マンガに限った話ではないが、「バカ」をめでる文化というものがある。
猪突猛進型の「バカ」が暴走するマンガといえば、この作品。市川マサ「バカビリーバー」。とにかく、あまりにもバカすぎて爽快。
https://yanmaga.jp/comics/
AI時代にどう人間らしく生きるか――。
近頃の大きな「問い」です。同じく迷いの中にあった山本真紀子さんは、友人の勧めでイシス編集学校に入ります。そこで山本さんが見つけたものとは。
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。イシス修了生による好評エッセイ「ISIS wave」(第66回)をお送りします。
■■AI時代の編集稽古
この数年仕事上のコンテンツ作りをコツコツと行い、それが自分の価値を高めることにつながると信じていた。ところがAIが急速に発達し、皆がAI検索で満足してしまう時代がやってきた。途端にコンテンツ作りは馬鹿馬鹿しくなってしまい、筆が止まった。でも自分の奥の方で、このAI時代になおかつ人間だからこその表現を信じたい、という気持ちがあった。
イシス編集学校に出会ったのはちょうどそんな時だ。友人が師範代になり、「編集は人生そのもの」と言った。何故かものすごく惹かれた。運命を信じている。人の縁、時の運、人生にはピースが用意されていて、時としてそれらがピタピタっとはまっていくのを感じることがある。だからすぐに申し込んだ。
他の学衆の豊かな語彙や表現力と比較してしまい、自分の頭の固さにつまらなささえ感じてしまう日々。最初に現した《たくさんのわたし》(※さまざまな「わたし」を30個挙げる[守]のお題)には、主婦であり母であり仕事人間である自分と、様々なことにチャレンジしてきた日々、仕事上の少々の生きづらさが並んだ。温かくも注意深い師範代の指南を受け取りながら、50歳を超えて褒められることの少なくなった日々に少しずつながらも自己承認が高まっていく。自分を囲む世界の可愛らしさ、美しさ、面白さ、工夫、楽しさ。世の中のそこかしこに「編集」が潜み、切り方を変えれば見えてくるものも違うことにも気がつき始める。
編集稽古は般若心経に似ていると思った。般若心経の中でブッダは説く、「世の中は一切が空である」と。誤解してはいけない。「空」は「無」ではない。ただよい、揺蕩い、変幻自在に姿を変えていくものなのだ。世の中のものは全て「空」である。それらが「わたし」というブラックボックスを通ると、美しくも悲しくもなるのだ。編集稽古は「わたし」というブラックボックスを意識して調整してインプットとアウトプットを豊かにするものだった。目で見、鼻で嗅ぎ、手で触り、口で食べ、耳で聞き、肌で感じる。注意のカーソルを意識すると、世の中はなんと多くの音に溢れていることだろう。柔らかいもの、チクチクしたもの、ゴツゴツしたものなど色々な異なる形や感触に囲まれていることにも気がついた。
世の中はなんという豊かさに溢れていることだろう!
編集稽古は世の中の細部を丁寧に見つめながら「わたし」の中を探索することでもあった。日常、仕事、過去の出来事、幼い日々のこと。忘れていた小さな頃の遊び風景までも思い出すのだった。いつの間にかあれほど頭の固かった私から不思議と様々な表現が溢れ出すようになっていた。最後の「わたし」には笑いと遊びが大好きな、ひょうきんで頑固者でロマンチストな、家族も仕事も勉強も言葉も愛している「わたし」が表現された。
迷いつつも[破]に進んだ。「わたし」というブラックボックスを探索しながら世の中を「編集」の目で見て発見を深め、AIに負けない人間の表現を信じ続けたい。
▲山本さんの「日常のささやかな楽しみ」と家族との「自然の中での楽しみ」。「わたし」というブラックボックスには、さまざまな「楽しみ」がIN・OUTする。
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
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コメント
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2025-11-27
マンガに限った話ではないが、「バカ」をめでる文化というものがある。
猪突猛進型の「バカ」が暴走するマンガといえば、この作品。市川マサ「バカビリーバー」。とにかく、あまりにもバカすぎて爽快。
https://yanmaga.jp/comics/
2025-11-25
道ばた咲く小さな花に歩み寄り、顔を近づけてじっくり観察すると、そこにはたいてい、もっと小さな命がきらめいている。この真っ赤な小粒ちゃんたちは、カベアナタカラダニ。花粉を食べて暮らす平和なヴィランです。
2025-11-18
自ら編み上げた携帯巣の中で暮らすツマグロフトメイガの幼虫。時おり顔を覗かせてはコナラの葉を齧る。共に学び合う同志もなく、拠り所となる編み図もなく、己の排泄物のみを材料にして小さな虫の一生を紡いでいく。