物語講座も「14歳の中坊」に

2022/03/29(火)08:11
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■14歳/幼年期の終わり?

 

 中坊=14歳といえば「子供と大人の境目」ということで、実は物語講座14綴では大きなお題改変があった。最大の改変である「トリガークエスト」は、叢衆達は次々と舞い込んでくるお題の束と格闘しているうちに、気が付くと「自らが書こうとしていた物語」から遠く離れた未知の物語を書き上げている、そんな稽古。そしてもう一つの改変は、物語を読み解く力を改めて問い直す「プロローグ」お題のリニューアルだった。

 

 書きたいものがあるから書くのではなく
 偶然やってきたものからも物語を書く講座へ生まれ変わった物語講座

 (勇者求ム!物語講座14綴

 

 そんな節目の物語講座で何が起こっていたのか?講座指導陣である赤羽綴師と小濱創師に加えて、叢衆として「内部」でその変化を直接体験した桂大介さん、さらに「外部」からどのように見えるのかを紐解くため 47[破]物語AT大賞を受賞した外山雄太さんをゲストに迎え、対談は始まった。

 

 
 47[破]物語AT大賞受賞者・外山雄太さんインタビュー

 〈前編〉〈後編

■破の物語編集を経て気付く「物語母型」の重要性

 

 突[破]を経て、「コレは彼方での闘争かな」などなど、物語母型「英雄伝説」にマッピングして日常を読み解くようになったという外山さん。そんな外山さんに、赤羽綴師は、松岡校長の「オペラプロジェクト」を紐解きながら、実は「英雄伝説」は多様な物語母型のひとつであり、宮崎駿作品などを例示しながら他にも沢山の母型があることを解説。

 


 物語講座の始まりは、松岡校長の「オペラプロジェクト」の成果を学び
 編集学校の稽古にフィードバックすることだった(赤羽綴師)

 

 
 物語母型(型)を用いて
 物語を「読み解く」スキルを育むのも講座の狙いの一つ(小濱創師)

 

■既知に閉じた物語から、未知に開かれた物語へ

 

 14綴を績了した桂さんは、文章の語り手=自分自身に慣れていたため、当初は物語内にいる他者/キャラクター達に「語らせる」ことにやや戸惑ったと語る。しかし、トリガークエストの指南で「キャラクター全員分のクロニクルを書いてみたら?」と師範代から提案され/試してみたところ、次第に各々のキャラクター達が「自ら語り出す」ような感覚が生じたという。加えて、矢継ぎ早に「未知」を呼び込むクエストお題が舞い込んでくるので、ふと気が付いた時には「当初は予想もしていなかった展開」へと物語が変質していたことに驚く声が、文叢内ではあがっていたようだ。

 

 
 15離では別番として、離学衆を「めらめら」と焚きつける/桂さん15離案内

 

 「偶然やってきたものからも物語を書く講座へ」を深く実感した桂さんの話を聞き「今すぐ講座に申し込みたい!」と即応した外山さん。しかし、小濱創師から次回開講は今秋と聞かされ、非常に残念そうな表情を浮かべていた。

 

写真:後藤由加里

 

 ということで…

 物語講座15綴 今秋開講予定(乞うご期待)!

  • 高橋陽一

    編集的先達:ヘッド博士の世界塔。古今東西の幅広い読書量と多重なマルチ職業とディープなフェチ。世界中の給水塔をこよなく愛し、系統樹まで描いた。現在進行中の野望は、脳内で発酵しつつある物語編集の方法を「社会実装」すること。

  • 05:音の溝を巡る【高橋陽一の越境ジャンキー】

    モノとの関係を相互包摂的に紐解くこの連載。今回はちょっとだけ「寄り道」をして、モノの「超部分」を「虫の目」で見つめることにチャレンジしてみたい。   ・「超部分」にカーソルを向ける    書を見る時には、筆の運 […]

  • 04:ゴミを編集する【高橋陽一の越境ジャンキー】

    いつしか「モノとの相互包摂的な関係を模索する旅路」となりつつあるこの連載。第四回は「ゴミ」にカーソルをあて、日本人との関係を少々紐解いてみることに。   ・捨てたら化ける/ゴミが妖怪に?    冒頭の […]

  • 03:鳥たちの電線編集【高橋陽一の越境ジャンキー】

    これまでの編集手本であった「ベッヒャーのタイポロジー(その象徴としての給水塔)」を連載初回で手放し、新たな「手本」を求めて旅立ったこの連載。第三回は、いったん「ヒトとモノの関係」を離れて、モノ(人工物)とモノ(動物)の関 […]

  • 02:モノオトに耳を澄ます【高橋陽一の越境ジャンキー】

    前回は「給水塔の多様な姿形」を起点に、「モノに宿る力の不思議」を紐解いてみた。今回は、モノの姿形を見るという「視覚」だけでなく、モノの音に耳を澄ます「聴覚」にもこだわってみたい。そこで、この「モノオトとヒトの関係」を紐 […]

  • 01:主客反転/給水塔が語らせる?【高橋陽一の越境ジャンキー】

    本連載は「越境ジャンキー」であるワタクシ(高橋)が、これまでハマってきた様々なモノへの「フェチ」を起点に、ヨコやナナメへと遊行/連想を広げつつ「編集」を語ってゆくコーナーです。   給水塔=客体なのか? &nb […]

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025