『キャラ者』は、”マンガ家”だった頃の江口寿史の、(まとまった作品としては)ほぼ最後の仕事。恐るべきクオリティの高さで、この才能が封印されてしまったのはもったいない。
「来年こそはマンガ家に戻ります!」と言ったのは、2016年の本の帯(『江口寿史KING OF POP SideB』)。そろそろ「来年」が来てもいいだろう。

イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。
倉内祐子さんは、都内私立小学校の音楽の先生である。今年3月31日をもって40年におよんだ教員生活に別れを告げた。日常に追われる日常だったが、倉内さんの「読み」「書き」が、イシス編集学校の稽古を経て変わったのだという。
なぜアップデートされたのか。倉内さんは[破]の稽古を振り返りながら、自身の方法的体験を言葉にしていく。
イシス受講生がその先の編集的日常を語る、新しいエッセイシリーズ。第4回は倉内祐子さんのエッセイをお届けします。
■■血肉化したボルダリング的速読・速筆術
私の教えていた音楽は、感覚を通して子どもの体と結び付く体験的な学びです。敬愛するルドルフ・シュタイナーは、食べ物は形が全てなくなった時に栄養になる、学びも同じだ、と言っていました。
[破]を修了して2年、慌ただしく稽古の締切に追われた毎日は幾ばくか遠くなりました。祭りの後のような淋しさと共に、いつもの日常生活に戻った訳です。
しかしある時自分に中の変化に気づきました。仕事の資料や参考文献を読む時や実践報告を書かねばならない時、あれ、もう読めちゃった、もう書けちゃった? 本を読む速度、文章をまとめる速度が格段に上がっていたのです。
稽古には必ず文字制限がありました。いつもだらだらと綴る癖があり、最後は文字数を数えて削ることの繰り返し。その中で身体知として「この内容ならばこのくらいの分量」という感覚が培われていたのではないかと思います。稽古で刺激された文字にならない感覚を言語化する練習も、しっくりくる言葉をたぐり寄せる力をつけてくれました。
こうした成果は[破]で頑張ったからなあ、と漠然と思っていましたが、理由をもう少し掘り下げてみます。
まず、自分史と本の中の歴象を重ねる[破]のクロニクル編集術の稽古で、『新・民族の世界地図』(21世紀研究会編、文春新書)を課題本に選んだことです。同稽古では課題本の中に書かれた年代をピックアップして年表にまとめる過程がありますが、無謀にも年代は全て網羅しようと決め、入力入力の日々。面倒だし間に合うか不安でしたが、途中でやめるわけにもいかず苦しい時間でした。
思うに、この苦しみながら項目をまとめ、手を使って入力したことが、文字を理解する引っかかり、まるでボルダリングのような「突起」を脳内に産み出す力になっていたのではないかと思うのです。脳内に視覚に入った言葉の突起のボルダーが次々に、にょきにょき生えてくる様が心地よく、そのボルダーの連結でイメージが作られる瞬間もダイナミックで楽しかった!
シュタイナーの言葉通り、学びは忘れた時に本当に身になる、その時に学びの主体も変容していることに、こうして振り返ることで気づきました。
イシス編集学校の稽古はまさに学びでした。
▲季節ごとにレイアウトがかわる、倉内さんの小学校の飾り用卓。倉内さんは[破]の稽古、物語編集術で妖精を主人公にしたが、ここにはどんな物語が?
文・写真提供/倉内祐子(46[守]スターシーズ教室、46[破]ジャイアン対角線教室)
編集/角山祥道、羽根田月香
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
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コメント
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