3Dアートで二重になった翅を描き出しているオオトモエは、どんな他者に、何を伝えようとしているのだろう。ロジカルに考えてもちっともわからないので、イシスなみなさま、柔らか発想で謎を解きほぐしてください。
纏うものが変われば、見るものも変わる。師範を纏うと、何がみえるのか。43[花]で今期初めて師範をつとめた、錬成師範・新坂彩子の編集道を、37[花]同期でもある錬成師範・中村裕美が探る。
――なぜイシス編集学校で学ぼうと思ったのですか。
数学科の教員から探究科に異動することになり、どのような授業を組み立てたらいいか手探りだったので、色々調べたんです。そのとき、『探究型読書』(クロスメディア・パブリッシング)に出会いました。文系と理系という反する属性を合わせた、編集工学研究所って面白いと思い、読み始めました。根っからの理系で読書に苦手意識があったのですが、型を使って読むということが、面白いくらい読書イメージを崩してくれましたね。教材も提供しているということで、編集工学研究所に問い合わせて、そこで親身に対応してくれたのが佐々木千佳局長でした。すぐに対話の場を設けてくれて、やりたいこと引き出してくれました。授業で取り入れることになって、生徒に提供するなら、自分も編集を学ぼうと、入門しました。
――なぜ師範代を目指したのですか。
型を絶対習得したい。それならば、教える側にならなければ身に付かないと思っていたので、迷いなく、47[守]・47[破]・37[花]と進み、50[守]師範代までやりました。愉しいから続けるというより、修行のような感じです。一度決めたらやり通す、みたいな。
――破の師範代登板には、少し時間があきましたね。
秋から春にかけては、学校のイベントが土日にあることが多いんです。[守]登板がその時に重なっていたので、へとへとになって、ひと息いれたくなりました。51[破]に登板しないか声をかけてもらったのですが、その時は忙しいシーズンだったので断りました。でも何か心残りがあって、次の期に、枠が空いてれば登板したいと連絡しました。
――師範としてみた花伝所はどうでしたか。
入伝生だった頃の師範の言葉がわかるようになりました。眠くてうつらうつらしながら書いた指南に、厳しい指導が返ってきて、こんなに頑張っているのに、どうしてこんなこと言われなくちゃいけないんだと思っていました。でも、頑張っていることを否定しているわけじゃないんですよね。見ている部分が違う。もっと先に向かって伸びていけるための言葉だったんです。一人一人とじっくり向き合って、この人にはどう応接しようかと、すごく時間をかけて考えている。その人の持ち味を磨くための言葉を放っている。師範をやってみて、それを強く実感しました。花伝所時代、道場で吉井優子花伝師範の研がれた言葉に涙したのですが、その言葉の背景が今ならわかる。
――道場付の錬成師範として見た道場はいかがでしたか。
私がいたしろがね道場の岩野範昭花伝師範は、24時間ゆるやかな臨戦態勢でした。ずっと見守っていて、道場での出来事を受け取りながら本質を突く。ここぞというときに方法によって背中を押す。道場生2名の途中離脱があったのですが、ずるずる負の雰囲気にならなかったのは、このカマエが効いていたと思います。こういうことが、自分にはない部分。入伝生に刺さるような言葉を発したいのに、できない。
――第88回感門之盟の冠界式では司会に抜擢されました。相方は中村麻人さんという、あの千夜の数学コンビでしたね。あの千夜が掲載された時、かなり驚きました。
私も驚きました。公開直後にたまたま本楼で汁講をしていて、その時に校長とお会いして、「どうだった」って聞かれたんです。どうもこうも、びっくりしたとしか言えず。だってインタビューしてないんですよ。すべて校長の想像。でも私が言いそうなことが書かれている。
――お次は離に進むそうですね。決めたきっかけは。
忙しい時期に重なるのですが、開講時期が限られているし、“今”と思ったので。錬成指導で、[離]を経た師範がもつメッセージが強く、私もその強さを手に入れたくなりました。そして何より校長に会いたい。学衆の時に分からなかったお題や本の内容が、今になったら分かるようになっている。Season4「意識と情報のAIDA」を受講したのですが、その時ほぼわからなかったのに、今『擬』(春秋社)を読んで、見えてきた部分がある。校長の考えが再生される。だから、[離]ではたぶん校長と会えると思います。
花伝師範・岩野は、新坂のことを、コンスタントに場に出続けることができ、わからないことを、さっと相談できると評している。この新坂の修行僧のような筋の通った凛とした佇まいは、生徒から声をかけにくいと言われるらしい。しかし、道場についてたずねたとき、道場生一人一人を思い浮かべ、語る様子には熱がこもり、惜しみなく想いを吐露した。会いたい気持ちが、新坂を編集道の先へと歩ませる。その先では、花伝扇を受け取った新坂が、校長を再現する番だ。(中村裕美)
アイキャッチ・文/中村裕美(43[花]錬成師範)
文中写真/齋藤成憲(43[花]錬成師範)
編集道のこの先に進む方へ
■[ISIS花伝所]編集コーチ養成コース
第44回[ISIS花伝所]
【ガイダンス】2025年10月5日(日)
【入伝式】2025年10月25日(土)
【開始日】2025年10月25日(土)
【稽古期間】2025年10月26日(日)〜2025年12月21日(日)
申し込み・詳細はこちら(https://es.isis.ne.jp/course/kaden)から。
イシス編集学校 [花伝]チーム
編集的先達:世阿弥。花伝所の指導陣は更新し続ける編集的挑戦者。方法日本をベースに「師範代(編集コーチ)になる」へと入伝生を導く。指導はすこぶる手厚く、行きつ戻りつ重層的に編集をかけ合う。さしかかりすべては花伝の奥義となる。所長、花目付、花伝師範、錬成師範で構成されるコレクティブブレインのチーム。
「乱世こそ花伝所」。松岡正剛校長の言葉を引用し、花目付の林朝恵が熱く口火をきる。44[花]の問答条々、式目の編集工学講義は花伝所をけん引するツインターボ、林・平野の両花目付のクロストーク形式で行われた。2025年10月2 […]
「5つの編集方針を作るのに、どんな方法を使いましたか?」。遊撃師範の吉井優子がキリリとした声で問いかける。ハッと息を飲む声がする。本楼の空気がピリリとする。 ▲松岡校長の書いた「花伝所」の前でマイクを握る吉井師範 &n […]
先人は、木と目とを組み合わせて「相」とした。木と目の間に関係が生れると「あい(相)」になり、見る者がその木に心を寄せると「そう(想)」となる。千夜千冊を読んで自分の想いを馳せるというのは、松岡校長と自分の「相」を交換し続 […]
【書評】『アナーキスト人類学のための断章』×4× REVIEWS 花伝所 Special
松岡正剛いわく《読書はコラボレーション》。読書は著者との対話でもあり、読み手同士で読みを重ねあってもいい。これを具現化する新しい書評スタイル――1冊の本を数名で分割し、それぞれで読み解くシリーズです。今回は、9月に行われ […]
3000を超える記事の中から、イシス編集学校の目利きである当期の師範が「宝物」を発掘し、みなさんにお届けする過去記事レビュー。今回は、編集学校の根幹をなす方法「アナロジー」で発掘! この秋[離]に進む、4人の花伝錬成師 […]
コメント
1~3件/3件
2025-12-23
3Dアートで二重になった翅を描き出しているオオトモエは、どんな他者に、何を伝えようとしているのだろう。ロジカルに考えてもちっともわからないので、イシスなみなさま、柔らか発想で謎を解きほぐしてください。
2025-12-16
巣の入口に集結して、何やら相談中のニホンミツバチたち。言葉はなくても、ダンスや触れ合いやそれに基づく現場探索の積み重ねによって、短時間で最良の意思決定に辿り着く。人間はどこで間違ってしまったのだろう。
2025-12-10
マンガにおける短詩系文学といえば四コママンガということになるだろう。四コママンガに革命をもたらした最重要人物の一人である相原コージは、そのものズバリ『漫歌』をものした。