誰にでも必ず訪れる最期の日。
それが、どのような形で訪れるかはわからないが、一番ありえそうなパターンの一つが終末介護病棟での最期じゃないだろうか。沖田×華先生と言えば、自虐ネタのエッセイマンガでよく知られるが、物語作家としても超一流だった。深く死に向き合いたい方は、是非ご一読を。
(沖田×華『お別れホスピタル』)
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。
ある時、三澤洋美さんは本業とは別で、友人と「いちにちだけの喫茶店」をオープンすることになった。「1日だけでも、せっかくやるならいいものにしたい」。思いが強い2人が組めば意見がぶつかるもの。話し合いは平行線が続いた。その障害をどう切り抜けたのか。
イシス受講生がその先の編集的日常を語る、新しいエッセイシリーズ、第14回目は三澤洋美さんのエッセイをお届けします。
■■「他者」の存在が創発を生む
長年の喫茶店好きが高じ、同好の友人と二人で不定期開催のいちにちだけの喫茶店を立ち上げることになった。組織開発や人材育成を生業にしている私と会社員の友人、二人とも飲食業での社会人経験は全く無いが、「やりたいならやってみよう」という思いを真ん中に置いて、とにかく進むことにしたのだ。お店の名前は「喫茶ひろまり」。二人の名前を二文字ずつ組み合わせ、わたしたちとお客様、お客様同士、様々なひろがりが生まれる場になるように、という思いを重ねた。そして、喫茶店といえば、と注意のカーソルをめぐらし、「喫茶店らしさ×やりたいこと」を集めて広げて、イメージに合ったレンタルスペースを探し、お互いの実家の定番サンドイッチを看板メニュー「両家のサンド」とし、一つずつ形にしていく過程を楽しみ、夢中でやりきったのが2022年5月。
一年越しの第2弾は、新緑の美しい5月の高尾、小さなカフェを間借りして開催。そこまではスムーズに決まったものの、その後が難航した。メニュー一つを取っても、お互いの意見が噛み合わない。「わたしたちの喫茶店」をクリアに表現しようとすればするほど小さな違いが頻発する。相手が何を求めているのかが見えず、拮抗する綱引きのような話し合いが続き、途方に暮れる。お互い大人なので、このあたりで、と手を打つこともできるのだが、好きから始まったことだからこそ、手は抜きたくない。何が起きているのだろう、と擦り合わせを続ける中で、ようやくわかったのは、立っている「地」の違いだった。
「いちにちだけの喫茶店」を「非日常のステージ」とするか「日常の憩いの場」とするか。
前者に立つと、私たちは「キャスト」であり、ユニフォームは「パッと目を惹く衣装」、メニューには「ちょっとした高揚感や驚き」がほしい。
後者に立つと、私たちは「裏方」であり、ユニフォームは「清潔感のある服装」、メニューには「ホッとする定番感や安心感」がほしい。
そう気づくと、相手の視点(=個々の「地」)が見えるようになり、話は一気に進み出した。2人の共有する大きな「地」である「わたしたちの今回の喫茶店」に立ち返り、「美味しい定番メニュー」を今回の「いちにちだけの喫茶店」の旗印(=図)にすることで、個々の「地」の違いが些細なことに変わったのだ。私たちは無事、オープン当日を迎えることができたのであった。
さて、次は、相手の地に乗って、もっと遊べるかもしれない。あるいは、二人で新しい地を作って「喫茶店ではない何か」を創るかもしれない。全てを「編集」と捉えたら、可能性は広がるばかりだ。
▲三澤さんの「いちにちだけの喫茶店」(上)の目玉は「両家のサンド」(下)。それぞれのこだわりサンドイッチを提供した。左はS家の母の味。やさしい甘さの炒り卵が特徴だ。右はY家の父の味。チーズで海苔を挟んだバター醤油味の一品だ。
文・写真提供/三澤洋美(43[守]非線形裏番長教室、43[破]どろんこ天鵞絨教室)
編集/柳瀬浩之、吉居奈々
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
新しいことをするのに躊躇していたという増田早苗さんの日常に、突如現れたのが編集稽古でした。たまたま友人に勧められて飛び込んだ[守]で、忘れかけていたことを思い出します。 イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を […]
【書評】『熊を殺すと雨が降る』×5×REVIEWS:5つのカメラで山歩き
松岡正剛のいう《読書はコラボレーション》を具現化する、チーム渦オリジナルの書評スタイル「3×REVIEWS」。 新年一発目は、昨年話題をさらった「熊」にちなんだ第二弾、遠藤ケイの『熊を殺すと雨が降る 失われゆく山の民俗』 […]
正解のないことが多い世の中で――山下梓のISIS wave #71
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。 上司からの勧めでイシス編集学校に入ったという山下梓さん。「正確さ」や「無難さ」といった、世間の「正解」を求める日常が、 […]
編集稽古×合気道×唄&三味線――佐藤賢のISIS wave #70
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。 新年初めての武術、音曲などの稽古を始めることを「稽古始(けいこはじめ)」「初稽古」といい、新年の季語にもなっています。 […]
ミメロギア思考で立ち上がる世界たち――外山雄太のISIS wave #69
イシス編集学校の[守][破][離]の講座で学び、編集道の奥へ奥へと進む外山雄太さんは、松岡正剛校長の語る「世界たち」の魅力に取り憑かれたと言います。その実践が、日本各地の祭りを巡る旅でした。 イシスの学びは […]
コメント
1~3件/3件
2026-02-05
誰にでも必ず訪れる最期の日。
それが、どのような形で訪れるかはわからないが、一番ありえそうなパターンの一つが終末介護病棟での最期じゃないだろうか。沖田×華先生と言えば、自虐ネタのエッセイマンガでよく知られるが、物語作家としても超一流だった。深く死に向き合いたい方は、是非ご一読を。
(沖田×華『お別れホスピタル』)
2026-02-03
鋸鍬形、犀兜、鰹象虫、乳母玉虫、碁石蜆、姫蛇の目、漣雀、星枯葉、舞妓虎蛾、雛鯱、韋駄天茶立、鶏冠軍配、鶉亀虫。見立ては、得体の知れないものたちを、手近に引き寄せたり、風雅に遊ばせることの糸口にもなる。
2026-01-27
タッパーウェアはそのまま飼育ケースに、キッチンペーパーは4分割して糞取り用のシートに。世界線を「料理」から「飼育」に動かしてみると、キッチンにあるおなじみの小物たちが、昆虫飼育グッズの顔を持ち始める。