木々が色づきを増すこの季節、日当たりがよくて展望の利く場所で、いつまでも日光浴するバッタをたまに見かける。日々の生き残り競争からしばし解放された彼らのことをこれからは「楽康バッタ」と呼ぶことにしよう。
株式会社編集工学研究所(本社:東京都世田谷区、代表取締役社長:安藤昭子)が運営するイシス編集学校は、学長である田中優子による新刊の発売をお知らせいたします。
世界情勢の混乱、社会の分断、生成AI時代の不確実性にどう立ち向かうか——。田中優子の新刊『不確かな時代の「編集稽古」入門』(朝日新書)は、教育を超える「稽古」という方法を提唱する一冊です。イシス編集学校での実践と25人の学び手の声を通じて、時代を生き抜くための新しい学びの形を問い直します。
7万人が入門した面白い学校がある。編集工学者である松岡正剛が創設した理系・文系を超えたネット上の「方法の学校」、イシス編集学校だ。
ここで学ぶのは医師、看護師、教師、経営者、外交官、臨床心理士、主婦、学生などさまざまな職業の人たち。彼らが仕事場で活用した方法の具体的実例が初公開される。
彼らはどのように「編集稽古」をして、心身を柔軟に、そして視点や発想を変えることができたのか。
楽天創業者の一人であり、教育業界で注目される軽井沢風越学園 理事長 本城慎之介氏は、イシス編集学校で学び、その方法を学校経営にも活かしていると語る。著者と本條氏との対談も掲載されている。法政大学元総長であり、現イシス編集学校学長である田中優子が、これからの生成AI時代、時代の転換期にこそ必要な身体知による編集稽古の重要性を説く。
出版社 : 朝日新聞出版
発売日 : 2025/11/13
著者:田中優子
定価:840円+税
ISBN:978-4-02-295343-8
新書判 216ページ
田中優子(たなか・ゆうこ)
イシス編集学校学長、法政大学名誉教授、江戸文化研究者
1952年、横浜市生まれ。法政大学大学院博士課程(日本文学専攻)修了。法政大学社会学部教授、学部長、法政大学総長を歴任。専門は日本近世文化・アジア比較文化。『江戸の想像力』(ちくま文庫)で芸術選奨文部大臣新人賞、『江戸百夢』(朝日新聞社、ちくま文庫)で芸術選奨文部科学大臣賞、サントリー学芸賞受賞。2005年、紫綬褒章受賞。朝日新聞書評委員、毎日新聞書評委員などを歴任。「サンデーモーニング」(TBS)のコメンテーターなども務める。江戸時代の価値観、視点、持続可能社会のシステムから、現代の問題に言及することも多い。松岡正剛と35年来の交流があり、自らイシス編集学校の[守][破][離]コースを受講、修了している。基本コース[守]の特別講義「田中優子の編集宣言」に講師として登壇。ビジネス・パーソンを対象としたハイパー・エディティング・プラットフォーム[AIDA]でボードメンバーを務める。
https://es.isis.ne.jp/outline/tanaka-yuko
本書では、イシス編集学校で学び、その学びを仕事や生活に取り入れ活躍している25人の学び手が登場します。
・年齢層: 20代~60代
・バラエティ豊かな職業:
大学生、会社員、広報担当、書店外商員、電気メーカー会社員、辞書編纂者、銀行関連会社員、経営コンサルタント、企業経営者、学校経営者、公務員、外務省現地駐在員、団体職員、医師、臨床心理士、看護師、ピアニスト など
株式会社編集工学研究所(本社:東京都世田谷区、代表取締役社長:安藤昭子)が運営するイシス編集学校は、インターネット上で24時間いつでもどこでも「編集術」を学べる学校として、2000年に開校、昨年、25周年を迎えました。
2024年、創設者・校長である松岡正剛が逝去後、田中優子はイシス編集学校学長に就任しました。法政大学で教鞭をとるかたわら、自ら編集学校のすべてのコースを受講しています。2025年春には師範代養成講座[ISIS花伝所]を修了、編集学校基本コースにおいて師範代として教室を担当しました。そこには、これまで大学教育に携わる中で当たり前とされてきた「教育」とは全く異なる「編集稽古」という方法がありました。不確かな時代に一人ひとりの可能性を引き出すためには、対話型で ”他者の心の奥深くまで”触れることができる稽古の仕組みが必要です。本書では、イシス編集学校で得た学びを仕事や生活で実践する「編集稽古の学び手25人」の言葉をつなぎながら、不確かな時代にふさわしい稽古という方法を田中優子が語ります。巻末には、生成AIやプルラリティなど社会における最新動向についても言及しています。
不確かな時代に、どう自分自身を磨いていけばよいか迷われているすべての方にお読みいただきたい1冊です。
イシス編集学校では、学ぶことを「稽古する」と言います。学生を学衆と呼び、教師を師範、師範代と呼びます。稽古は日本の芸能と武道の言葉です。これらでは「学習」「教育」という言葉を使いません。近代以降、学校制度が定着する中で教育という言葉が広まったにも関わらず「稽古」とか「道場」という言葉が廃れなかったのです。なぜなら、稽古は教育とは違うからです。
最大の違いは、稽古する者が自分の心身で、師の言葉や振る舞いや音曲を感じ取り、自らの中に音や言葉を入れ、それを自らの心身で表現していくことでしょう。全身で能動的に取り組むのです。言葉を受動的に受け取り記憶していく学び方とは、対照的です。
そしてもう一つ大事な点は正解も到達点もないことです。稽古は全身でおこないます。個々の心身は異なりますので、師匠と同じにはなれません。自分なりの出来上がり具合を確かめながら、深め高めていく訳ですが、どこが到達点なのか誰も知りません。生涯、深め高め続けていく。それが稽古なのです。
まえがき――イシス編集学校とはどういうところか
Ⅰ 他者の心の奥深くへ
今ここからはじめる / 他者の心の奥深くへ / 「指南」という方法 / 添削から指南へ / 「入る」ということ / 問→感→応→答→返
Ⅱ 編集体験がもたらしたもの
たくさんのわたしに出会う / わたしが変わる / 心の中の「注意のカーソル」 / 圧倒的な寛容さと柔軟さ / 逆境は再編集のチャンス
Ⅲ 方法の冒険
「あいだ」に対角線を引く / 学習棄却と再編集 / 〈BPTモデル〉で人生を物語する / 「地と図」が見えた時
Ⅳ 「型」が必要だった
音楽とアートは「型」が必要! / 世界がつながる / 物語講座 / “わかりやすい”とは? / 子どもたちを見るまなざし
Ⅴ 編集とは関係の構築だった
関係の構築 / 「ルル3条」で気づいた流通の問題 / 「注意のカーソル」応用編! / 物語編集で乗り越えた
Ⅵ さまざまな場所で展開するイシス編集学校
イシス特別バージョン / コンパイルとエディット / レシピを真似る
Ⅶ どこにもない学校を目指して
「自由」について / 失敗できる学校 / [AIDA]・間・あいだ / 一途と多様 / AIをどう考えるか?
Ⅷ 編集稽古の基本用語
あとがき
出版を記念し、田中優子が様々な方々との対談シリーズを実施していきます。2025年内に開催するイベントは以下の通り。2026年以降も順次開催予定。
音楽や芸術の営みも、この不確かな時代において、人々の希望や生きる力を支えるものとして強く問われています。 戦争や分断、価値観の対立が続く中で、子どもたちがより幸せに生きるために、私たちは何を考え、どのように生きていけばよいのでしょうか。今回の特別講座では田中優子先生をお迎えし、社会の混迷を乗り越えるために不可欠な「編集的自由」や「相互編集」の視点からお考えを伺います。
・日時:2025年 12月 2日(火) 18:00~
・場所:東京音楽大学 池袋キャンパス A200教室
・出演:田中 優子(イシス編集学校学長、法政大学名誉教授、江戸文化研究者)
・ナビゲーター:広上 淳一(東京音楽大学 指揮専攻教授)
・モデレーター:坂元 勇仁(東京音楽大学 指揮専攻特任講師)
・協力:株式会社 岩波書店、株式会社 朝日新聞出版
・主催:東京音楽大学 指揮部会
・詳細・お申込:https://tcm-concert.com/20251202
※一般の方も、どなたでもご参加いただけます

イシス編集学校学長 田中優子の新刊発売を記念し、イシス編集学校アドバイザリー・ボードISIS co-missionの一人である鈴木健(東京大学特任研究員)をゲストにライブ配信を行います。
・日時:2025年12月9日(火)14時~15時
・対談:田中 優子(イシス編集学校学長、法政大学名誉教授、江戸文化研究者)
鈴木 健(東京大学特任研究員)
・参加方法:YouTube配信 https://youtube.com/live/c8gjZlNmG9g
・参考情報:
【12/9ライブ配信】田中優子×鈴木健「不確かな時代の方法としての政治 Pluralityと相互編集」
エディスト編集部
編集的先達:松岡正剛
「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。
【田中優子の学長通信】No.12 『不確かな時代の「編集稽古」入門』予告
この表題は、もうじき刊行される本の題名です。この本には、25名もの「もと学衆さん」や師範代経験者たちが登場します。それだけの人たちに協力していただいてできた本です。もちろん、イシス編集学校のスタッフたちにも読んでもらい […]
田中優子の酒上夕書斎|第五夕『苦界浄土』石牟礼道子(2025年10月28日)
学長 田中優子が一冊の本をナビゲートするYouTube LIVE番組「酒上夕書斎(さけのうえのゆうしょさい)」。書物に囲まれた空間で、毎月月末火曜日の夕方に、大好きなワインを片手に自身の読書遍歴を交えながら […]
イシス編集学校で予定されている毎月の活動をご案内する短信「イシスDO-SAY(ドウ-セイ)」。 さて、11月は待望の「本の祭典」月間がやってきます。11月2日は福岡で、11月23日、24日は東京・豪徳寺で、 […]
イシス編集学校のアドバイザリー・ボード「ISIS co-mission」(イシス・コミッション)に名を連ねる9名のコミッション・メンバーたちが、いつどこで何をするのか、編集的活動、耳寄りニュースなど、予定されている動静を […]
【プレスリリース】本好き必見:松岡正剛の郷読&多読 2大ブックフェス開催!11月、東京と福岡で「本の祭典」——九州は田中優子トーク、東京は6万冊の本棚空間で古本市&ライブトークをイシス編集学校が初開催
本を読むだけでは終わらない、本の新たな可能性をひらく読書の祭典へ——。 イシス編集学校は、11月に福岡と東京で本好き必見の二大イベントを開催します。校長であり編集工学者の松岡正剛の読書術を活かした「郷読」「多読」の祭典で […]
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2025-11-11
木々が色づきを増すこの季節、日当たりがよくて展望の利く場所で、いつまでも日光浴するバッタをたまに見かける。日々の生き残り競争からしばし解放された彼らのことをこれからは「楽康バッタ」と呼ぶことにしよう。
2025-11-04
56守で初登板される皆さまへキワメツキのサカイメ画像を。羽化が迫り、翅の模様が透けて見えてきたツマベニチョウのさなぎ。側面に並ぶ赤いハートマークが、学衆さんたちとの激しく暖かな交換を約束しております。
2025-10-29
中二病という言葉があるが、この前後数年間は、”生きづらい”タイプの人にとっては、本格的な試練が始まる時期だ。同時に、自分の中に眠る固有のセンサーが、いっきに拡張し、世界がキラキラと輝きを放ちはじめる時節でもある。阿部共実『月曜日の友達』は、そんなかけがえのない瞬間をとらえた一編。