橋本治がマンガを描いていたことをご存じだろうか。
もともとイラストレーターだったので、画力が半端でないのは当然なのだが、マンガ力も並大抵ではない。いやそもそも、これはマンガなのか?
とにかく、どうにも形容しがたい面妖な作品。デザイン知を極めたい者ならば一度は読んでおきたい。(橋本治『マンガ哲学辞典』)

41[花]は5つの道場にわかれて、式目演習に臨んだ。師範代認定への評価は、それぞれの道場を与る花伝師範の裁量に委ねられている。今期わかくさ道場の花伝師範は尾島可奈子。尾島は、敢えて「わかりやすいスコア」ではからない、という編集方針で道場稽古をスタートさせた。
◆はかれるもの・はかれないもの
口数の多さや回答のスピード、あるいは誰と何回、どれくらいのやり取りをしたか、といった数や量で表すことができるもの。言葉遣いやものごとの見方や捉え方、特徴や手触りのような質的なもの。こうしたスコアとしてつかめる、わかりやすいもので入伝生をはからない。尾島が見ているのは、彼らが「場」に出してくるふるまいの奥にあるものだ。
◆わかくさの広場
わかくさ道場の6人のうちで、もっとも「書く」ことに長けているのはYだ。日々の暮らしの情景を軽妙に、鮮やかに描きだす力量と、読むものを引き込む情感あふれる世界観には誰もが一目置く。ことばも柔らかで豊穣だ。かつて[守][破]の講座で稽古の達人の名を欲しいままにしたMは、わかくさ道場でも先陣を切る。彼のユニークネスは、あちこちにハプニング(偶然)を巻き起こす、さながらつむじ風だ。いっぽう、対話のステップを楽しむSは、Chat GPTを道場に持ち込んだ。AIの回答は、連想もアナロジーも新たな可能性もなく、表面的だ、とすっぱり言いきりながらも、Chat GPTなりの「らしさ」の捉え方をおもしろがる。
◆推しはかる
尾島は矯めることをよしとしない。センサーに触れるところにどんどん深く入り込んでゆくUの注意のカーソルの動きを“ほっつき蟻”に見立て、彼の持ち帰るお土産を楽しみに待つ。蝶々のように軽やかに道場仲間の間を飛び回るRが、痛みを感じる瞬間を見逃さず、すっと言葉を届ける。Yの芳醇なことばの奥に気高く咲く花を愛で、SとChat GPTのやり取りに耳をすませる。時にしれっと対話に加わり、さしかかりと見ればきりっと鋭く切り込む。ここぞの場面では、粘りづよく言葉をかさね、決してあきらめない。
◆「場」のチカラ
彼らのふるまいのひとつひとつが、尾島にとってのツールになる。だれかが動けば、周りも動く。そうやって「場」が動き、ひろがってゆく。その「場」に編集されるのは、入伝生だけではない。彼らの一様ではないふるまいが、道場をともにする師範の応接も変幻自在にかえてゆく。師範たちは多様な意味の交換をともに遊ぶ編集数寄者だ。
花伝所はイシス編集学校で、唯一、相互編集を方法として学べる場だ。花伝所の師範は、そこにあるものから「次になるもの」を見つめている。そのイメージメントが入伝生を師範代認定のその先へ、編集道の彼方へと導いてゆく。
文:山本ユキ(錬成師範)
写真・アイキャッチデザイン:宮坂由香(錬成師範)
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編集的先達:世阿弥。花伝所の指導陣は更新し続ける編集的挑戦者。方法日本をベースに「師範代(編集コーチ)になる」へと入伝生を導く。指導はすこぶる手厚く、行きつ戻りつ重層的に編集をかけ合う。さしかかりすべては花伝の奥義となる。所長、花目付、花伝師範、錬成師範で構成されるコレクティブブレインのチーム。
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コメント
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2025-08-21
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2025-08-19
エノキの葉をこしゃこしゃかじって育つふやふやの水まんじゅう。
見つけたとたんにぴきぴき胸がいたみ、さわってみるとぎゅらぎゅら時空がゆらぎ、持ち帰って育ててみたら、あとの人生がぐるりごろりうごめき始める。
2025-08-16
飲む葡萄が色づきはじめた。神楽鈴のようにシャンシャンと音を立てるように賑やかなメルロー種の一群。収穫後は樽やタンクの中でプツプツと響く静かな発酵の合唱。やがてグラスにトクトクと注がれる日を待つ。音に誘われ、想像は無限、余韻を味わう。