桃の節句に、桜の葉が好きなモモスズメ。飼育していると、毎日、たくさんの糞をするが、それを捨てるのはもったいない。こまめに集めて珈琲フィルターでドリップすれば、桜餅のかほりを放つ芳しき糞茶のできあがり。
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。高橋仁美さんは普段は英語を使って、子どもたちの想像力や表現力を伸ばす教育に携わっています。編集学校でのお題に回答するうちに、現在の仕事にも関係するあることを思い出します。
イシス受講生がその先の編集的日常を語るエッセイシリーズ「ISIS wave」。今回は高橋さんが編集稽古で再会した「わたし」をお送りします。
■■穴だらけのクロニクルから
[守]の【編集稽古010番:たくさんの「わたし」】は、自己編集の扉を大きく開いた。
「わたしは誰にも縛られず空を飛びたい小鳥である」
「わたしは気になることには飛び込んでみるアリス体質である」
自分自身をも情報と捉え「わたし」をさまざまに言い換える編集稽古で、小鳥のような自由さを求めたり、「不思議の国のアリス」のようにあとさき考えず興味あるものに飛び込んでみるところに、自分らしさを強く感じた。
その後[破]の【クロニクル編集術】で自分史をまとめたとき、そこに同じような気質をもつもう一人の存在が浮かんできた。母方の大叔母である。
[18歳] アメリカの大叔母が法事のため母の実家に帰省する。遊びにおいでと言われ、アメリカ訪問が急に手の届くことに思えてくる。
[21歳] 春休みにアメリカの大叔母を初めて訪ねる。3週間のホームステイ。日米ミックスの言葉や生活が面白い。
大叔母のルリコは私と同じ九州の出身だが、戦後に関東で米兵男性と結婚し、一女に恵まれ、もう60年以上米国に暮らしている。なぜ田舎に留まらず関東に行ったのか、どんな仕事をしていて、大叔父とはどうやって出会ったのか。気になってあれこれ想像をめぐらし、[破]の【物語編集術】の稽古では、大叔母を登場人物のモデルにした。物語を考えながら登場人物のクロニクルを作ったが、これまで大叔母の話を聞けたのは21歳で訪米した時のみ。モデルとする大叔母のクロニクルは穴だらけであった。
2025年11月、その穴を埋める思わぬチャンスに恵まれた。「元気なうちに会いに行きたい」という叔父たちに同行を請われ、1週間の日程で米国の大叔母を訪問できのだ。94歳になった大叔母は思った以上に元気だったが、短期記憶は覚束ない。幸い昔のことはよく覚えており、聞けばぽろぽろ話してくれる。雑談の中で昔の話が出れば「それルリコおばさんがいくつのとき?」と質問を織り込むような、なるべく自然な会話の形でインタビューを重ねた。
▲ルリコさんの住む米国西海岸のコーストライン。海の向こうは日本。
▲高橋さんがルリコさんへお土産として作った”We love Ruriko!”のTシャツを着てパチリ。
帰国してまとめた大叔母のクロニクルには、まだ不足がたくさんある。しかしその穴だらけのクロニクルは私の想像を刺激する。相似な気質をもつ大叔母と私。私と大叔母を重ねるように、大叔母と他の誰かも重ねてみる。時代や場所が違えば、どんな人物、どんな物語が、動き出すのだろう。
[守]の【編集稽古003番:部屋にないもの】では、自分の部屋にないものを「ないものフィルター」で見つける稽古をした。その時にはっと気づいたのが「本棚に私の書いた本が1冊もない」ということ。そんな穴を見つけたら、飛び込まずにはいられない。
「編集は不足から生まれる」
いつか大叔母と私の、別様の物語を綴ってみたい。
▲カモメと戯れる空を飛びたい小鳥な高橋さん
文・写真/高橋仁美(53[守]風土いきいき教室、53[破]ラップ多義る教室)
編集/チーム渦(大濱朋子、角山祥道)
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
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コメント
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2026-03-03
桃の節句に、桜の葉が好きなモモスズメ。飼育していると、毎日、たくさんの糞をするが、それを捨てるのはもったいない。こまめに集めて珈琲フィルターでドリップすれば、桜餅のかほりを放つ芳しき糞茶のできあがり。
2026-02-24
昆虫観察には、空間の切り取りに加えて、時間軸を切り裂くハサミをタテヨコ自在に走らせるのもおすすめ。この天使のようなミルク色の生き物は、数十分間の期間限定。古い表皮を脱ぎ捨てたばかりのクロゴキブリです。
2026-02-19
棚下照生。この忘れられたマンガ家が、最近、X(ツイッター)で話題になっていた(なぜかは知らないが)。大人漫画のタッチで劇画を描くという、今となっては完全に絶滅した手法が、逆に新鮮に映るのかもしれない。代表作『めくらのお市物語』は、連載当時、大変な人気で、映画やテレビドラマにもなったのだが、現在では、タイトルに問題アリで、復刊の目途もない。もしも古本屋で見かけることがあったら絶対買いです。