渡を越え、カマエ直し継ぐ【88感門】

2025/09/09(火)11:56
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五色の衣から二十の世界に着替え、56[守]へ走りだした。
今期の花伝所は勢いがあった。第88回感門之盟・放伝式冒頭で所長・田中晶子に「なつく」と評されたように、放伝生たちは、師範から技を盗もうと、何度も応答を繰り返し、どこまでも知と方法を追い続けた。その姿に感化され、師範たちも指導に熱が入った。長年花伝所に携わる、43[花]くれない道場の花伝師範・吉井優子は、1273という道場での発言数は、過去一だという。
そんな放伝生を代表して、やまぶき道場からトージ瀬戸際教室に乗り換えた、杜本昌泰師範代が武者震いしながら、決意を述べた。
『インタースコア』(春秋社)に、“とくにぼくが重視する編集は「境い目」を超えるときに最も劇的にあらわれる”、という校長の言葉が記載されている。それを千夜千冊443夜『五輪書』では、“渡をこす”と表され、“「渡」を越したかどうかを体や心でわかるべき”と書かれている。杜本は、花伝所の経験をそれに重ねた。指南を書き、指導が入っても、まったく出来ている気がせず、手も足も出なかった。しかし、夢中になって演習をすすめ8週間たつと、手足が少しずつ出るようになっていた。みなそれぞれが渡を越す瞬間があり、それを身体と心で感じるものだった。渡を越すことに全身で全力を尽くした、と振り返る。
そして、意味に飢える社会で、師範代になることに意味がある。意味が欠如した世界は、編集を要している。編集工学に魅せられた皆と共に、校長の共伴者となって、感と応を全開にして別様を介していく存在になりたい。ここまで編集工学をつないでくださった、学林局や学匠、番匠、花目付、師範のみなさまに感謝したい、と締めくくった。その言葉に、その場に居合わせた[破]番匠・白川雅敏は、「嬉しいね」と思わず漏らしていた。
杜本は、冠界式で名前を呼ばれると、壇に上がる前に本楼の校長の祭壇に一礼していた。そこで、校長と共に走る意志を伝えたのだろう。編集工学を継ぐ師範代として、カマエ直した。

 

アイキャッチ・文/中村裕美(43[花]錬成師範)

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