵されるからつらい」。数年前のイシス編集学校、松岡正剛校長の言葉をいまもはっきりとはっきり […]

  • エディット・アスリートの祭典ー55[守]クロニクルー

    花伝所の指導陣が教えてくれた。「自信をもって守へ送り出せる師範代です」と。鍛え抜かれた11名の花伝生と7名の再登板、合計18教室が誕生。自由編集状態へ焦がれる師範代たちと171名の学衆の想いが相互に混じり合い、お題・ […]

  • 【88感門】結司・響事・籟記が生まれた日

    これまで松岡正剛校長から服装については何も言われたことがない、と少し照れた顔の着物姿の林頭は、イシス編集学校のために日も夜もついでラウンジを駆け回る3人を本棚劇場に招いた。林頭の手には手書きの色紙が掲げられている。 &n […]