外国語から日本語への「翻訳」もあれば、小説からマンガへの「翻案」もある。翻案とはこうやるのだ!というお手本のような作品が川勝徳重『瘦我慢の説』。
藤枝静男のマイナー小説を見事にマンガ化。オードリー・ヘプバーンみたいなヒロインがいい。
春のプール夏のプール秋のプール冬のプールに星が降るなり(穂村弘)
季節が進むと見える景色も変わる。11月下旬、56[守]の一座建立の場、別院が開いた。18教室で136名の学衆が稽古していることが明らかになり、不思議な教室名が披露された。18名の師範代による教室紹介メッセージが届いた。「七人の頼もしく温かく、愉快で爽快で、心優しい旅人だからこそ紡げる冒険譚を描きます」(Bメロ瀑布教室・中野恵介師範代)、「師範代はあやすじがからまぬよう、指南という綜絖を上下に動かしながら、毎日機織り機の前で、美しい文様ができあがっていくさまにうっとりしています」(あやすじデスティーノ教室・板垣美玲師範代)。
誇らしげに教室の学衆たちの稽古模様を伝える師範代たちは、学衆と出会う以前に、教室風景を描くことに勤しんでいた。イシス編集学校の名物フライヤー制作だ。「こんな教室にしたい!」というありったけの決意を一枚に込める。まだ見ぬ学衆たちを迎え、充実の編集稽古に向かうための大切な用意の一つだ。その成果の一部を型とともにお披露目しよう。
金平ボサノバ教室 岩崎大師範代
「きんぴらごぼう」を食べるのではなくメガネとせよ。岩崎大師範代からの提案だ。色も味も濃ゆい人参と牛蒡を混ぜあわせて最後に唐辛子で辛みをきかせる。この前衛的な料理フィルタ―で世界を覗けば、日本の伝説の豪傑と南米の繊細なギタリストと一緒に踊ることだってできる。
(フィルタ―、らしさ、見立て)
ハレルヤ電池教室 家村吏慧子師範代
情報を電気に、編集を配線に見立てたならば、学衆たちは新米配線工事職人だろうか。棟梁である家村吏慧子師範代のもとで、38の大工道具=型を手にすれば、見えている・見えていないに関わらず、自在に情報をつなぐことができる。世界に光を灯そうではないか。
(ないものフィルタ―、見立て)
さくさくウンベルト教室 翠川辰行師範代
殻を破ると、そこに地球が現れる。「世界は生きものが感じる主観的な現実」「生きものの数だけ、世界がある」という言葉は、「わたし」という世界の内に眠る多様な感じ方や語り方を肯定する。「たくさんの〈わたし〉」が立ち上がる瞬間だ。水彩画でやさしく描かれたビジュアルの奥に、編集道へ踏み出す強い決意が宿っている。
(たくさんの「わたし」、IF/THEN)
はなして星亀教室 永石あゆみ師範代
「内側にあるものを外に出す、際立つ」ことを古人は「はな」と呼んだ。話・放・離・花・華…たくさんの「はな」を集めた永石師範代。咲き誇る花のような視覚的配置は、たくさんの「わたし」を目覚めさせる編集稽古の広がりそのものだ。そして、もうひとつ大切な言葉がある。「歩」。ともに歩む。静かな覚悟がこの一字に刻まれている。
(フィルター、らしさ、連想シソーラス)
連菫ポレポレ教室 高橋英子師範代
直截の菫色は塗らず、2つの空のあいだで混ざり合う菫色の予感を描いた。自分の立つ「ベース」から見上げた、遠い雲という「ターゲット」は、空を「地模様」とした「図柄」でもある。「ゆったりと世界を吸い込む」と、「私の世界」と「世界の私」はひっくり返る。そんな、主客反転でまぜこぜな菫色物語に誘うフライヤーだ。
(地と図、のの字、BPT)
蓮華ソーソー教室 グッビニ由香理師範代
色とりどりの蓮華の文様は、SOW(種を蒔き)、SEW(パッチワークして)、SAW(見つけた)の言い換えと呼応して、くるくると廻った。美しく咲く花だけでなく、「あなたの根っこをセカイと繋げよ」と説き、茎を辿り水面下の深みと誘っていく。そのリバースエンジニアリングの先には「型」が隠されているだろう。
(言い換え、振り返り、三位一体)
12月初旬、別院では学衆による自己紹介が始まった。「これからの長い長い旅に教室外の仲間がたくさんいることが嬉しい!」「好奇心の赴くまま飛び込んだイシス、同じ空の下、同じ時間に、同じ問いを脳内に巡らせている仲間がいて心強い」。かつてないスピードで50人が駆けつけ、言葉を寄せた。
人が集えばあらわれる景色も変わる。学衆たちと師範代との共同編集によって、教室の景色は当初想定したものをはるかに越えていく。番選ボードレール、汁講、特別講義、そして、38の番稽古…、16週間後の表情は誰にも見えていない。変化し続けることだけが、変わらない。
(フライヤーレビュー:師範 阿久津健、師範 景山和浩、
文:番匠 阿曽祐子)
イシス編集学校 [守]チーム
編集学校の原風景であり稽古の原郷となる[守]。初めてイシス編集学校と出会う学衆と歩みつづける学匠、番匠、師範、ときどき師範代のチーム。鯉は竜になるか。
番選ボードレール(番ボー)エントリー明けの56[守]第2回創守座には、教室から1名ずつの学衆が参加した。師範代と師範が交わし合う一座だが、その裏側には学衆たちの賑やかな世界が広がっていた。 師範の一倉弘美が俳句で用法3を […]
秋の絵本を「その本を読むのにふさわしい明るさ」で3つに分けると、陽だまり・夕焼け・宵闇になる。 多読アレゴリア「よみかき探究Qクラブ」のラウンジに出された問い「本をわけるあつめる。するとどうなる?」への答えだ。 クラブで […]
教室というのは、不思議な場所だ。 どこか長い旅の入口のような空気がある。 まだ互いの声の高さも、沈黙の距離感も測りきれないまま、 事件を挟めば、少しずつ教室が温かく育っていく。そんな、開講間もないある日のこと。 火種のよ […]
かなりドキッとした。「やっぱり会社にいると結構つまんない。お給料をもらうから行っておこうかなといううちに、だんだんだんだん会社に侵されるからつらい」。数年前のイシス編集学校、松岡正剛校長の言葉をいまもはっきりとはっきり […]
花伝所の指導陣が教えてくれた。「自信をもって守へ送り出せる師範代です」と。鍛え抜かれた11名の花伝生と7名の再登板、合計18教室が誕生。自由編集状態へ焦がれる師範代たちと171名の学衆の想いが相互に混じり合い、お題・ […]
コメント
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2025-12-25
外国語から日本語への「翻訳」もあれば、小説からマンガへの「翻案」もある。翻案とはこうやるのだ!というお手本のような作品が川勝徳重『瘦我慢の説』。
藤枝静男のマイナー小説を見事にマンガ化。オードリー・ヘプバーンみたいなヒロインがいい。
2025-12-23
3Dアートで二重になった翅を描き出しているオオトモエは、どんな他者に、何を伝えようとしているのだろう。ロジカルに考えてもちっともわからないので、イシスなみなさま、柔らか発想で謎を解きほぐしてください。
2025-12-16
巣の入口に集結して、何やら相談中のニホンミツバチたち。言葉はなくても、ダンスや触れ合いやそれに基づく現場探索の積み重ねによって、短時間で最良の意思決定に辿り着く。人間はどこで間違ってしまったのだろう。