「ピキッ」という微かな音とともに蛹に一筋の亀裂が入り、虫の命の完結編が開幕する。
美味しい葉っぱをもりもり食べていた自分を置き去りにして天空に舞い上がり、自由自在に飛び回る蝶の“初心”って、いったい…。
川邊透
2025-10-07 11:55:25
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。
木島智子さんは、56[守]に初登板する師範代の卵だ。しかし自分が師範代になるなんて思ってもいなかったと振り返る。木島さんを変えたものは一体何だったのか。
イシス修了生によるエッセイ「ISIS wave」。木島さんの「指南」への思いをお届けします。
■■初めての「指南」をお守りに
指南が待ち遠しかった。
私の学衆時代をひと言で表すなら、多分こういうことだ。
[守]では遊びながら基本の型を学んだ。出されたお題は半分しか理解できなかったが、師範代に駄目出しされた記憶はなく、褒められた言葉をよく覚えている。編集稽古はすべてテキストベースで進むため、文字だけの指南なのに、回答に正解はない、「もっと遊んでいいんだよ」というような師範代の思いが伝わってきて、とても嬉しく、子供時代に戻ったようだった。
[破]は遊びとは程遠かった。深夜に何度もパソコンを開き、お題と格闘した。肩こりや腰痛に効くグッズを教室内でシェアしながら、あそこまで熱中出来たのはなぜだろう? 未知と出会い、教室の仲間と切磋琢磨し、楽しかったのはもちろんだけれど、やはり指南が待ち遠しかったのだ。
そもそもイシスと出会ったのは、フォローしていたビューティーライターが、「編集学校で学んでいた」と書いていたことがきっかけだった。さっそくサイトを調べ「無料編集力チェック」に申し込み、簡単なお題に何のひねりもなく回答を送った。そうして返って来たのが心躍る指南との初めての出会いだった。編集した覚えはなかったのに、私の回答から思考を取り出され《フィルター》で分けられていた。無自覚にやっていることを言語化されポンっとテーブルの上に置かれた。これが編集? イシス! ここで学びたい!
以来ずっと指南が待ち遠しい。
なぜなのか? それは回答がトンチンカンでも、師範代は面白がり、一歩先へ進むための「問い」をくれたからだ。できそうもないお題をモヤモヤ悩む時には、いつも師範代や師範がモヤを払いに登場してくれた。
あれだけのお題をクリアし、突破(卒業)できたことは大きな自信となった。次は[物語講座]を受講したかったが、開講まで間があり[花伝所]へと進んだ。濃密な稽古体験の記憶が薄まるのがこわかったのだ。
[花伝所]では、指南のための5つのM(Model、Mode、Metric、Making、Management)を学ぶ。師範代を擬く指南演習では、見よう見まねで架空の学衆に初指南をした。自己評価は47%。なんとなく書けた気はしたが、花伝所の師範からはコテンパンな言葉が返って来た。「どういう意図をもってこの言葉を使いましたか?」「これでは何を評価したいのか分かりません」。[守][破]の稽古とは全く違う。指南ではなく指導なのだ。ピリッとした緊張感が漂う。
そういえば入伝式で“初心”についての話があった。「“初心”とは、布に新しく刀を入れること。それはこれまでの古い自分を捨てて生まれ変わること」。指導では古い自分に『刀』を入れられていたのだ。
▲破学衆時に初めて買った自分用パソコンとなぜか青ばかり減るボールペンとマーカー。
花伝所でもこれからも相棒。
[花伝所]に入伝する前は、師範代とは選ばれし特別な人々で、自分とは別世界の住人だと思っていた。しかし5Mの演習が進んでいくうちに、あったかい気持ちに何度も包まれた。刀で切られているはずなのにあたたかい。誰かが誰かを思って本気でその人のいいところを発見しようとする。今は見つからなくてもあっちにいい匂いの花が咲いてるよ、と導く。師範の指導はそういうものだった。そうか、[守][破]の教室の中でもこんなことがおこっていたのか。師範代には、奥底に誰かを本気で思う気持ちがあればいいんだ。
イシス編集学校のことをもっと皆に伝えたい。
イシスって、面白いお題を一緒に語り合う場でさ、他の人の回答に「いいなぁ」と思える場なのよ。それで「指南」や「回答」を読むとアタマが柔らかくなっていく場なのよ…!
でもまだ上手く説明出来ない。だから私は師範代になる。はじめて「指南」してもらった時の気持ちを、お守りにして。
▲木島さんの教室は「ないまぜマンション教室」。指南のお供は大好きなお酒ではなく…
文/木島智子(53[守] お茶のこ際々教室、53[破]カミ・カゲ・オドリ教室)
編集/チーム渦(大濱朋子、角山祥道、羽根田月香)
■木島智子師範代が登板する[守]基本コースはこちら。
第56期[守]基本コース
【稽古期間】2025年10月27日(月)~2026年2月8日(日)
申し込み・詳細はこちら(https://es.isis.ne.jp/course/syu)から。
■[ISIS花伝所]編集コーチ養成コースはこちら。
第44期[ISIS花伝所]編集コーチ養成コース
【ガイダンス】2025年10月5日(日)
【入伝式】2025年10月25日(土)
【開始日】2025年10月25日(土)
【稽古期間】2025年10月26日(日)〜2025年12月21日(日)
申し込み・詳細はこちら(https://es.isis.ne.jp/course/kaden)から。
コメント
1~1件/1件
2025-10-07 11:55:25
2025-10-07 11:55:25
「ピキッ」という微かな音とともに蛹に一筋の亀裂が入り、虫の命の完結編が開幕する。
美味しい葉っぱをもりもり食べていた自分を置き去りにして天空に舞い上がり、自由自在に飛び回る蝶の“初心”って、いったい…。
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
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コメント
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2026-02-05
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それが、どのような形で訪れるかはわからないが、一番ありえそうなパターンの一つが終末介護病棟での最期じゃないだろうか。沖田×華先生と言えば、自虐ネタのエッセイマンガでよく知られるが、物語作家としても超一流だった。深く死に向き合いたい方は、是非ご一読を。
(沖田×華『お別れホスピタル』)
2026-02-03
鋸鍬形、犀兜、鰹象虫、乳母玉虫、碁石蜆、姫蛇の目、漣雀、星枯葉、舞妓虎蛾、雛鯱、韋駄天茶立、鶏冠軍配、鶉亀虫。見立ては、得体の知れないものたちを、手近に引き寄せたり、風雅に遊ばせることの糸口にもなる。