写真家研究トライアル|PHOTO Collection公開【倶楽部撮家】

2026/03/18(水)07:54 img
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 倶楽部撮家の名物ワーク「撮家(写真家)研究」の成果を初公開します。
 前期から始まった大好評のワークの第二弾です。どんなワークかというと、巨匠や新進気鋭の写真家の方法を研究し、方法を取り出し、肖ることで先達の方法を我がものにしていくという編集力が試されるワークです。編集学校の[破]コースでは「文体編集術」という名文の文体を真似ることでモノの見方を変えるというお題がありますが、その写真版とも言えるでしょう。写真家の視点や思想の深い理解を研究し言語化することは、テクニックだけでは得られないモデルを発見する機会になっています。倶楽部メンバー(瞬友)は17名の写真家の中から1人を選び、撮影に取り組みました。たくさん撮った写真の中から選ばれた渾身の一枚をキャプションと共にご覧ください。

 

撮影:中西和彦
肖った撮家:ルイジ・ギッリ

ギッリは均質な光によって世界を静止させました。写真は世界を切り取るのではなく、世界を招き入れるものでした。内の視点から、途方もない外の世界を眺める構図が好みでもありました。手前の水面、中景の土手や低層建築、遠景の高層ビル群の「都市の層」を測量士の眼で捉え、静かな空間を撮りました。薄曇り空の拡散した光のもと、影のない柔らかい光に包まれることを意識し、色調は淡いピンクとグレーのパステル調としました。

 

撮影:後藤由加里
肖った撮家:鈴木理策

「見ること」にこだわり続ける鈴木理策さんの写真は見るものの視線を誘導する写真だ。人は写真を見るときにどこにフォーカスがあっているか自然と探してしまうもの。そのことを活かし、絞りを開放にして桜を何枚も撮影してみると「桜を見る」といっても、桜の木をぼんやり見るのか、桜の花びらを見るのか、桜の奥にある木を見るのか、視点が次々に動き、情報の解像度が上がっていくことを発見した。

 

撮影:岡崎美香
肖った撮家:植田正治

「砂丘は巨大なホリゾント!」と勇んで出かけた須磨海岸は足跡だらけ。しかし、雲ひとつない青空に春の花火を打ち上げることができ、UEDA-CHOを少しだけカタチにできたのでした。

 

撮影:和泉隆久
肖った撮家:スティーブン・ショア

ショアは教えてくれた。目の前に広がる世界に、構図という型を当てはめてみること。そして、視覚で捉えた要素を関係づけ、そこに意味を見いだすこと。日常に被写体があふれてくる。通いなれたスーパーの地下駐車場を一点透視図法に収めてみる。一階の商品に合わせるように車が整列していた。

 

撮影:小谷幸夫
肖った撮家:スティーブン・ショア

無機質で客観的な視点から、ドラマチックな瞬間ではなくどこにでもある、日常の何でもない風景の歩道橋を撮影。被写体に向ける「注意の質」が「写真の質」を決定するというショアの姿勢で、シャープな描写と構図を追求することを発見。

 

撮影:小池信孝
肖った撮家:アーヴィング・ペン

撮家から取り出した方法は、以下の二点を意識した。
1.自然光で、同じ焦点距離の長さのレンズで被写体を捉える。
2.ふとしたモデルらしくない表情を捉える。

窓から入ってくる花粉が鼻を刺激し、くしゃみを我慢して涙が少し出ている瞬間にシャッターを切った。肖りは、モデルのモデルらしくない表情を狙った。涙が溢れる瞬間をうまく写真に閉じ込められたと思う。

 

撮影:福澤俊
肖った撮家:アーヴィング・ペン

肖像におけるシュールリアリズム、写真におけるミシンとコウモリ傘の出会い。美しく作られた花はありふれた日用品と交わります。あなたは花をどこに飾りますか?

 

撮影:大澤実紀
肖った撮家:マーティン・パー

新宿という街を撮った。暴力的な広告、観光客、働く人、お年寄り、それぞれ混じり合うことなく、同じ場所にいながら違う方向を向く。マーティン・パーが資本主義の象徴として捉えた<観光>は、今や外貨を得る国策産業だ。しかし、本来は人と文化が互いに影響を与え、社会が変化する交流だったのではないだろうか。新宿の街は、なぜか人と人の交わらなさが面白い。マーティン・パーに肖り、自ら明るく楽しむ人を切り出した。

 

撮影:林朝恵
肖った撮家:木村伊兵衛

伊兵衛の目を借りて、浅草に生きる人の様子を自然な形で映し出すこと、被写体の可能性を客観的な視点で引き出すことを意識した。浅草は昭和の名残り、人間くささが、日本らしさへと変化しているところが魅力なんだと気づいた。「令和の新浮世絵」のアップデートを目論んだが、さてどうか。

 

撮家の方法を借りて撮影してみると、ただ写真集を眺めているだけでは決して知ることのできなかった視点や思想に出会うことになります。同時に想像できなかった難しさも実感しました。これは、読書と執筆の関係にもどこか似ています。面白く読むことができても、必ずしも面白く書けるとは限らない。3月上旬にはメンバー同士で集まるフィードバック会があり、それぞれが課題を持ち寄りました。その中で、これまで自分には撮れなかった写真が撮れたことや、新たな撮家との出会いに、誰もが大きな興奮を覚えていたのが印象的でした。私自身も、木村伊兵衛という存在が以前よりずっと身近なものとなり、借り受けたその「方法」というレンズは、これからも自分の中で静かに息づいていくのだと感じます。

 

アイキャッチデザイン:後藤由加里
文・編集:林朝恵


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