「狙われるもんより、狙うもんのほうが強いんじゃ。そがな考えしとったら隙(すき)ができるど」。映画『仁義なき戦い』で菅原文太扮する主人公・広能昌三はこう放つ。
ベースからターゲットを狙う。師範代と学衆のキャッチボールはいつも未知に向かって投げられる。間(アイダ)のプロセスは師範代に委ねられている。
シーザー師範こと井ノ上裕二は、長いことアジア各地を歴任したビジネスパーソンだ。中国やバンコクでの武勇伝は数知れず。培った編集学校での十八番は、キレ目の直球だ。
45[守]には、代打として師範代登板(飄々絃々教室)、別院には“花は散り際 罪は寸前 恋はなかばが いいらしい”と都都逸を寄せる。井ノ上によると「内角エロ目の玉」を狙ったらしい。
喜多川歌麿に肖って擬く。超部分に焦点を当て畳みかけながら、春画の手法スレスレを狙う。「父上~!」と娘ほどに離れた学衆から「絶妙な煽り」と指摘されて、シーザーはほくそ笑む。
時を同じく、おもてなし仙人と名高い若林牧子45[守]師範代(ストールたくさん教室)に、謎かけ婆が憑依していた。二度目の登板で意気軒高だ。
「わしが見る限りは鬼に到底見えないのじゃが、きっと腹は黒いのじゃろ。人は見かけによらぬものじゃ。」
若林の指南はあっという間に妖化を纏い蠢動しはじめた。ふだんは、食と農のコーディネーターとして旬を届ける若林にはエプロンがよく似合う。編集稽古ではあらゆるスパイスを効かせ、届く回答に指南の魔法をかける。過剰は余白を生む。
45[守]21教室160名の学衆は終戦記念日の翌日、無事卒門を迎えた。師範代21名、師範9名、番匠、学匠総勢200名による一座建立。曲芸師のごとく場を回し続ける4カ月も幕を閉じた。
今年20年目を迎えるイシス編集学校。連綿と続く稽古の舞台裏は無双に対して寛容だ。過剰は贈答儀礼にして、別様の可能性を起動させる。大いに語り手が突出する。憧れを過小評価してはならない。
「わしがやらにゃ、恰好つかんじゃろ。」誰が言ったか幻か。
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平野しのぶ
編集的先達:スーザン・ソンタグ
今日は石垣、明日はタイ、昨日は香港、お次はシンガポール。日夜、世界の空を飛び回る感ビジネスレディ。いかなるロールに挑んでも、どっしり肝が座っている。断捨離を料理シーンに活かすべくフードロスの転換ビジネスを考案中。
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